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『新型コロナからいのちを守れ!』 西浦博 聞き手・川端裕人 中央公論社 #2

2020年12月17日 06時03分51秒 | 小児科

ようやく読み終えた。ドキュメンタリードラマを見終えた気がした。
第一章の付箋は外したのに、どうしてもまた付けたくなって、感想を追加して第2弾。
こんなふうに読んだノンフィクションは、今までなかった。
聞き手の作家、川端裕人氏が、胸を突く言葉をきちんと拾いあげているからだろう。

以下、付箋をつけた部分。

# 僕たちに足りないことのひとつは「声」を持たないことなんだと、つくづく思いました(136p)

#(もともと押谷先生は早起きして散歩し花の写真を撮るようなおだやかな人だが、
  栄寿総合病院での大規模クラスターが起こったときこれはなんとかせねばと)、

  …「押谷先生が炎のように(保健所に)乗りこんできた」(152p)

#〔メディアに理解してもらわねばとメディア向けの2回に渡る勉強会を、トータルで12時間行った後)
  これは奇妙な経験でした。地ならしを専門家がどんどんしていって、背後で国はあまりそんなことは知らない。(167p)

# 押谷先生からも電話がありました。もう有識者会議当日の朝でした。そこで、
 「もしもし、8割おじさんですか?」と電話で聞かれたのが8割おじさんの始まりなんですけど…(178p)

# (42万人という被害想定を西浦氏が語った後)
  後々に押谷先生からは「これは首相が言うべきことなんだ」「調整が整わないんだったら言ってはいかんのだ」
  といったふうに諭されました。…一方で激昂されたのは「(国民への)励ましが足らない」ということです。(186p)

# (妻の登山仲間である日本科学ジャーナリスト会議の元会長・小出重幸さんから言われたこと)
 「ナイチンゲールの後輩が8割おじさんだと思っています」とか
  わけのわからないこと(?)もふくめて声をかけてくださっていました。(198p)

# (バッシングを受けて弱っている時、専門家会議のメンバー・防衛医大の川名明彦先生から勇気づけるメールが届いた)
  普段はそれほど話さない人から、急にこんなことを、それも自分が弱っている時に言われて、
  とても嬉しかったです。(204p)

# 日本科学ジャーナリスト会議主催の「8割おじさん西浦教授に聞く〜新型コロナの『実効再生産数』のすべて」
  というニコニコ生放送… ハードな内容だったのにもかかわらず、リアルタイムで視聴した人は32000人超に達した。
  事後に行われたアンケートでは90.8%がとても良かったと… (208p)

# (押谷先生も体調を崩して会議に出られないことが度々あったが)
  ぼくもゴールデンウィーク明けくらいから自然に、空腹時と満腹時の両方で胃がキリキリと痛くなって、

  薬局で一般医薬品として購入できるガスターを買って飲み始めます。

# (アベノマスクに対しての尾身先生の反応)
 …それどころか、布製マスクを配ったりしましたよね。あの時に尾身先生は西村大臣にマジ切れして怒っていました。
 「なんだあれは! あんなことにお金を使うのか」と言って、
  担当大臣がその場で「すみません」と謝ってましたが。(213p)


# (専門家有志の会で「直球すぎる」と諭される)
 「特に西浦君、あなたは全力でボールを投げすぎるから」みたいなことも言われていました。(217p)

# (感染症以外で政策については直接こうしなさいと言わないと一線を引いていたが)
  どれだけ政府の補償がのろくても、心の中で泣くぐらいしかできないというのは、僕たちにとっては
  ものすごくフラストレーションです。僕たちが見殺しにしているように思われますので。
  訴訟がおきるリスクは実際にあって、警告文書や一部では訴状も届きました。
  僕には脅迫状が届き、生まれて初めて殺害予告を受けました。(227p)

# でも、そんなふうにフラストレーションがたかまった、厚労省とも仲違いしそうなとき、週末の有志の会で、
  尾身先生がテーブルを叩きながら、先生より若い我々専門家全員を叱るようにおっしゃったんです。
 「厚労省がちびちび書き換えるとか、そんなしょうもない話はどうだっていいんだ。
  責任取れと言われるんだったら俺が取るぞ。お前たちはそんなものなのか…今はとにかく流行を止めるぞ」
  と言いながら、目に涙をためてみんなをいさめてくれたことがありました。(228p)


#(政府が「移動を7割制限」で譲らなかったとき尾身先生が言われたことの伝聞)
 これは同席した人から聞いたんですけど、「ここは7割か8割という話ですけど、医学者として見るなら、
 僕は8割を取るなあ」とかゆっくる言いながら、中身の文章を変えていくんです。
「最低7割ということでしょうね」って言ったかと思えば、すぐに「極力8割でしょうね」と言い、
 それから「そういうことだったら最低7割のほうはもう要らないかもしれないぐらいですね」
 とか言いながら、日本語が変わっていく。(230p)

#(70歳を超えてリーダーシップを取っている尾身先生が生放送で話したエピソードへの感想)
 一方、NHKの『日曜討論』で(尾身先生が)「この番組は若者は見ていないでしょうけども、若者の感染が重要で…」
 と言ったすぐ後に、「あ(言ってしまった)」と生放送中に正直に天を見上げるような
 スーパーかわいい部分も持ち合わせているのが、尾身先生のステキなところです。(231p)

と、このように押谷先生や尾身先生のこともいろいろ語られ、だんだん、みなのキャラが見えてくる。
だからほんとうに、「これ、ドラマだよな」と思ってしまって、最後の方ではうるうるしてしまった。

ただし、回想が多いので、時々時系列がわからなくなる。
年表のような時系列表をつけてくれると良かったのに(笑)。

いやあ、危惧していたとおり、しっかり語ってしまったな自分。
申しわけありません。
でもほんっと、すごい本です、これ。お勧めです。ちょっとお高いけれど。

 婦人公論.jpに、西浦博先生のインタビューが掲載されている。
 二次感染を減らす4つのポイントは、
 「人口密度」「気温」「移動」「コンプライアンス」
 コンプライアンスというのは、ソーシャルディスタンスやマスクや手洗いをどれだけ守れているかということ。
 接触については、伝播の起こりやすい接触に対象を絞って削減する政策に切り替える必要があると。
 さすがだなと思った。

西浦先生はこんなすごい生活をしながら、論文書きもしていたのだ。
医者は理系というより文系が多い気がするが、西浦博医師は完璧な理系。
バリバリの研究者って、やっぱりすごい。
児文協のウェブ講座の感想を送ったのだが、講座ブログでご紹介いただいた

ちょっとはずかしく(笑)。
今日もびよよよ〜〜ん (*^ __ ^*)

コメント (3)
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