さてそれでまずは「ミュオン異常磁気モーメント測定」につての話をしないといけません。
しかしながらこの話、正面から取り組みますとまことに厄介な複雑なものになっています。
例を示しましょう。すでにこういう報告がなされています。
「Muon g − 2: レビュー」: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0550321322000268#br0270 :核物理学B 975巻、2022 年 2 月、: https://archive.md/r6LZo :
まことに読みごたえがある、すべて必要な参考資料にはアクセス出来る様になっている、まさに「レビューと言うのにふさわしい内容」となっています。(注1)
まあこういう資料は一読して「どこに何が書かれている」のか、知っておく程度の事は必要でしょう。
さて今この分野の実験で主導的な立場にあるのがアメリカの「フェルミ研」と日本の「KEK」の様です。
という訳で「KEK」が開いた記者会見からレビューします。
『記者サロンを開催しました 「ミューオンg-2実験の最新結果を徹底解説」』: https://ipnsweb.kek.jp/wordpress/ja/news/4937/ : https://archive.md/MmDX0 :2023年9月3日
『米国のフェルミ国立加速器研究所(FNAL)から8月10日午前10時(米国中部時間)に、ミューオンg-2(異常磁気能率)の最新実験結果が発表されました。
高エネルギー加速器研究機構(KEK)は8月18日にオンラインで記者サロンを行い、FNALにおける実験の最新結果について、詳しく解説しました。・・・
異常磁気能率は、素粒子が持つ磁力のうち、量子補正(※1)に起因するものであり、未知の粒子や力が存在すれば、その効果が顕著に現れ、とりわけミューオンで観測しやすいと考えられています。FNALのミューオンg-2実験の最新測定結果は、2021年の最初の結果発表以降さらに測定・解析を行い、前回より実験データが増えた結果、約2倍の精度で前回の発表と矛盾のない値となることが明らかになりました。
測定精度は0.20 ppm(1千万分の2)であり世界最高の精度を達成し、2020年の標準理論の計算値に比べ、誤差の5.0倍大きいという結果になりました。FNALは2025年を目途に、最終結果を発表する予定です。
その間、素粒子標準理論の計算値にも進展がありました。2020年以降、理論計算に関連する新しい研究結果がいくつか発表され、中には理論予想値と実験値との乖離が小さいという結果もあり、これらの理論計算結果を統一的に理解し検証する研究が進んでいます。
※1 量子補正とは、素粒子の相互作用において現れる量子力学の高次の効果を正確に取り入れるための補正です。・・・』
これ以上の内容については本文を読まれる事をお勧めします。
そもそも「ミュオン異常磁気モーメントって何?」については例えばこのような資料があります。
「新物理に挑む Quest for new physics」: https://g-2.kek.jp/new-physics/ : https://archive.md/hnbNJ :2023年
『素粒子は自身が持つスピンに起因して磁場中で小さな磁石として振る舞います。このふるまいの大きさを表す量にg因子と呼ばれる無次元の定数があります。g因子は、相対論的量子力学を記述するディラック方程式によると厳密に2となります。しかし、ここに量子補正の効果が加わると2から微小にずれることが知られています。このg因子の2からのズレのことをg-2と呼びます。・・・
ミュオンは電子と同じ電荷を持ち、質量が電子より200倍大きい粒子です。ミュオンのg-2は標準理論の枠組みを用いて非常に高い精度で計算されており、標準理論の理論計算との比較のために、高精度の実験も行われてきました。
ミュオンのg-2は標準理論の理論計算と実測結果に4σの大きな乖離があることが知られています。2021年にフェルミ研究所における最新の測定結果が公表されましたが、過去の実験結果と無矛盾であり、理論計算とのズレを示唆するものでした。(注:最新の情報では上記で示した様に5σになっています。)』
なかなか話の具体像が見えません。
という訳で次は「フェルミ研での仕事の様子を紹介した記事」です。(動画付)
「悪い天文学| 新しい物理学に向けたミューオン実験ポイント」: https://yurui.jp/%E6%82%AA%E3%81%84%E5%A4%A9%E6%96%87%E5%AD%A6-%E6%96%B0%E3%81%97%E3%81%84%E7%89%A9%E7%90%86%E5%AD%A6%E3%81%AB%E5%90%91%E3%81%91%E3%81%9F%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%AA%E3%83%B3%E5%AE%9F%E9%A8%93/ : https://archive.md/2IXsl : 4月 2021
まあ動画をみて、本文を読んでいただければと思います。
で、動画のポイントをマンガでまとめたものがこれになります。
「ミュオンg –2 異常の説明」: https://physics.aps.org/articles/v14/47 : https://archive.md/y1kwD :April 7, 2021• Physics 14, 47
