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バーとホテルと農業と…           ほんまはテレビ

東京から徳島の山奥へ移住したテレビディレクターの田舎暮らしドキュメント。毎日なんやかんややっとることの記録です。

花の季節

2012年05月11日 11時59分47秒 | いちいち
もうすぐ5月も半ばになるというのに、
朝晩はまだまだ寒い日が続いています。
特に今日の朝は寒かった。
でも、外に出るといろいろな花が咲き始め、
山での暮らしを楽しませてくれています。
この季節、上勝の山で良く見かけるのがシャガの花。



調べてみると種を作らず根茎で増えるので、
ほとんどは人為的に植えられたもののようです。
上勝ではこの葉っぱを「いろどり」として出荷していると聞きました。



アヤメ科の可憐な花にも関わらず、
花言葉は「反抗的」「抵抗」など意外な言葉が出てきました。
気に入ったので家に連れ帰って、
いったいどんなに反抗的なやつなのか、
しばらく観察してみることにしました。


初めてのとりだし

2012年05月08日 09時09分35秒 | いちいち
先日、初めて「とりだし」のお手伝いに行ってきました。
言葉で聞いた時、何を取り出すんだろう?と思ったのですが、
取り出すのはそのままズバリ「鶏」。
「鶏出し」つまりニワトリの出荷のことです。
集合時間は午前2時、農家のおばさんの家に男性5名、女性2名が集まりました。



薄暗い鶏舎には8000羽近いニワトリがいます。
明るくしないのニワトリたちが暴れないようにするため。
今日は夜明けまでに半数を出荷します。



プラスティックのケージに7羽づつニワトリを詰めていきます。
首を掴んで持ち上げるとバタバタと少し暴れます。
「どうもありがとう、美味しい料理になって下さい」
と思いながら1羽1羽詰めていたのですが、やってもやっても終わらない。
4000羽を8人で詰めるとして、1人あたり500羽です。
そのうち両手で2羽の首根っこを掴み、数だけ数えながら詰めるようになりました。
ニワトリたちが暴れて苦しまないように手早く、それだけを意識してひたすらに詰めました。



ケージがいっぱいになったら、3段重ねにして塩ビのパイプで作ったレールに乗せて運びます。
ニワトリ1羽がおよそ2.5キロなので重ねられたケージの重さは50キロを超えています。
Tシャツ一枚で作業しているのに汗がにじみ出てきました。
ひたすらケージを運び、トラックに積み込んでいきます。
今日はこのトラックが3台、作業が終わったのは5時少し前。
空がぼんやりと明るくなり始める頃でした。



ブロイラーはヒヨコとしてやって来てからわずか51日で出荷するそうです。
スーパーなどで「若鶏」と書かれた普段僕たちが口にしている鶏肉です。
初めての鶏出しは想像以上の重労働でした。
でも農家さんは「今日は人手があったから楽やったなぁ」とニコニコしていました。
農家さんにはこの後、鶏舎の掃除や消毒などまだまだ大変な仕事が待っているそうです。

家に帰って服を見るとあちこちに鶏糞が付いていました。
服を全部脱いで一度水洗いしてから洗濯機に放り込み、そのまま風呂に。
手にはニワトリの首を掴んだ感覚がまだ残っていました。

ブログタイトル「いちいち」について

2012年05月03日 11時03分17秒 | いちいち
小学生の頃、神戸の団地で暮らしていました。
近くに小さな山があり友達と基地を作って遊びました。
段ボールと少しばかりの材木を使って作った小さな小屋に、
仲のいい友達だけがこっそりと集まり、日が暮れるまでいろんな話をして過ごしました。

今住んでいるこの家は標高500メートル、周囲にほとんど民家がなく運が良ければ眼下に雲海が広がります。
毎日が楽しいことでいっぱいだった子供の頃の気持ちを呼び覚ましてくれました。


(母屋の手前にある離れの二階を借りて暮らしています)

