まったり~

まったり~っとしながら、お気に入りのものたちの紹介や、日々の出来ごと、読んだ本の感想などなど・・・日常生活を綴ります

『チョコレートの町』

2013年10月14日 | 本の記録
久しぶりに読書の記録と紹介です。

<『チョコレートの町』 飛鳥井千砂 著 双葉文庫 刊行 >

飛鳥井千砂さんの作品は女性が主人公になることが多いのですが、こちらは久しぶりの男性主人公です。






職場の支店のトラブルに借り出されて、故郷の町に戻ってきた主人公。

主人公は、故郷があまり好きになれず、自分の育った家庭も好きになれずにいたため、高校卒業と同時に東京に上京。

大学卒業後にそのまま東京に就職して何年か経ち・・という設定になっています。

その故郷の町は大手のチョコレートメーカーの工場があります。

主人公は、甘いものが苦手。甘ったるいチョコレートの香りも故郷が好きになれない一つと言っています。

職場のトラブルは一件落着し、それまでの店長が退職したので、新しい店長が赴任するまでの間ということで、主人公が店長を勤めます。

職場のメンバーとのやり取りや、地元の旧友たちとのかかわりなどから、改めて故郷を見直し始めます。

最初は家族のことも避けていた主人公ですが、家族と向き合い、旧友と向き合うううちにだんだんとそれぞれの気持ちや考えを読み取っていきます。

飛鳥井千砂さんの作品はどれも、主人公などの心の描写が優れていて、主人公の気持ちに入り込みながら読み進めることが出来ます。

こちらの作品も、飽きることなく最後まで読める良い作品でした。

最後には、自分の故郷と正面から向き合ったおかげで、「故郷も中々良いものじゃないか」と気づきます。

結局は、新店長が決まって主人公は彼女の待つ東京へと帰って行くのですが・・・。
いや、主人公の言葉を借りると「戻る」のだそうです。故郷へは「帰る」だそうです。
それだけでも、気持ちの変化があったことが伺える描写。

読んでいてすがすがしい小説だと思います。

私は故郷が東京。
でも、母校(小学校、中学校は)も廃校になってしまっているし、旧友も都内に住んでいる人はいないし、実家は引っ越してしまっているし、と、ちょっと寂しい状態なので、作者のように「田舎」に故郷のある人が羨ましいです。

自分の故郷をもっと好きになるために手にとって見てはいかがでしょうか?



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