キラークイーン

三菱からスバルへの禁断の移籍
ランエボの魂を右手に、左手にスバルの情熱を。

@killerqueenmomo

道草でみちくさ

2006-10-04 20:07:03 | 雑談
「ねぇ…」
 そういって、桃子は道ばたの雑草を抜いて、握ったグーを自分の胸ほどの高さにまで持ち上げてグーをパーにし雑草を空中に散布した。そして妙にシリアスな顔で言った。
「この草、この後どうなるんだろうね」
桃子の手から解放された雑草はバラバラに空中分解しながら四方八方に飛んでいく、行くアテなどあるものか。どうせその辺のアスファルトに散りばめられて…自転車や人間に踏みつぶされながら枯れて土と化すのだろう。
 桃子の問いに答えなかった私。いや、どちらかというと答える事が出来なかったからかもしれない。いきなり何を言うんだ、という意表を突かれたのと、どういう風に答えていいか分からなかったのだ。そんな自分がどうも気にくわないでいると、桃子はまた自分の口から言葉を放った。
 彼女も私が答えることは出来ないだろう、と考えているからかもしれない。だが、彼女の性格を考えるとただ単に自分の考えを言いたいだけなのかもしれない。よくわからないが…
「これって、今の社会と同じかもしれないよ」
今日は珍しく真面目な事を言うんだな、それはどういう事だ?
「日本は社会主義でなおかつ格差社会が広がってるの、社会主義なんだから格差が出るのは当然だと思うのよ。弱肉強食…強いモノだけが勝つの」
「弱いモノは死ぬわけだ…」
「そう。でも…その後どうなっているのかなぁ、って考えてみたら今の草みたいだなぁって思ったの」
「………ふぅん」
 私にも桃子の言いたい事は大体わかったような気がした。私は最初に桃子から問われた時に、自動車や人間に踏みつけられて枯れ果てて土と化す、と思ったのだ。桃子はそれが今の「弱者」だと言いたいんだろう。弱者は世間から見捨てられ、踏みにじられ、そして…………
「誰も知らない場所で死んでいくの…社会から…」
「そうだな」
 それ以上喋る言葉が思いつかなかった。中には地獄からはい上がり、またリベンジして逆転する事もあるだろう。しかし、宙に舞った雑草のように戻ることはかなり容易ではない。あのホリエモンでさえも裁判所でくすぶっている有様だ。ま、彼ならいくらでもはい上がりそうだが…。もし、彼が空中に飛んでいる雑草だとしたら羽が付いているに違いない。飛べるかどうかは分からないが、普通は草に羽など生えていない。
 

桃子がまた、その辺の雑草を一掴み、空中に放った。
「こういうのもまた社会かな」
桃子が微妙に小さく、世の中を皮肉りながら微笑んだ。
「全くその通りだ」
私も世の中を皮肉りながらそう答えた。


やれやれ。




※弱者=「雑草」という意味ではないので。言われなくても分かるとは思いますが。
コメント
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