kirekoの末路

すこし気をぬくと、すぐ更新をおこたるブロガーたちにおくる

最近ちらほら見てるフルボイス動画

2008年08月10日 21時17分34秒 | 末路話
雨降り始めて洗濯物がおじゃんになったムキー@kirekoです。


>最近(というか6月くらいに見て、今でもネタにしてる)見てる動画

アニメや漫画などのエンターテイメントもいいんだけど、
自分は最近フルボイス系の動画を見てる。
で、これというものがあったら必ずコメしてしまうような
あっちの世界でいうところの良いお客さんなんだが。
まあそのへんはともかくとして、今日はお気に入りのフルボイス動画を紹介。
布教活動を行おうと思う。



フルボイスでフロントミッション~原作崩壊への道~

1話ではそうでもないのだが、ナレーション兼のオルソンの声と、JJとショップのおっさんと、ナタリーの声が好きだ。特にナタリーの声は、プライベートで使ってしまうぐらい面白い。後半になればなるほど、フルボイスよりも編集の力が凄いと感じる動画だった。苦労の割には再生数が伸びない動画だね。





フルボイスで聖剣伝説3~バカ殿様の原作破壊伝説~

聖剣伝説3のフルボイスは数あれど、これほどネタに走ってくれたフルボイスはなかった。ある意味嬉しいことだが、途中で仲間になるギャバン(改名)の声が面白すぎる。FMからのメタな出演の仕方も面白い。てか毎回出るBGMが卑怯wwwww

不倶戴天の8月10日

2008年08月10日 20時33分50秒 | 小説の感想と批評
上司がまさにそれだった@kirekoです。

>今日の感想と批評

( ゜д゜ )業者の迷惑コメ、迷惑トラバが減るだろうと思って
( ゜д゜ )コメ欄解放したらこのざまかよ!!!
( ゜д゜ )せびんの突っ込みがなかったら、普通に凹んでるところだぜ…
( ゜д゜ )くっそ!読者ROM軍団たち!
( ゜д゜ )名無しでもいいから、もっとコメントしてくれ頼む!

こうして、コメントクレクレ厨の伝説が始まった。

■企画の意図は、こちら
http://blog.goo.ne.jp/kireko1564213/e/7e03a0212eb392c37028780a1c7f63d9

*感想テンプレ

■(タイトル+小説直リンク) ジャンル(ジャンル) 作:作者名
:あらすじ(小説家になろう投稿時に書いてあるあらすじ)
:感想(kirekoの感想)

*感想テンプレ終わり



============はい開始==============

Cotton Candy 1 ジャンル 恋愛 作:蜜月めぐむ

:あらすじ
中性的な僕に積極的にアプローチしてくる彼女。それには彼女の悪夢のような過去が関係していた。僕には彼女の心を癒すことができるだろうか…。せつないラブストーリーの序章。

:感想
短編だけど続きがあるような雰囲気。ソフトなエロ漫画の世界だなぁ。よく聞くところ、芸術の行き着くところが、退廃と背徳という人がいるが、小説の中でも際どい純文学の世界だってアブノーマルな性行為や、背徳的な世界があるんだから、別にジャンル的には卑怯じゃないと思う。付き合ってる女が寝床で言う、ただの不幸自慢話と言われたら、そんな気もするが、少なくとも展開構成的には悪くないと思う。世に出ているケータイ小説とかが怒られてる理由の一つに、底の浅い描写が連続するという点があるが、あれをちょっと濃密に書いたら、こんな感じになるんじゃなかろうか。あとは別段感想を述べるところはないが、ただ一つ、女の名前が愛称なのか、本名なのか気になった。


4月4日の肝試し ジャンル ホラー 作:ken-_1

:あらすじ
聡は、同級生の千佳に恋心を抱く平凡な中学生だった。ある日、千佳が提案する。『4月4日に学校で肝試しをしよう』ちょっとしたスリルを味わうための、楽しい肝試しのはずだった。その日、千佳は消えた。

