牧師の読書日記 

読んだ本の感想を中心に書いています。

1月5日(土) 「農で起業する!」 杉山経昌著  築地書館

2013-01-05 08:41:45 | 日記

 妻が図書館で借りてきていた本だったが、私の方が先に読んでしまった。著者は、28年間の外資系サラリーマンと決別して、50歳の時(1990年)に宮崎県で専業農家になった人だ。本書は、従来の農業手法に一石を投じている本だ。

 著者は、「ゆとり」を重視した農業について書いている。それはストレスで大変だったサラリーマン生活の反動もあるのだろう。農業で大儲けするというよりは、自分たちが生活していけるだけの楽しいストレスのない農業生活を目指している。晴耕雨読が彼の農業スタイルだ。晴れた日には外で農耕を営み、雨の日には家で読書をするという比較的自由な生活だ。でも彼は脱サラなので、しっかりと就農計画を立てている。楽しいという意味は、サラリーマンの時とは違い、自分たちで時間の使い方と働き方のすべてを決めることができる、ということだ。特に就農して4年目から経営戦略を立て、構造改善5ヵ年計画をスタートして、働く時間を限定(労働時間短縮)して、目標を労働生産性から収益性の向上に変え、ついには夫婦2人で年間3000時間の労働、週休4日を実現したと書いている。

 著者は、農業もビジネスであるとして、21世紀における農業経営のベストミックス(何にどれだけ力を注ぐかの割合)は、経営40%、マーケティング40%、物づくり20%、としている。農協の指導に盲従して、自分の経営をしていない農家に対して、19世紀的な物づくり偏重から目覚めよう!と厳しい。

 彼はこのように比較している。以下の通り。本からの引用。
 <19世紀的な物の考え方>                     <21世紀的な物の考え方>
・朝から晩まで身を粉にして働く                       ・ゆとりを持って脳を活用する
・農場は隅々まで活用する                          ・作業機の効率を優先する
・面積当たりの収量を最大にする                       ・時間当たりの生産性を最大にする
・作ったものはお上に差し出す                        ・市場(マーケット)と直接かかわる
・十年一日のごとく働く                           ・今日の私は昨日の私と違う
・ものづくり100%だけに集中                       ・経営のベストミックス(経営管理40:マーケティング40:ものづくり20)


 
 著者の営農1年目の計画の大まかなシュミレーションは次の通り(詳細は本の中に記されている)。本からの引用。「1年間に夫婦で3045時間働き、650万円の粗収入で、変動経費149万2千円、減価償却費など固定費は100万円強で、所得は400万円となる。1時間当たり1303円で働いたことになるり、親子3人の生活費は年間借家賃を含め200万円なので、楽に暮らせることが分かった。」 

 実際の収支は次の通り。粗収入270万円。農業経費195万円。

 この本に励まされ元気づけられた。私は農業を一生懸命やろうと思っているが、農業だけに力を入れるというよりは、どちらかと言えば牧師の働きに力を入れたいと思っている(ただ最初の5年間は農業を軌道に乗せることに力を入れたいと思っている)。仕事の効率を良くして、時間当たりの生産性を上げ、上手に経営して収益性を上げていく。これは私が考えていることでもあった。そうしなければ牧師としての働きはできなくなってしまうだろう。まだ晴耕雨読も私が目指している生活スタイルの一つだ。夏は外で働き、雪の冬は家で読書して勉強する。

 またこれも考えていたことだが、行き当たりばったりではなく著者のようにかなりしっかりとした営農計画を作成することの重要性を改めて感じた。たとえ結果が違くなってもいいと思う。修正していけばいいのだから。