チョコレートが心臓を守ってくれる?
HealthDay News 公開日:2020/09/03
チョコレートのような甘い菓子は健康に良くないと思いつつも、やめられないという人は少なくないだろう。また、新型コロナウイルス感染症抑止のための自粛生活のストレスで、チョコレートに手が伸びる頻度が増えた人がいるかもしれない。そのような行動に、わずかな“言い訳”を与えてくれるデータが報告された。チョコレートを1週間に1回以上食べる人は、心臓病になるリスクが低い可能性があるという。米ベイラー医科大学のChayakrit Krittanawong氏らの研究によるもので、詳細は「European Journal of Preventive Cardiology」7月22日オンライン版に掲載された。
Krittanawong氏らは、チョコレート摂取と冠動脈疾患のリスクとの関連を検討するため、1966年~2020年1月に発表された論文を対象とするシステマティックレビューを行い、6件の前向き研究の論文を抽出した。研究対象者数は合計33万6,289人(米国から26万6,264人、スウェーデンから6万8,809人、オーストラリアから1,216人)で、追跡期間中央値は8.78年だった。
追跡期間中に2万1,777件の疾患発症が記録されており、そのうち冠動脈疾患が1万4,043件で、心筋梗塞は4,667件だった。その他、脳血管障害が2,735件、心不全が332件記録されていた。
プール解析の結果、チョコレートの摂取頻度が週に1回以下の場合と比較して、週に1回または月に3.5回を上回る場合、冠動脈疾患の相対リスク(RR)が0.92(95%信頼区間0.86~0.99)となり、8%の有意なリスク低下が確認された。また、6件の研究のうち、摂取頻度を「月に3.5回」で分類して比較検討し結果は非有意と報告している1件の研究を除外し、摂取頻度が週1回以下と1回を上回る場合とで比較すると、RRは0.90(同0.84~0.94)となり、リスク低下幅が10%に広がった。
Krittanawong氏は、「チョコレートには、炎症を抑制し善玉コレステロールを増やすフラボノイドなどが含まれていて、血管に良く心臓を保護するような働きもある。ただし、今回の研究は観察研究であるため因果関係には言及できない」と述べている。さらに、市販のチョコレートには砂糖や牛乳が使われていて、脂肪分やカロリーが多いため、肥満や糖尿病の人の場合、食事療法の範囲内での摂取を考慮しなければならない」と注意を促している。
また、今回の研究では解析対象者の生活習慣などの背景因子が考慮されておらず、どのようなタイプのチョコレートを食べていたのかも分からない。特にチョコレートのタイプが心臓の健康にとって重要な可能性があり、それが検討されていないことはこの研究の限界と言える。
一般的には、チョコレートに含まれる有益な成分は主にカカオに由来するため、ミルクチョコレートではなくダークチョコレートが推奨される。米国の心臓病専門医であるJohn Osborne氏も、「ミルクチョコレートはチョコレートと砂糖、脂肪でできている」と指摘した上で、「本研究で示されたチョコレートのメリットはそれほど大きなものではなく、ダークチョコレートを摂取するとしても1日に1オンス(28g)以上は摂取すべきでない」と述べている。
米レノックス・ヒル病院のLen Horovitz氏もまた、「チョコレートにはメリットがあるかもしれないが、有益な成分ばかりではない。砂糖と脂肪を含み、カロリーが高いことを忘れずに、1日に小さなチョコレートを1個程度にしておいた方が良い」とし、「本当に心臓の健康を維持したいのなら、週に3~4回の運動を継続して、適切な体重を維持することの方がはるかに有益だ」と付け加えている。