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すべての仮説は検証しないと古代妄想かも知れません!新しい発想で科学的に古代史の謎解きに挑戦します!

なぜ邪馬台国問題が解決しないのか?( ゚Д゚)

2024-03-21 19:19:59 | 古代史
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#2022-10-30 01:39:18に記事にしましたが、前回の記事「邪馬台国論争終了のお知らせ?」で述べたように邪馬台国畿内説(纏向遺跡説が有力)は、実は事実を説明できない部分があるので、明快な反論がない限り、棄却されるべき仮説なのです。それにもかかわらず反論なしで、NHKという公共放送・マスメディアを利用して定説化しようと努力しているようです。これは真実を科学的に探求しようとする立場からみると、到底受け入れられない話ですので、今回この記事を見直しました。

畿内説の研究者は以下に説明した「信念の固着」のうちの「3.先天的方法(a priori method)」に該当する話なので、九州説の研究者の反論は承知の上で、畿内説を主張しているようです。しかし、C.S.パースが指摘するように、畿内説は「個人の好み」のレベルでしかないのです。

実は、それに対抗する、有力とされる九州説(吉野ヶ里遺跡説や筑紫平野説など)も、事実、つまり考古学や民俗学などの成果に基づく妥当な演繹的推論によって構築された仮説にはなっていないのです。

「4.科学の方法(scientific method)」でないと真実を探求するという意味で学術的な定説にはならないのです。ということで、一部、切れていた画像のリンクを修正して再度掲載します。よろしければお付き合いください(;^ω^)


標記の件に関して、研究者や関心のある人々のこの問題に関する考えが人によって異なる信念となっているので、解の一致があまり期待できないのですが、C.S.パース(Charles Sanders Peirce)が論文「信念の固着」(The Fixation of Belief 1877)で述べた考えの中にヒントがあります。といってもこの論文に書かれた内容は、勿論パースの言葉ですので、日本人の素人には馴染みがないので難解です。そこで、赤川元昭「仮説構築の論理」(白桃書房2021年2月26日, pp.91-99)の中で分かりやすくまとめられていますので、これを参考にして考えてみたいと思います。

C.S.パースによれば、人間はいつも疑念(Doubt)を持った場合には探求(Inquiry)をする生き物のようです。パースの言う探求とは、日常生活の一場面で頻繁に行われるものから、最先端の科学研究まで、幅の広い精神活動だとしています。そして、多くの場合、最初の疑念を持った事象を説明付けるものを論理的に推論(Reasoning)するのが探求ですが、最終的に信念(Belief)が生まれることによって探求は終わります。その信念は次の四つの方法で生まれるとしています。

1.固執の方法(method of tenacity) 自己中心的であり、自己の願望にかなえばよいといった基準によって信念が決定され、それに固執する。・・・自己中心的な信念は、本来、個人的なものであるがゆえに多様であり、その信念に固執する限り、時には憎悪や侮蔑といった信念同士の衝突が避けられない。したがって、・・・社会の場で共通の信念を作り上げる必要がある場合であれば、固執の方法とは全く別の方法に頼らざる得ない。

2.権威の方法(method of authority) 集団中心的であり、集団の目的にかなうような信念が作り上げられる。・・・神学的な教義や政治的なイデオロギーといった社会で共通に保持される信念は、・・・集団的な判断にゆだねられる。このため、しばしば、国家のような集団は正しい公認のイデオロギーを国民に繰り返し説くだけではなく、公認のイデオロギーに反対する説が流れたり、それが支持されたりする場合、それを阻止するような権力が与えられていることも少なくない。パースによれば、・・・・固執の方法に比べると知的ならびに道徳的な点ではるかに優れているのだという。ただし、・・・不完全さをもっている。・・・また、「権威の方法」とは、いわば信念の押し付けに過ぎない。もし、幅広い見識を人々が持つならば、国家公認の見解が他の見解よりも優れているとは限らないという疑念が生じることもあるだろう。したがって、人々が互いに意見を交流して、そこから新たな意見を導き出すことができるようになるならば、権威の方法のもつ不完全さは、ますます明白なものになっていく。(注1)

