恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

話数が多くなった小説は順次、インデックスにまとめてます。

ハル~その5~その7

2015-01-24 08:32:59 | ハル君ルートで茶倉譲二

ハルくんルートの譲二さんの話も大詰め、一気にいくよ~(^O^)/


ヒロインは男の子を出産し、譲(ゆずる)と名付けられた。

 

それから1年が過ぎた。

 
☆☆☆☆☆

ハル~その1~その4の続き



ハル~その5

〈譲二〉


 親子3人で夕方から福の湯に出かけた。

 うちの風呂は狭いので、時々出かける福の湯をユズは気に入っている。

 内風呂では美緒が入れたり、俺が入れたり色々だが、福の湯では男同士で入ることになっている。

譲二「さ、ユズ、ママにバイバイだよ」

ユズは美緒に手を伸ばす。

ユズ「マンマ」

美緒「ユズ、また後でね」

 ユズは少し抗議の声をあげたが、福の湯の雰囲気が大好きなので、すぐに脱衣場に向かった。
もうよちよちとは歩けるようになっている。

譲二「ユズ、そんなに急ぐと転ぶぞ!」

あい子「ユズ君、しっかりしてきたなぁ。それにますますパパに似て来て」

照れくさくて、俺は頭を掻いた。

譲二「そうですかね」

あい子「ホント、よう似てるで…。ああ、そうや。今日は剛史が戻って来てるさかい、後で降りて来るよう言うとくな」

譲二「あ、すみません」



 浴場の戸を開けると、リュウが洗い場に座っていた。



ユズ「るう!」



 ユズはめざとくリュウを見つけると、ヨチヨチと歩き出した。



譲二「ユズ! 転ぶぞ!」

竜蔵「おお、ユズ! 今日も俺と入るか?」



リュウは満面の笑みでユズを抱き上げる。



譲二「なんでまだ『パパ』は言えないのに、リュウの名前は言えるんだ…」

竜蔵「そりゃユズはジョージより俺の方が好きだからな」



 いつもながらショックだ…。

 福の湯に来ると3回に1回はリュウがいるので、今日のようにユズはリュウに体を洗ってもらう。

 リュウに抱かれで湯船につかり、気持ち良さそうなユズを眺めながら複雑な気分だ。



譲二「ユズ…、パパと一緒に入ろうよ…」



 ユズはにっこり微笑んでくれた。

 小さな手を伸ばして、やっと俺の方に抱かれに来る。


その6へつづく


☆☆☆☆☆

ハル~その6

〈譲二〉

 今日は井の頭公園に親子3人で散歩に来た。

 歩けるようになったユズは盛んにベビーカーから降りたがる。


譲二「まてよ、ユズ。今、靴を履かしてやるからな」


靴を履かせ、ベビーカーから下ろして、ベビーカーを畳んでいると、ユズは俺に肩車をして貰いたがる。


美緒「ユズはパパが大好きだね」


ユズは俺のズボンを盛んに引っ張っている。


譲二「わかった! わかった、ユズ。よいしょっと。これでいいか?」


 ユズは俺の頭を持って髪をぐしゃぐしゃにした。

 美緒がクスクス笑っている。


譲二「えー? そんなに笑うほど髪が変になった?」

美緒「ううん。髪の毛は乱れちゃったけど、それで笑ったわけじゃなくて…。昔もこんなことがあったなぁって…」

譲二「昔?」

美緒「ほら、迷子の男の子を肩車して、髪がぐしゃぐしゃになったこと」

譲二「ああ、一緒に一輪挿しを買いに行って、ペアのマグカップも買った時のことか」

美緒「そう」

譲二「あの後、俺がじーじだって美緒にバレたんだよね」


美緒は遠い目をして言った。

美緒「…あの時、譲二さんとパパとママになって、子供を肩車した譲二さんと一緒に歩けたらいいなぁって思ったんだ…」

譲二「あの時、そんな風に思っていてくれてたんだ…。
…奇遇だね。俺もあの時、美緒とパパとママになれたらなぁって思ってた」


美緒が愛しい目をして俺に微笑んだ。


美緒「二人とも夢が叶ったね」

譲二「ああ、随分長い時間がかかったけどね」


美緒とみつめあう。

 

優しい風が美緒の乱れ髪を撫でて行く。


あれからもう10年以上の年月が経った…。

こうして…親子3人で過ごせる幸せを、今は噛み締めている。

 


 

その7につづく

 


 

☆☆☆☆☆

 


なんと…伏線まで回収してしまった。^^;