:感想
また、鬼門のホラーだ。夏にやる肝試しってのは聞いたことがあるが、4月にやる肝試しってのは発想的に面白い。ただ、前半のホラー映画のくだりは、完全に助走不足というか、必要なプロセスだが無駄の多さが目立ってしまった。キャラクターの素面な感じも、写実的といえば聞こえがいいが、表面にも中身にも、余り魅力的な部分が描写されてないのが、とても残念だ。後半の色恋関連の話に関しても、必要以上に文章が集中しすぎているところも気になる。もしかして元々恋愛系の人なのだろうか?と勘ぐってしまう。しかし、その割に背景描写が少ないのは、何故なのか。書くのを苦手としているのか、それとも書くことが無駄だという見解なのだろうか。うーん、純正のホラーにしては雑念が入りすぎているし、展開演出に優れたエンターテイメントな恐怖物というには、随分まどろっこしい感じもする。もう少し素早い展開と、導入部分で読者を引き込むような逸話が必要なのでは無いだろうか?事件性も絡めて。


痛風 ジャンル 文学 作:dejavue

:あらすじ
いっぷう変わった男と猪突猛進型の男の奇妙な友情をとおし、ふと見た自分の顔で在りし日のことを回想する物語。

:感想
背景で眼がやられそうになった。頼むから「背景色に気をつけてください」ぐらいの事を言って欲しいな。ある二人の探訪期と、その後の様子を淡々と語っている作品。歴史好きというキャラクター描写が最初にしか出てないところと、急に段落わけされてる部分とされてない部分が構成的に気になるが、全体を通して旅行物にしては辛気臭くて、友情にしては殺風景すぎる気がする。渋過ぎて食べれない柿みたいな味の小説だ。言うべき感想は余り無いが、面白いと思ったのは、やたら時代的な言葉の言い回しがあること。トルコとか、田中角栄の列島改造論とか、今ではなかなか聞けなくなった言葉(前者においては、たぶんkirekoの世代ではわかる奴殆どいないと思う)が随所に出てくるところ。話の内で気にならないメタ発言は嫌いじゃないね。


夜宴 ジャンル ホラー 作:森上 木一

:あらすじ
突然夜中のパソコン画面に打ち出された謎の散文詩。そして最後の夜に宴が始まる…

:感想
はたまた鬼門のホラー。ホラー小説を読んで怖いと思うより、ホラー作品を読むのが怖くなってきた。というわけで感想に入っていこう。いわゆる謂れの無い謎の怪文書が、自分にしか触れられないスペースの中で、知らないうちに書かれているというもの。実際こういう体験をしたことがある、という人は読者の中にも居るのではないだろうか?ちなみにkirekoはある。徹夜気味の超寝不足状態で、何か書こうと思いながら寝てしまい、起きたら覚えの無い文章が書かれていた時があったから、共感できる部分も無いわけじゃない。そういうのがわかる人は、面白いかもしれない。ただ、打ち出された怪文書、詩の部分に説得力がない。例えば意識の無い散文だとしても、少しばかり深層心理の動機に苦しむというか、統合失調症に陥っているわけでもない主人公が書くには、理解できない節がある。最期も何かやっつけ作業のように終わっているから、読んだ人からすると頭にクエッションマークを浮かべてしまうのではないだろうか。うーん、〆も綺麗に終わってるわけじゃないしなぁ。スリリングな描写がちらほら見えただけに、惜しいかな。


俺だけの甲子園 ジャンル その他 作:ぱんどらの箱

:あらすじ
九回裏ツーアウト。いつだって、ガチンコの真剣勝負があるもんだ。ライバルに全身全霊で俺は投球する。しかし、それにしても暑いな。

:感想
気のせいか?どっかで読んだことがあるような…。まさかな。というわけで感想に入っていこう。とにかくオチを書きたかったために、序盤の勢いが増すのもわかる気がする。オチを見てから読み返すと、一種のコメディーだ。前半のモノローグのシーンを、主人公の居る現実と被らせ想像すると、面白いのではないだろうか。投球の1シーンとしては、もう少し精密な描写が求められる気もするが、そこはオチまでの伏線ということで、ご愛嬌。


