前回(4日)、「国後・択捉は千島にあらず」という議論は通用しないといいましたが、きょう(7日)の朝日新聞は、「サンフランシスコ平和条約で放棄した『千島列島』に国後・択捉は含まれない」という政府と同じ見解を述べています。(国会審議で国後・択捉も放棄したと受け取れる政府答弁もあった、とは4行だけ述べていますが…)
わざわざ地図をしめして、得撫(ウルップ)島とそれ以北だけを「千島列島」としています。
では、国後・択捉は、何列島に属していたのでしょうか?
朝日新聞の記事の一番の問題は、「日本とロシア・ソ連の国境の変遷」と、地図つきで日露通好条約、樺太千島交換条約、ポーツマス条約、サンフランシスコ平和条約と「国境の変遷」を図示しているところ。
平和的な交渉の結果結ばれた条約と、戦争のあと「戦利品」として領土を分捕った条約とを同列に論じています。
ポーツマス条約では、日露戦争の「戦利品」として、日本が南樺太を領土に組み込みました。
サ条約では、第二次世界大戦の大原則である「領土不拡大」に反してソ連が要求した千島列島(国後・択捉をふくむ全千島)にたいする一切の権利を日本が放棄しました。
肝心なのは、サ条約が領土不拡大の原則に違反して、日本に千島を放棄させたことです。
日本が日露戦争の「戦利品」として奪い取った南樺太をソ連に返還したように、第二次世界大戦の「戦利品」としてソ連が奪い取った全千島を日本に返還させる。--これが、歴史的にも、国際的にも文句のつけようのない、問題解決の道筋です。
(歯舞・色丹は、千島ではなく北海道の一部なので、こうしたことと関係なく、即時、返還されるべきです。)
朝日新聞が、政府と同じく言っていることは、「国後・択捉は一度も外国領になったことのない日本固有の領土だ」ということです。
このこと自体は事実ですが、「だから国後・択捉は(サ条約で放棄した)千島に含まれない」といいだすと、筋が通らなくなります。
サ条約で千島を戦利品としてソ連(現ロシア)に差し出した誤りを不問にしようとするから、問題解決の糸口さえつかめなくなる。(戦利品を要求したソ連が悪いのですが。)
仮にロシアが、現在の日本政府の主張に譲歩して、国後・択捉を返還したとしても、不当なサ条約はそのまま残り、北千島はこのままロシア領に入れられたままということになってしまいます。
戦争に勝ったからといって領土拡大を求めてはいけない・認めてはいけない、という大原則に立った交渉を堂々と行うことだけが、本来あるべき全千島返還へつながる道です。
いまのままでは、日本の主張が最大限とおっても、北千島は確実に得られるという、ロシアにとってたいへんおいしい状況になっていることに気づかなければなりません。