絶滅危惧種 八尾のNPOが保護活動
絶滅危惧種の淡水魚「ニッポンバラタナゴ(コイ科)」の保全に取り組む八尾市内のNPO法人「ニッポンバラタナゴ高安研究会」の活動が、日本ユネスコ協会連盟(東京)の「プロジェクト未来遺産」に府内で初めて登録された。生息地のため池の水を抜いて浄化する「池干し」を実施し、生態系の再生に成功。同研究会代表理事で、清風高校教諭の加納義彦さん(58)(八尾市)は「次の世代に貴重な生き物を受け継いでいきたい」と話している。(浦野親典)
ニッポンバラタナゴは体長2~4センチ、春から夏の繁殖期にドブガイなどの二枚貝の中に産卵する。かつて琵琶湖淀川水系以西の池沼や農業用水路などに広く生息していたが、近年、雑種が増え、さらに外来魚のブルーギルに食べられてしまうケースが続出。現在は八尾市のほか、四国、九州の一部にしか生息しておらず、環境省のレッドデータブックで「絶滅危惧1A類」に指定されている。
加納さんは約30年前、研究者から、淀川にいなくなったニッポンバラタナゴが八尾市高安地区のため池に生息していると聞いた。顧問を務めていた同校生物部の部員たちと一緒に、同地区のため池約400か所のうち約30か所で生態調査を始めた。
調べてみると、同地区では休耕田の拡大で放置されるため池が増え、ニッポンバラタナゴの数が減っていることがわかった。加納さんは「このままでは八尾からもタナゴがいなくなってしまう」と危機感を持ち、1998年、知人ら約30人で同研究会を設立。99年には土に埋もれていたため池を保護池(約150平方メートル)として造成し、ニッポンバラタナゴとドブガイを放流した。
1年目はどちらも増加したが、2年目になると、池の水質が悪化し、減少。悩んだ加納さんは、地元で古くから冬から春にかけての農閑期に行われてきた「ドビ流し」と呼ばれる池干しにならい、保護池の水をいったん抜いてみた。
底に積もっていたヘドロを取り除き、近くの山の土を池の底に敷いたうえで、改めて水を入れて放流。すると、数個に減っていたドブガイの稚貝が、一気に1100個に急増。ニッポンバラタナゴの総産卵数も、6500個から約2倍に増えた。
研究会は、その後も池干しを実施。今では、管理する保護池は七つになった。地元の小中学校にビオトープを作るなど、子供たちに関心を持ってもらう取り組みにも力を入れている。
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プロジェクト未来遺産には昨年12月に登録され、今後、助成金などの支援がある。地域の文化や自然遺産を次世代に継承する事業を応援しようと、日本ユネスコ協会連盟が2009年に始めたプロジェクトで、3回目。22都道府県から33件の応募があり、10件が選ばれた。
加納さんは「これまではタナゴの保護を活動の中心にしてきたが、繁殖しやすい環境を今後も維持するには、ため池を農業に活用する新しい仕組みが必要。農家と力を合わせ、地元の農業を盛り上げたい」と話している。
今年は1000尾以上の稚魚が生まれるかも知れない。
(2012年1月12日 読売新聞)
要するに現在の環境変化は農業形態の変化も含めてタナゴの棲息に向かない状態になっている。これを昔の状態に維持するのは多大の労力や費用が必要となる。趣味や酔狂で行うにはいいがこのままでは長続きしないかもしれない。
我が家の水槽にも何種かのタナゴはいるが、累代飼育の効果で毎年繁殖を継続している。