さて、ブログタイトルの「いちいち」とは「手間」のことです。
上勝町や山梨に遊びに行き、地元の人たちとおつきあいをするようになって、
「手間」という言葉が気になるようになりました。
それまでは出来るだけ手間の掛からない、便利な暮らししか知りませんでした。
お米や野菜を作ったり、味噌を手作りしたり、かまどを使って料理をしたり、
自分で家や露天風呂を作ったり、大切な人へのプレゼントを手作りしたり・・・。
そんな人たちと出会って暮らしの中に手間を掛けることが魅力的に見えてきたのです。

数年前から山梨でお米を作らせて貰っているのですが、
自分の手で植え、自分の手で収穫したお米は格別に美味しい。
それは結局、「作る」ということの喜びなのだと思います。
実は僕はテレビはあまり観ません。
観るよりも作る方が好き。
どんなことでも苦労に苦労を重ねて出来上がった時の喜びは、何物にも代え難いものがあると思います。
そこで現在のテーマは「いちいち」

美味しいレストランに行くことを10とすれば、
自分で料理を作ることは9、
買い物をして自分で食材を選べば8、
食材の野菜を自分で作れば7、
野菜の苗を買わずに、種蒔きから始めれば6、
畑を自分で耕せば5、
調理にガスレンジを使わず、炭を使えば4、
炭焼きができれば3、
炭を作るための木を自分で切ってくれば2、
炭焼き釜を作ることができれば・・・1。

東京ではだいたい8~10くらいの生活だったと思います。
でも、上勝町に来るようになって1からやっている人に沢山出会いました。
その人たちの姿はとても素敵で、力強く、豊かに思えました。

山の奥に移り住んで、少しずつ自分で作ることの喜びを学びたいと思っています。
「いちいち」面倒くさがらず、「いちいち」楽しむ。
それが今の目標です。

田舎暮らしがのんびりだと思ったら大間違い。
いちいち手間を掛けるので、時間がいくらあっても足りません。
スローライフは忙しい、それが今の実感です。


(小さな畑をやってみることにしました。といりあえずジャガイモは順調。レベル7)


改めまして、はじめまして

2012年05月02日 14時51分33秒 | いちいち
しばらく休んでいたブログを再開しました。
これまで読んでくださった方も、初めての方も、はじめまして。
よろしくお願いします。

改めて自己紹介から。
兵庫県神戸市で生まれ、大学から東京に行きました。
大学卒業後は憧れのテレビ番組制作の仕事に就き、早20年が過ぎました。
ドキュメンタリーやドラマなどの番組を作るディレクターです。
東京のど真ん中で息つく間も無く働いていたのですが、
5年ほど前から急激に日本の田舎に魅かれるようになりました。
そんな時、番組の取材で訪れた徳島県上勝町に“一目惚れ”してしまいました。

上勝町は徳島県のほぼ中央、周囲を山に囲まれた人口1900人ほどの小さな町です。
山には美しい棚田と昔ながらの古民家がたたずむのどかな田園風景が広がっています。
しかし現在の高齢化率は50%、過疎化に苦しむいわゆる限界集落です。
これまで日本各地を見てきましたが、この町に来ていろいろなことに驚きました。

いろどり”という日本料理に添える葉っぱを売り出し、町の基幹産業に育てたこと。
町から出るゴミをなくそうという“ゼロ・ウェイスト政策”に日本で初めて取り組んだこと。
限界集落という言葉が嘘のように、町の人々がとても元気で前向きなこと。
そんな人々に引き寄せられて都会からたくさんの若者が移住してきていること。
この町の元気を感じたくて、その理由を知りたくて、僕も度々この町を訪れるようになりました。

初めてこの町に来てから3年、
僕は今年の4月から上勝町の山の中にある古民家を借りて暮らしています。
テレビの仕事を辞めた訳ではありません。
一年間、この町で暮らしながらドキュメンタリー番組を作るためです。
ここは日本の“末端”かも知れません。
しかし見方を変えれば“最先端”のように感じるのです。
東京が日本の心臓なら、上勝町は日本の指先。
指先に血が通わなくなれば人間は健康ではいられません。
そして、この指先で人間は様々なものを作り出してきたのです。

元気な“最先端”上勝町はこれからも“何か”新しいものを作り出すような気がしています。
その“何か”を一年間、じっくり見つめようと思っています。