特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その2-18・再び:通説の式とアインシュタインの式

2023-10-16 02:35:34 | 日記

以下、通説の式とアインシュタインの式の再確認となります。

これは多くの方々がやっている「アインシュタインの式を変形させて通説の式に統合しているやり方」への批判になります。

そうして又「その2-5」の続きでもあります。

 

「その2-5」では相対速度の符号の取り方を通説の式に合わせました。

というのも通説の式とアインシュタインの式は符号の取り方が真逆になっているからです。

そうしてこの2つの式を1つのグラフとして表す為にはその様な工夫が必要でした。

それでこのページでは相対速度の符号の取り方をアインシュタインの式に合わせます。

そうすると通説の式は

『ν’=ν*sqrt(1-V^2)/(1-V*Cos(Θ)) ・・・(1)式

但し静止している観測者に対して光源が動く場合: Θ  : 観測者から見た光源の動く方向(Θ  =0 :観測者に向かってくる場合)』

から

『ν’=ν*sqrt(1-V^2)/(1+V*Cos(Θ)) ・・・(1)式

但し静止している観測者に対して光源が動く場合: Θ  : 観測者から見た光源の動く方向(Θ  =π :観測者に向かってくる場合)』

と直すことになります。

それでアインシュタインの式は従来通り

『ν’=ν*(1-V*Cos(Θ))/sqrt(1-V^2) ・・・(2)式

但し静止している光源に対して観測者が動く場合: Θ  :光源から見た観測者の動く方向(Θ  =π :光源に向かってくる場合)』

です。

 

このように修正してまずはグラフをプロットします。

おっと相対速度Vは従来通り0.5Cです。

y=sqrt(1-0.5^2)/(1+0.5*cos(x)),y=(1-0.5*cos(x))/sqrt(1-0.5^2),y=1000000*(x-pi/2),y=1 プロット  0<x

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3Dsqrt%281-0.5%5E2%29%2F%281%2B0.5*cos%28x%29%29%2Cy%3D%281-0.5*cos%28x%29%29%2Fsqrt%281-0.5%5E2%29%2Cy%3D1000000*%28x-pi%2F2%29%2Cy%3D1%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88+%C2%A00%3Cx%3Cpi+%2C-0.1%3Cy%3C2

表示はΘが0からπまで、上のカーブがアインシュタインの式、下のカーブが通説の式になっています。(注1)

横線はいわゆるドップラー係数が1、つまり周波数が変化しない位置をしめしており、それより上は青方偏移を下は赤方偏移する事を示しています。

そうして横ドップラーの起きる場所はΘ=π/2≒1.57であり、その位置は縦棒が示していますがアインシュタイン条件、つまりは光源が静止していて観測者が動いている場合と通説の条件=観測者が静止していて光源が動いている場合のそれぞれのドップラー係数が読み取れます。

さてそうしますと横ドップラーシフトの観測ではアインシュタイン条件では青方偏移を観測し、通説条件では赤方偏移を観測する事になるのが確認できます。

ここでΘ=π/2の時のそれぞれの式の形を確認しておきます。

(1)式(π/2)=ν*sqrt(1-V^2)

(2)式(π/2)=ν/sqrt(1-V^2)

V=0.5を代入すると

(1)式(π/2,0.5)=ν*sqrt(1-V^2)≒0.866ν

(2)式(π/2,0.5)=ν/sqrt(1-V^2)≒1.155ν

 

さてそれで、皆さん方がおやりの方法はここで相対論的な光行差の式を持ち出してアインシュタインの式にそれを代入し、「ほらみてごらん、アインシュタインの式は通説の式になった」というのです。

従って「アインシュタインの式は不要で通説の式がドップラーシフトを表す一般式である」と主張するのです。

 

ちなみにアインシュタインの原論文ではその光行差の式は

cosφ’=(cosφ-v)/(1-v*cosφ)

となっています。

ここでφ'は光源を静止させ観測者を動かした時に光源から観測者に向かう光が観測者の速度ベクトルとなす角度をφとしたときに、観測者自身がその光線をどの様な角度で観測者に届いたのかを認識する角度になります。

 

例えば静止している光源が上方から下方で動いている観測者に光を出します。

等速直線運動している観測者の速度ベクトルと光源からの光が直交する時が横ドップラーを測定できるタイミングです。

それで光行差の式は「静止している光源から見ればπ/2、つまりは90度の直交条件で相対速度が0.5Cで動いている観測者に光を届けたとしても観測者はそれを真上から光が届いた、とは認識しない」という事を示しています。

光行差の式より

cosφ’=(cosφ-v)/(1-v*cosφ)

=(cos(π/2)-0.5)/(1-0.5*cos(π/2))

=(-0.5)/(1)=-0.5

従って

φ’=invcos(-0.5)=2/3*π

となります。

さてそれでこの値を今度は通説の式に代入する事になります。

なんとなれば「観測者から見た時に上記の状況はどのように認識されているのか」を計算したら、φ’=2/3*π、つまりは「光線は真上からは来ていない」となったからですね。