「日本語で」となるとこうなりますか。
「g-2 実験 量子電磁力学の精密テスト と 標準理論のかなた」: https://slidesplayer.net/slide/15404475/#google_vignette :2001年までのまとめ
「レプトンg-2のQED高次補正」: https://slideshowjp.com/doc/73350/ :2008年
あるいはこれ
「レプトンの異常磁気能率」: https://slidesplayer.net/slide/11232933/ :2007年
それで論文は、となりますと
「ミューオンg − 2/EDM実験」: https://www.jahep.org/hepnews/2012/12-3-5-g-2-Mibe.pdf :2012 年 (平成 24 年) 11 月 21 日
「ミュオン異常磁気双極子能率・電気双極子能率」: https://www.jstage.jst.go.jp/article/radioisotopes/69/4/69_690403/_pdf/-char/ja :RADIOISOTOPES, 69, 145–153(2020)
「ミュオン異常磁気能率g–2の超精密測定」: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jccj/19/3/19_2020-0025/_pdf :J. Comput. Chem. Jpn., Vol. 19, No. 3, pp. 64–70 (2020)
「此のたびのミューオン異常磁気能率」: https://www.jahep.org/hepnews/2021/40-2-2-g2.pdf :2021 年 (令和 3 年) 8 月 11 日
その他、参考になる資料として
「J-PARCにおけるミュー粒子g-2/EDM精密測定の紹介」: http://www.icepp.s.u-tokyo.ac.jp/info/sympo/18/torape/20120222_kazuki_ICEPPsympo.pdf :2010年~2011年
「BNLでのE821ミュオン異常磁気モーメント測定の最終報告書」: https://journals-aps-org.translate.goog/prd/abstract/10.1103/PhysRevD.73.072003?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=nui,sc :2006 年 4 月 7 日発行
「フェルミ研究所ミュオンにおけるミュー粒子の異常歳差運動周波数の測定 g−2実験」: https://journals.aps.org/prd/abstract/10.1103/PhysRevD.103.072002 :2021 年 4 月 7 日発行
「muon g-2 の理論」: https://indico.ipmu.jp/event/164/contributions/2417/attachments/2070/2499/dnomura-slides.pdf :2018年10月31日
BNLでのより詳細な実験報告(ドクター論文)として
「μ粒子の寿命測定」: https://www.sas.upenn.edu/~tqian/thesis.pdf :2006年8月
gooブログのご同輩の記事として「未知の粒子の証拠を'最後の望み' の実験で確認」: https://archive.md/QgT8b : https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1633b67fee07fe5ff96097a67cceb02a :
以上、資料集の様になってしまいましたが、これはこれで「良し」と致しましょう。
・おまけ
「超対称性粒子と暗黒物質」: https://indico.cern.ch/event/1029546/contributions/4322819/attachments/2262661/3840927/SUSY_DM2021.pdf :←新物理があるはず・・・という話の関連でミュオン異常磁気モーメントの事がでてきます。
「J-PARC muon g-2/EDM実験における超低速ミューオン静電加速収束器の設計」: https://indico.cern.ch/event/1125863/contributions/4725299/attachments/2396051/4096901/23_am_aritome_shoichi.pdf :←J-PARCで行われる予定の実験の概要(一端)がわかります。
「素粒子ミューオンの奇妙な歳差運動の原因は「第五の力」か、「未知の次元」か」: https://archive.md/t542b :
注1:似たように恐ろしい資料には「標準模型におけるミュオンの異常磁気モーメント」: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0370157320302556#sec0 :というのもあります。ご参考までに。
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