さて前のページまでは「ハーフェレ・キーティングの第2地球を使った実験」について述べてきました。
そこでは飛行機に積まれた原子時計は地球の自転速度の倍で静止系に対して運動しているのでした。
で、その飛行機の対地飛行速度は時速800km程度でしたか。
さてそれで「いまではもっと早く空を動けるものがある」のです。
それは「国際宇宙ステーションISS」ですね。
7.66 km/s、時速約28,000km、地球を約90分で1周、1日で約16周する様です。(注1)
ですがこの軌道は地球の赤道に対して45度ぐらい傾いている様です。: https://archive.md/nt6CP :
それで第二地球ではISSを赤道上で地球の自転方向に飛ばします。
で、赤道上の時計と時間の遅れを測定するのです。
そうすると計算式は以下の様になります。
ハーフェレ・キーティングの第2地球を使った実験の式に対してISSは地球の自転速度の16倍で飛びますからその部分が修正されています。
(sqrt(1-((160*10^-7*cos 16x)^2+(160*10^-7*sin 16x)^2))-sqrt(1-((10*10^-7*cos x)^2+(10*10^-7*sin x)^2)))/(2pi) をxが0から2πまでの範囲で積分
答えは
1.2750000000819187・・・*10^-10
nsに直します。
44.9*60*60*10^9*(1.2750000000819187*10^-10)
https://ja.wolframalpha.com/input?i=44.9*60*60*10%5E9*%281.2750000000819187*10%5E-10%29
答えは
20609.10000132ns
飛行機の場合はドリフトなしで
242.4600000003030375ns <--ドリフトなしの場合
でしたのでさすがはISS、ほぼ85倍の時間の遅れが生じています。
さてそれでここでドリフト量0.001Cを加えます。
(sqrt(1-((160*10^-7*cos 16x-0.001)^2+(160*10^-7*sin 16x)^2))-sqrt(1-((10*10^-7*cos x-0.001)^2+(10*10^-7*sin x)^2)))/(2pi) をxが0から2πまでの範囲で積分
答えは
1.275001*10^-10
nsに直します。
44.9*60*60*10^9*(1.275001*10^-10)
https://ja.wolframalpha.com/input?i=44.9*60*60*10%5E9*%281.275001*10%5E-10%29
答えは
20609.116164ns
20609.10000132ns <ーードリフトなし
差分を取ると
0.016ns
飛行機の場合は差分は
0.00024ns でしたので
こうしてISSを使った場合にはドリフト量0.001Cに対する検出感度が67倍になっている事が分かります。
それですでに見てきましたように75ns程度のずれ量が検出されないとハーフェレ・キーティングの実験レベルでは「ずれ量は有意である」とは認められないのでした。
そうであれば 75ns÷0.016ns=4687.5
測定時間間隔を4688にすればよい、ハーフェレ・キーティングの実験がほぼ2日間でしたので
2日X4688=9376日
25.7年間、ISSに積んだ原子時計のデータと地上でのデータを比較する事で「静止系が客観的な存在であってそれに対して地球が0.001Cでドリフトしているらしい」という事が分かる事になります。
さて25.7年間ではいかにも長すぎます。
そうして時代は21世紀です。
ハーフェレ・キーティングの時代よりも格段の技術の向上、原子時計の精度向上と安定度の向上、地球の重力場の測定などなどによって「21世紀版ハーフェレ・キーティングの実験」では75nsではなくて7.5ns程度のずれ量で有意判定ができる、と期待する事は妥当な事であります。
さてそうなりますと実験期間も25.7年間ではなくて2.6年と10分の1になります。
これであればISSを使った実験も可能となるでしょう。
つまりは「やる気になればそこまでのデータが取れるような技術水準まで地球文明は到達した」という事になるのです。
注1:ちなみに静止衛星速度は秒速3km、月は秒速1kmとの事。
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