フラッシュバック ジャンル  作:蝶野姫菜

:あらすじ
不可解なフラッシュバックに悩まされる大学生、錦戸悠佑は、ある旅行雑誌の写真を見たことがきっかけとなり、睡眠中にも奇妙な体験をするようになる。謎の解明のため、お盆休みを利用して雑誌に出ていた山村を訪れるが------、そこで、村の三人の女性を巻き込んだ想像を絶する真実が解き明かされる。だが、すべての謎の完全な解明は、最後の最後まで待たなければならない。

:感想
またまたまた鬼門のホラー。短編で文字数が3万文字を越えるものを見ると、感想人としては、ある意味しり込みしてしまうが、純粋な読み手としては期待することも多くて、読むことに闘志が沸いてくる。それが期待を裏切らない駄作でなければ、もっと良いこと。というわけで感想に入っていこう。読み筋、いわゆる読者を飽きさせない展開と、作者の描く描写に面白みがあるか無いかで言えば、面白いほうだ。ネタバレになってしまうから控えるが、デジャヴという現象が、どちらかというと現実的なものなのに対して、後半のオカルティックな話の展開は、読み手として面白かった。特に後半のシャワーを浴びる描写のすぐ近くに少女の生首があるという絵は、ホラー要素として評価できる部分だ。これが全て現実だったのか、それとも虚構の世界が見せた一つの未来(過去)だったのか、読み進めていく内に謎を想像させる表現の仕方は上手いと思う。ただ、文章構成的な部分でいうと少し荒っぽいというか、やり方が粗野だ。まず台詞主体の描写において、意図的に闇雲な改行と、必要なのかどうかわからない節がある。台詞が二段、三段と続くのは結構だが、特に意味のない会話は無駄だと思った。あと途中の「否」とか「厭な予感」などに見える、独特の表記は、書き手がわざとやっているのかはわからないが、文章の本筋にマッチングしないような気がした。絶命の声、独特の喋り方など、台詞内の雰囲気の出し方に関しても、描写されてない所があり、一種読み詰まるというか、違和感のようなものを感じる部分が多々あった。内容的には纏まりのある話なので、各部各部のスタミナの無い描写を付け加えるところと、もう少し構成的に要約するところはして、展開をスマートにすることも必要なのでは無いだろうか?


============終わり==============

>感想やってて思うこと
( ゜д゜ )一生懸命書いてる人の裏で、
( ゜д゜ )こういうケチ臭いことを言うのはどうなんだろうか。
( ゜д゜ )別に今に始まったことじゃないが、自分は説明ベタだと思う。
( ゜д゜ )人に物を伝える感想人としては、
( ゜д゜ )もしかしたら不適格なのかもしれない。

第十三話『ノットイーブンアフェクション』

2008年08月10日 18時10分35秒 | 超能力バトル物
 灼熱の召使(サーペント)ロイとの激闘の後。
 海風の止まった闘技場(コロッセオ)と呼ばれた倉庫街の裏手では、精神力の多大な消耗に昏倒するアカネと、同じく戦いの反動で気絶していたダイスケを、必死に介抱するカレンの姿があった。

(ってゆーか、ありえない二人とも。精神も肉体も、短時間でこれだけ消耗するなんて。こりゃ本気でやらないと、マジでヤバイかもね)

 眼を瞑り、思念を集中し、両の手をダイスケとアカネの胸に置きながら、カレンは残っている自分の精神力を二人へ割譲してゆく。意識を失うほど疲弊した彼らの精神力を、唯一回復することが出来るヒーリングの能力を持つ彼女が、己の精神力の殆どを、二人に注ぎ込んでいるのだ。

(や、やばっ…今、一瞬、くらっとした)