観測者からみると「光源がこちらに向かって0.5Cで動いてきていて、それが直交条件になる前に光を出してそれを観測した」となっているのです。

そうであれば「観測者が静止していて光源が動いている場合のドップラーシフトを表す式」を使う事になります。

つまり「通説の式を使う=(1)式を使う」のです。

 

ν’=ν*sqrt(1-V^2)/(1+V*Cos(Θ)) ・・・(1)式より

ν’=ν*sqrt(1-V^2)/(1+V*Cos(Θ))

=ν*sqrt(1-0.5^2)/(1+0.5*Cos(2/3*π))

=ν*1.1547005・・・

≒1.155ν

はい、これはアインシュタインの式で計算した横ドップラーの時の値そのものになっています。

その状況をグラフで確認します。

y=sqrt(1-0.5^2)/(1+0.5*cos(x)),y=(1-0.5*cos(x))/sqrt(1-0.5^2),y=1000000*(x-pi/2),y=1000000*(x-2*pi/3),y=1.155,y=1 プロット  0<x

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3Dsqrt%281-0.5%5E2%29%2F%281%2B0.5*cos%28x%29%29%2Cy%3D%281-0.5*cos%28x%29%29%2Fsqrt%281-0.5%5E2%29%2Cy%3D1000000*%28x-pi%2F2%29%2Cy%3D1000000*%28x-2*pi%2F3%29%2Cy%3D1.155%2Cy%3D1%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88++0%3Cx%3Cpi+%2C-0.1%3Cy%3C2

緑色の縦棒が角度が90度の直交条件を示します。(注1)

そうしてオレンジ色の縦棒が角度が2/3*πの位置を示します。

話のスタートが「光源が静止していて観測者が動く」でしたからアインシュタインの式、つまり上のコトブキ色のカーブを使います。

その時に角度90度の横ドップラーでは紫色の横線が示すように「青方偏移を観測」します。

さてそれで今度はその状況を観測者側の立場から見たのでした。

そうすると光行差の式より「観測者は光はφ’=2/3*πで来ている」つまり「光源がこちらに向かって0.5Cで動いてきていて、それが直交条件になる前に光を出してそれを観測した」となっているのです。

そうしてその角度、「観測者が光源を見ている角度がφ’=2/3*πである」となっているのです。

そうであればこれは「観測者が静止していて光源が動いている場合を計算できる式=通説の式を使う=(1)式を使う」のです。

その(1)式は青色のカーブで示されています。

そうしてその青色のカーブと角度が2/3*πの位置を示すオレンジ色の縦棒との交点が(1)式をつかった場合の回答を示しています。

そうしてその回答は紫色の横棒と一致しています。

つまり「光源が動いている」とした場合でも「青方偏移を観測する」のです。

 

この結果は「当然と言えば当然の事」であります。

物理的な状況は一つ。

「光源が静止していて観測者が動いている」が前提で横ドップラーを観測したら「青方偏移していた」のです。

それを今度は観測者主体でみたら「赤方偏移していた」となったとすれば「それは本当におかしな事」となります。

一つの物理的な状況に対しては横ドップラーは一つに決まるのです。

そのあたりまえのことが光行差の式を使う事で確認できた」という事になります。(注2

 

さてこの状況の時に多くの方々がやっている事は「ここで相対論的な光行差の式を持ち出してアインシュタインの式にそれを代入し」、「ほらみてごらん、アインシュタインの式は通説の式になった」というのです。

「それは何をやっているのか」と言いますれば「光行差の式を使ってコトブキ色のカーブを青色カーブに変換した」のです。

そうしておいて今度は角度90度の所の青色カーブの値を見て「赤方偏移している」としているのです。

そうして「なぜφ’=2/3*πの時の角度を使わないのか?」と聞けば「横ドップラーを測定するのは角度が90度だから」と答えるのです。

さてこれは「光行差の式の乱用」「誤った使い方と解釈」であります。

そうしてそのような「光行差の式の乱用」「誤った使い方と解釈」から「横ドップラーは常に赤方偏移する」が出てくるのであります。

 

注1:プロットされたカーブが説明と異なる場合はもう一度プロットさせてみてください。

注2:上記で展開した話は「ドップラーシフトはローレンツ不変である事」を証明したものになっています。

その見方を以下に示します。

「まずは光源が静止していて観測者が動いている」と言う条件で横ドップラーを観測すると青方偏移していた」のでした。

それで今度は観測者を静止させなくてはいけないので、「観測者と同じ方向に同じ速度で移動する観測者②」を登場させます。

この観測者②にとってはドップラー効果を観測した観測者は静止していて光源がこちら側に近づいてくるように見えます。

それはつまり「動いていたドップラーシフトの観測者の動きを止める様にローレンツ変換をした」という事に相当します。

それでその時に観測者②がドップラーシフトの観測結果を見ても「青方偏移していた」のでした。

従って「ドップラーシフトの観測結果はローレンツ不変である」という事になるのです。

ちなみにこのことは「固有時がローレンツ不変である」という状況によく似ています。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/X3WT5