☆☆☆☆☆

ハル~その7

〈譲二〉

 今夜もハルと酒を飲んでいる。

 美緒は始めはお相伴していたが、ユズを寝かしつけるために直ぐに二階に上がった。


譲二「俺はお前らより10歳年上だから、くたばるのも早いだろうな…」

春樹「どうしたんです。突然」

譲二「10年前はお前らにオジサン扱いされて、今は大人の男同士だけど…、後10年、20年経ったら俺から先に老いぼれていくんだろうなと思ってさ」

春樹「譲二さんはさっさとくたばってくれていいですよ。そうなったら、美緒とユズは俺が面倒見ますから」

ハルが不敵に笑って言う。

譲二「勘弁してくれよ。冗談に聞こえない」

春樹「冗談じゃなくて、本気ですから」

譲二「ハハ…だろうな」

春樹「だから…譲二さんはそう簡単にはくたばれないはずですよ」

 ハルは寂しそうに笑った。

 そう、美緒とユズを守るためにはそう簡単にくたばるわけにはいかない。

 しかし、と思う。

もしそうなった時、美緒とユズを託すとしたら…。

こいつなら…ハルになら託せる気がする。

譲二「ハル…」

春樹「なんですか?」

譲二「この先、もし俺がくたばるようなことがあったら…。美緒とユズのことを頼む」

俺は頭を下げた。

春樹「何を言い出すんですか。本当に本気にしますよ」

譲二「もちろん、俺が元気な間はお前なんかに渡す気はない…。
でも、俺がくたばって美緒とユズ2人だけになったとしたら…。
俺はお前になら2人のことを託せる気がするんだ。
美緒の幼なじみは一護やリュウやタケにりっちゃんもいるけど、2人を託せるのはお前しかいない」

春樹「譲二さん…酔ってますね…」

譲二「ああ、酔ってるよ…。しらふでこんなことライバルのお前に言えるもんか」

春樹「…」

譲二「今だって、いつお前に横取りされるかびくびくしているというのに…」

春樹「じゃあ、なんでそんなこと言うんです」

譲二「俺に何かあったときの…保険かな?」

春樹「それじゃあ、ちゃんと美緒に書き残しておいて下さいね。信じてもらえないと困りますから」

譲二「遺言を作るなら手伝ってくれるか?」

春樹「そういうことなら喜んで手伝いますよ」

譲二「それも本気なんだろうな?」

春樹「もちろんです」

 俺は苦笑いして酒を口に運んだ。

美緒「二人とも!勝手なこと言わないで!」

 突然、美緒の声がした。

 今日はユズを寝かしつけても、眠ってしまわなかったようだ。

譲二「起きてたの?」

 美緒はその質問には答えなかった。

美緒「私は物じゃないんだから、そんなに簡単にあっちやこっちには行けないよ」

譲二「ごめん」

春樹「美緒、酒の上での戯言だよ」

美緒「いくらお酒の席だからって、言っていいこと悪いことがあるよ。
そうでなくても…、この頃譲二さんは、前にくらべたら体力が落ちて来ていて、色々心配しているのに…」

譲二「本当にごめん。俺はそうそう簡単にくたばったりしないから…」


 ハルがいなければ、しっかり抱きしめて、『俺は大丈夫だよ』と美緒に言ってやりたかった。

春樹「さてと…。そろそろ俺は帰るかな」

譲二「うん? まだ、いいだろう? まだまだ、宵の口だぞ」

春樹「うーん。だけど、明日があるしね。また、休みの前の日に来ます」


 ハルはそのまま帰っていった。

 後ろ姿は寂しそうだった。


 俺は美緒をしっかりと抱きしめた。

譲二「こんな可愛い嫁さんと子供がいるんだから…。俺はちゃんと長生きするよ。だから心配しないで…」

美緒「本当に…。約束だよ。絶対にずっとずっと一緒にいてね」

譲二「ああ」

 人の寿命というものは、人の力ではどうにも出来ない物かもしれないが…、家族を守るために俺は簡単にはくたばったりしない。

そう心に誓った。


『ハル』おわり

 


☆☆☆☆☆


 昼メロ話が最後には男同士の友情の話になっちゃいました。

 こういう話の流れだと譲二さんに死亡フラグが立ってたりしてますが…。

 譲二さんが事故か何かで死んで、ヒロインはハル君の愛を受け入れるのか、譲二さんへの操を立てるのかというような話も書けないことは無いのですが…。

 譲二さんがいない世界など、私自身が耐えられないので、その話は書かないです。

 だからこのルートの話はこれで終わりかな。

 長い間、お付き合いくださったみなさん。ありがとうございました。


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このお話の番外編として


譲二さんの子供たちとかを妄想したものとか


『秘め事』でヒロインを待ち続けてる譲二さんの話

焦がれる日々』

もよろしく



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