3.先天的方法(a priori method) その方法の特徴を一言でまとめるのであれば、思弁的な普遍性であり、信念が形成される基準とは、その信念が理性にかなうものかどうかということである。この方法では、どのような信念が信じるに値するかが考察され、議論され、そして決定されることになる。・・・個人の好みに固執することはない。・・・理性の働きによって、人々がお互いに話し合ったり、様々な視点から物事を考察したりしながら、各人の信念が自然の道にさからわずに徐々に発展していくようになるからである。・・・だが、明らかな欠陥があることをパースは指摘する。それは、理性というものが人間の普遍的な判断基準であるとは想定しずらいことにある。実際のところ、この方法は個人の好みの発展のようなものにしか過ぎず、確固とした意見の一致に到達するかどうかは定かではない。

4.科学の方法(scientific method) この方法の特徴を一言でまとめるならば、経験的普遍性であり、信念を決定付けるのは、その信念が観察事実や実験結果と一致するかどうかという基準によって判断される。・・・すべての人の結論が究極的には同一のものになるという可能性が開かれている。・・・それは、「先天的方法」と同様、人間が持つ自然な探求心によって生み出されたものであり、また、客観的な事実と合致するという点で、人々によって共通に認められたものでもある。

権威の方法は、例えば邪馬台国大和説や九州説などを唱える大学の指導教官やその上の師匠の説を受け入れることになりますが、その研究室の人々は探求を進めるのが仕事なので、矛盾などが生じれば、当然、権威の方法で押し付けられた信念の部分まで見直されなければならなくなります。

そこで、偉大な師匠の説を完全否定はできないので、何とか部分的にでも、あるいは大枠で踏襲しながら、その立場から些細な矛盾は不確実な解釈の一つとして無視し、先天的な方法によって信念をまとめるとそれぞれの学派が維持できるわけです。各学派は、互いに欠陥があることは理解しながらも、それらは不確定な解釈の一つと考えるので、結局、邪馬台国問題が解決しないのが現状だと思います。

当然、このような各学派の主張は互いに一致しませんから、従来の研究はパースの言う「科学的方法」ではなかったのだと分かります。

パースの科学的な方法は、仮説には間違いがあるという立場です。もしも仮説が正しいとすると、どういう結果が予測できるかを考えて、その予測に関する事実を探して、予測が正しいかを検証します。

もしも事実が予測と異なるものであれば、その仮説が反証されたということで、仮説の修正が必要です。全てを見直すか、部分的なもので済むかは分かりません。しかし、一定程度の検証を進めている段階では部分的な修正で済むと考えられます。

予測結果が仮説から妥当な演繹的推論として事実と一致したとしても、論理学でいう後件肯定ですので、前件部である仮説が真実であるという保証はありません。その事実を説明できる別の仮説が存在する可能性があるからです。ですから、仮説から予測される別の事実を探して同様に検証を繰り返します。そのような網羅的な帰納的推論によってその仮説が検証されたならば、その仮説は真実に近い、あるいは真実である可能性があると判断できるのです。その仮説が信念になります。これを科学的信念と呼びます。

アブダクションは科学的な信念形成の手法だ!

ただし、古代史研究の場合には一つの大きな問題があります。それは、考古学資料の絶対年代が確定していないことが多いので、事実といっても仮説と事実の年代が一致するのかが問題になると思います(注2)。しかし、繰り返し検証を行うことにより、年代的な順序の整合性が取れますので、仮説の中で決定した年代が考古学資料の年代の可能性があると考えることができます。

このような科学的な探求の手続きによる検証が、多くの研究者の批判に耐えられれば、その仮説は有望なものであるといえます。しかし、上で述べた事情から、そのような仮説が唯一存在するとは限らず、複数の有望な仮説があった場合には、その優劣は、それまで謎であった歴史上の事柄がどれだけ精密に解明できたかで評価できるのです。

【参考文献】
赤川元昭「パースと科学の方法」流通科学大学論集ー流通・経営編ー23巻2号,75-90(2011)この論文の中に詳しく解説されていましたのでぜひご一読ください(#^.^#)。


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(注1)すべての問題について人々の考えを統制することはできないという意味で不完全といっている。

(注2)C14年代法が絶対年代測定に使われますが、通常測定誤差は±「30~50年」といわれています。しかし、今問題としている古墳時代初頭(三世紀後半から四世紀初頭)はもっと誤差が大きいことが知られています。奈良県桜井市のホケノ山古墳の炭化木材の5点を測定した結果、「紀元前30~後245年の275年間に広く分布した(表1)」とあります。
【参考資料】鷲崎弘朋「炭素14年代法と邪馬台国論争―年輪年代法との連動を通して」
                                


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