 危険から一目散に逃げようとした自分を、体を張って守ってくれたダイスケとアカネ。
 ただの同僚、顔見知りの仕事仲間。そんな一定以上の距離になれない、冷たい関係だと思っていた、自分を命がけで守ってくれた仲間たち。

(でも、やるだけやってみなくちゃね。べ、別に頼んでないけど…皆、私を守ってくれたから。私を、私を守ろうとしてくれた大切な…てっ、な、何いっちゃってるんだろ私)

 ごく僅かな時間に、彼女の中に刷り込まれていた、仲間という言葉。
 彼女の心に留めておくには重く、彼女が意識するのを煩わしがっていたものが、今、皮肉にもカレンという人間を動かしている。ガラにもなく真面目に、ガラにもなく真剣に、他人を救うことに必死になる。

(…でも二人を…私がここで見捨てちゃ、だめなのよ!)

 カレンの心の中の解放。
 そしてそれが共鳴するように送り込む思念波の波を強大にしてゆく。命を救われたという思いが、彼らを助けたいと思う願いが、自分だけが助かりたいと思っていた彼女の心を少しずつ変えてゆく。

「…っ」

 そんな彼女の思いが通じたのか。
 死んだように気絶していたダイスケが、やや苦しそうな表情を眉に描きながら、意識を取り戻す。朦朧とする意識を徐々に回復させ、微かに視界を広げると、そこには「ガラじゃない」カレンの献身的な姿があった。そんなカレンに、自分の意識の復帰を伝えようと、声をかけようと思ったダイスケだったが、まだ全身が痺れるように重かったのもあり、微かな声をあげることも、微かな動きを示す事も出来なかった。
 しかし、ダイスケは次第に確かに見えてくる光景に、思わず口元を緩ませた。

(へえ、あのカレンが…へっ、こりゃあいいもん見せてもらったぜ)

 ダイスケが、口元をニヤケさせながら、薄目で覗いていた世界。そう、カレンは目の前の二人に精神力を注ぎ込む事だけに思念を集中させていたため、些細な動き、そのダイスケの微かな思念波の乱れには気付かなかったのだ。

「結構いいとこあるじゃねえか。カレンちゃんよ」
「えっ」
「けっ…この天下のダイスケさんとしたことが、流石に伸びちまってたか…面目ねえ。ったく、いい大人が、だらしねえ話だぜ」
「よ、良かった。ダイスケ、さん」
「おめえのおかげだぜ。カレン…って」

 無我夢中で二人の介抱を続けていたカレンだったが、意識の目覚めたダイスケの…彼の声を聞いて、思わず張り詰めた精神の緊張を解く。自分に残る精神力を注ぎ続けた彼女の体は、すでに自らの意思でとどまる事が出来ないほど疲労し、起き上がったばかりのダイスケの胸元へ、ただ力なく無意識に倒れこむ。

「おっ! おい! か、カレン!? だ、大丈夫か! おい!」

 倒れこんでくるカレンの細い体を抱きかかえるダイスケに委ねられた、カレンの余りにも細く、軽い肉体。そこから感じられる、血の気が引いたような体の冷たさ。顔を見れば、開くのを止めた眼が、苦しそうにジリジリと眉を動かし。筋力の抜けた肩が、ズッシリと重くダイスケの腕の中に沈む。

「おい、眼を開けろよカレン! なあ、起きてくれよカレン!」

 引っ張られる重力に身を任せるように、弱々しく倒れかかるカレンを見て、慌てて強く抱きかかえたダイスケは、彼女の急な異変に思わず彼女の肩と腕を掴み、アカネの時と同じように声を荒げた。
 倉庫街に響く彼の声は、その心配に比例するように、大きかった。

