1、アインシュタインの式と通説の式から同じ縦ドップラーの式が導出される理由
見かけ上はこの2つの式は全く別の形、逆の形をしています。
そうであれば「光源と観測者の間の相対速度がV」という「相対性原理からすれば同じ状況である」にもかかわらずこの2つの式は一方は何時も赤方偏移を示すのに他方は常に青方偏移を示すのでした。
さて「このような状況はまずい」ので、従って多くの方々は「アインシュタインの式を変形させて通説の式に一本化する」ということで「ドップラーシフトの一般式は通説の式でよい」としてきました。
つまりは「横ドップラーでは常に赤方偏移する」としたのです。
はい、それは「横ドップラーでは青方偏移を観測する事はありえない」という宣言でもありました。(注1)
しかしながら本当のドップラーシフトの一般式は(1)式でした。(注2)
この式からはアインシュタインの式も通説の式も出てきます。
以前に指摘した様にアインシュタインの式も通説の式も(1)式が表すドップラー係数の集合の一断面を表すものでしかないからです。
そうしてこの(1)式を縦ドップラーの条件で解きますと sqrt(1+V)/sqrt(1-V) という式が出てきます。
そうであれば(1)式の一断面を表すものでしかないアインシュタインの式も通説の式も、縦ドップラーの条件でそれを計算すれば sqrt(1+V)/sqrt(1-V) という式が出てくるのは当然という事になります。
なんとなればアインシュタインの式も通説の式も「見かけは異なりますが、もともとは同じ一つの(1)式から出てきたものであるから」です。(注2)
2、(1)式は相対性原理に反しているのか?
特殊相対論導出の前提となったアインシュタインの相対性原理は次のように宣言されています。
「全ての慣性系において物理法則は同じ式で表される」
それに対してそれを拡大解釈した通説の相対性原理は次のようになります。
「全ての慣性系は平等である=優先される慣性系はない=客観的に存在する静止系はない」
さてそれで「通説の相対性原理」からは「時間の遅れはお互い様」が出てきます。
その様に最初に宣言したのはミンコフスキーでした。
それに対してアインシュタインは「ぐるっと一回り、そのあたりを運動してきた時計は元の位置にそのままいた時計よりも時間が遅れる」といいました。
さて、ここでのポイントは「アインシュタインは時間の遅れはお互い様とは言ってはいない」という所にあります。
さてそれでドップラーシフトの一般式が(1)式ですと「時間の遅れは一方的」であり「客観的な静止系は存在する」という事になります。
つまりは「(1)式は通説の相対性原理には反する」のです。
さあそれで(1)式はアインシュタインの相対性原理には反していますか?
当方の見る所では「(1)式はアインシュタインの相対性原理には適合している」となります。
なんとなれば(1)式は「任意の慣性系において行われたどのような種類のドップラーシフトの実験であっても、その実験結果を説明する事ができるから」であります。
そうであれば「(1)式はアインシュタインの相対性原理には適合している」事になります。
なんとなれば「どの慣性系においても同じ(1)式が成立しているから」です。
注1:従って「横ドップラーの実験で青色偏移が観測されると通説の式は一般式ではない」という事が証明されるのです。
そうして逆に「青色偏移が観測された実験結果」は自動的に「ドップラーシフトの一般式は(1)式である」という証明になるのです。
注2:ドップラー効果を表す一般式
f1=f0*(1-Vr*cos(Θ1))/(1-Vs*cos(Θ2))*sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2) ・・・(1)式
ここでVrは静止系に対する観測者の相対速度(=固有速度)、Vsは静止系に対する光源の相対速度(=固有速度)を示します。
但しVr、Vsの方向はお互いが近づく方向をプラスに取ります。
f1は観測される周波数、f0は光源の周波数です。
角度についてはこれまでと同様の取り方になります。
Θ1=π、Θ2=0がお互いが近づく方向、Θ1=0、Θ2=πがお互いが離れる方向です。
但しこの時 Θ2=abs(Θ1-π) の関係が成立しています。それで
(1-Vr*cos(Θ1))/(1-Vs*cos(Θ2)) の項が古典的なドップラー効果を表す部分で
sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2) の項が相対論的な効果(=時間遅れの効果)を表します。