「起きろよ! カレン! 助けてくれて死ぬなんて、ガラにもなくカッコつけた事してんじゃねえよ!」

 カレンの細い体を揺さぶりながら、ダイスケが夜空に向かって大声をあげた。
 だが、それと同時に、違和感を感じさせる音がダイスケの耳に聞こえてきた。

「…クスクス」

 カレンの体を抱えるダイスケの耳に、篭る音で小さく聞こえた笑い声。
 人を騙す小悪魔のような、高音の微笑。その声の主は、ダイスケの腕の中に抱えられた、一人の少女のものだった。

「へぇ~、アカネちゃんじゃなくても、一応心配してくれるんだ。ダイスケさんは」
「カレン! お、お前意識が…」
「あーやだやだ。ってゆーか恥ずかしくて、ちょっと冗談でやった、こっちが聞いてられないよ。いつも思うけどダイスケさんは、いつも暑苦しいっていうかー。それだからそんな歳になっても女の子にモテないんだよ」
「わ、わざとかよ…」
「私があれくらいで、まいるわけないじゃん」
「誰だって仲間が目の前で倒れ掛かってきたら、心配するだろうが!」
「ってゆーか、正直うざいんだよねそういうの。じゃあさ、ほんとに私が今死んでたら、どうするつもりだったの? 結局ダイスケさんの後悔なんて口ばっかじゃん」
「…そ、それは」

 互いに顔一つ分の距離を保ちながら、ダイスケにやや高圧的な言葉を放つカレン。言い切る彼女の本当の心はどうであれ、確かに危機に巻き込ませたダイスケにとっては、耳の痛い話だった。視線をそらし、少し落ち込んだ様子で、苦々しさに奥歯を噛む顔は、抱きかかえられたカレンにも見えた。

「ってゆーか、もう大丈夫だから、手を離してよ」
「あ、ああ…すまん」

 落ち込み顔のダイスケに、カレンが一言放つ。
 機嫌の悪そうなカレンの視線が、彼女の体を支えるダイスケの手に向けられる。それに気付いたダイスケは、いかにもバツが悪そうな了承の声をあげながら、抱きとめていたカレンの腕と肩を離した。

「お、おい大丈夫か」

 ダイスケが、立とうとするカレンに手を貸そうとする。

「もう子どもじゃないんだから、一人で立てるわよ」

 だが、カレンは思いきりその手を払う。
 邪険、というより嫌悪に近い形で手を払われた事に、また苦い顔を浮かべるダイスケ。カレンは服にかかった塵やホコリに視線を移しながら、ぷいと体の向きを変え、ダイスケから背けた。

(私だって…私だって…)

 穏やかな波止場の海風が再び吹き始め、薄化粧のカレンの顔を冷たくなでる。
 普段なら性別的、能力的にいっても、守られること、助けられることが当然だと思っていた彼女が、初めてダイスケの助けを受けず、消耗した体に踏ん張りを利かせ、自力で立とうとする。

(一人で、大丈夫なんだから…)

 意思ではない、どちらかといえば、これは意地だ。
 無意識の中に芽生えていた彼女の独立意識が、一人で立つ事を選ばせたのだ。
 カレンは、ゆっくりと地に手をつくと、自力で立ち上がろうとした。

「あ…」

 が、しかし。
 二人のために精神力を消耗したカレンが、そう易々と立てるはずが無かった。

「おい! カレン!」

 まるで吊るした糸が切れた人形が、力なく、その場に崩れるように、立とうとしたカレンの体は、海風に煽られるようにバランスを崩す。
 それを見たダイスケが、すかさず倒れこむカレンを抱きかかえた。
 生きてはいるが、抱きかかえられたカレンの眉や口元は苦しみに歪み、感じる精神力は、驚くほど衰弱していた。
 ダイスケは、また不機嫌な顔をされるんじゃないか、と思いながらも、声をかけずにはいられなかった。二度三度、体を揺さぶり、必死に声をかけながら反応を見る。

「…まーた、騙された」

 抱きかかえられたカレンの意識は、確かにあった。
 苦しみに満ちた表情を浮かべながらも、その薄目でダイスケの心配そうな顔を見て、無理してハニカミながら言った言葉は、彼女なりの気遣い、大人への背伸びの感情だったのかもしれない。

「へっ、嘘つくんじゃねえよ」

 カレンのつくった様な表情の意味。彼女らしくない、大人への気遣い。
 それを感じ取ったダイスケは、全てを察した。
 そして、己の手に抱きかかえたカレンに、今度は視線をずらすことなく、優しく声をかける。

「意地なんて張らなくてもわかってるぜ。お前が、いつも頑張ってることぐらい」
「…って、てゆーか…今さら? 気付くの遅いんですけど」
「わりいな。しっかし、自力で立てないぐらい心削りやがって。…ったく、いつも人間関係サバサバしてるお前らしくねえな。何カッコつけてやがんだよ」
「…私だって、たまにはダイスケさんみたいに、格好つけても良いじゃん」

 ダイスケの優しい口調に続いて帰ってくるのは、総じて彼女らしくない、カレンの…何処にでも居る、等身大の女子高生の素直な声だった。

「他人の物真似なんてのは、能のねえ大人のやることだぜ。お前はお前のままでいろよ。それに、そんな真っ青な顔してちゃ、騙せるもんも、騙せないぜ」
「…ちぇっ、精一杯頑張ったふりして強がってるんだから…、だ…騙されてよね」
「やれやれ、そう何度も引っかかるのは癪だが、他ならぬカレンちゃんのためだ。仕方ねえ、騙されてやるかー」
「…ありがとうなんて言わないからね」
「んなこと、わかってらぁ。だけどあんまり、このダイスケさんを心配させるなよ」
「…そう思うなら、もう二度と、私に、こ…こういう事させないでくれるかなぁ?」
「はいはい、わかったわかった。二度とさせねえよ」
「じゃ、じゃあ…約束ついでに、私のワガママ聞いてくれる?」
「なんだ?」

 カレンは一呼吸置くと、つくったハニカミ顔を解いて、こう言った。

「…もう少し、…このままでいさせてよ」
「ちっ、仕方ねえな…」

 「大丈夫」と意思表示するように、言葉の後にダイスケの腕を強く掴みながら、強がり続けたカレンの、初めての本音だった。
 仲間意識を嫌い、他人に必要以上干渉しないこと、そして強がることで自分を作り出してきたカレンという少女は、ダイスケの腕の中で意識を失った。

 穏やかな海風が、黒い眼の狩人たちの背を通り過ぎてゆく。


―――――

 数分後。
 意識を取り戻したカレンは、アカネを負ぶさったダイスケと供に、瓦礫で埋まったコロッセオを去り、トオル達の待つ倉庫へと向かっていた。

「すまねえなカレン。本当ならアカネちゃんの回復も待って、もう少し休ませたいところなんだが」
「あーあ、ほんと。こんなか弱い女の子たちを危機に晒しといて、大の男が情けないってゆーか」
「ひでえ事言うなよ。俺が奴をあそこで奴を仕留められなきゃ、きっとお前もやられてたぜ」
「ってゆーか、関係ないしー。私は二人置いて逃げるつもりでしたからー」

 冷たい海風が建物の合間を縫うように吹く倉庫街に、ダイスケとカレン、二人のいつもの調子が聞こえてくる。言い慣れた悪態、聞きなれた言い訳、あれだけ心が素直になった数分前が嘘のように、いつも通りの感覚が二人を包む。
 だがそれも、今の二人にとっては都合の良い照れ隠しだった。

「おいおい、今のは俺の聞き間違いかぁ? 誰かが思念波で俺に『助けて』って叫んでたのが聞こえたんだがなぁ」
「え!? そ、そんなわけないじゃん」
「まっ、カレンだって女の子だもんな。怖けりゃ怖いって本音もでるって話だ」
「ダイスケさん! わ、私そんなこと言ってないって!」
「なあにそんな顔して心配すんな、誰にもバラしゃしねえよ。俺も男だ。ここだけの二人の秘密にしておいてやるよ」
「って、ってゆーかダイスケさんの聞き間違いだし。そう! あれよあれ、緊急時における幻聴ってやつ!」
「はいはい。そうですかっと」

 恥ずかしいのか、頬を少し赤らめながら、確かに言った事実に対して強く否定するカレン。
 それに突っかかりながらも、笑みを浮かべ、事実を受け流そうとするダイスケ。
 全ては戻りつつある、いつものように。

「ってゆーか、今思い出したんだけど。そういえばダイスケさんも、私やアカネちゃんに恥ずかしい事ばっか言ってくれたよねー」
「すいません。誰にもカレンさんの話はしませんから、言わないでください」
「どーしよーかなー、ってゆーか私、欲しい服あるんだけどー」
「ぐぐぐ…足元みやがって。ああ! ここから無事帰れたら買ってやるよ! いくらでもな!」
「冗談。ダイスケさんのお財布じゃ、一着買うのも、ちょっと厳しいからね」
「カレンお前!」

 動物のじゃれ合いにも似た、そのダイスケとの何気ない会話。
 その中に、本当に大事なものがある事を、まだカレンは気付いていなかった。
 強がりを受け止めてくれる相手、そして冗談を互いに言い合う仲間意識の強さ。
 それが、自分の想像以上に膨れ上がっている事を。

「そういやトオルに連絡は?」
「え、あっ」

 いつもの状況に安心しきっていたカレンは、ダイスケの言葉を聞いて思わず焦りとも驚きともとれる、突飛な声をあげた。
 そういえば、話すのに夢中で、別ルートから進入する手はずになっているトオル達に定期的に入れる連絡を怠っていた。慌てて精神感応の能力を展開し、あたりに思念波を飛ばせる環境を整えると、トオル達の居るだろうと思う場所へ飛ばすカレン。

 だが、カレンの飛ばした思念波は、カレンの目の前で、すぐさま消えた。
 いや、送り出した途端、かき消されたのだ。

「えっ…これって」
「どうしたカレン。トオル達に何かあったか?」
「ってゆーか…感応障壁(サイコジャミング)!?」
「何だって!? どういうことだカレン!」

 カレンは、向かう先にある薄暗い倉庫のほうを指差しながら呟いた。

「あの倉庫を中心として、この倉庫街一帯に、どんな思念波も、振動も、音も通さない…強力な感応障壁が出てるみたい。至近距離…相当近寄れば届くかもしれないけど、ここからじゃまったく意味ないよ」
「おいおい感応障壁だって!? ってことは、敵さんにも強力な精神感応の能力者が居るってことかよ…」
「こんな広域に、こんなに強力な感応障壁を敷き続けるなんて、少なくとも私と同じくらいのエキスパートかもね…」
「まてよ、ってことは、もしかするとトオル達の方にも奴等の手が回ってるって事かよ!」
「わかんない…けど。さっきの男とあれだけ激しい戦闘をしたのに、あのトオルさんがそれに気付かないはずないよ」
「ちっ、こりゃ厄介な事になりそうだぜ。急ぐぜカレン!」
「ちょ、ちょっと待ってよダイスケさん! 置いていかないでよ!」

 心に嫌な物を感じながら、アカネを背負う手に力を入れ、ダイスケは足を速める。
 彼の舌打ちと行動が、背を追いかけるカレンの不安を煽り、思わず不安げな声を心に響かせた。
 その足音も、不安の声も、目指す倉庫から敷かれた、思念波と音の振動を遮る強力な感応障壁により、かき消されてゆく。暗闇に立ち並ぶ倉庫の壁を、反響させることもなく消えてゆく、自分達がそこに居るという鼓動の消失は、急ぐ二人の心を、ただ不安に陥れるのだった。

 波止場に打ち付ける、音の聞こえなくなった波が高くなる。
 辺りは、塩の香りと供に、再び強烈な海風が吹き始めた。