特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その2・ 固有時パラドックス

2023-03-19 02:06:51 | 日記

3.固有時パラドックスの発生

相対速度V=0.8Cで接近しつつある二つの時計A,Bを考えます。

時計Aは左から右に、時計Bは右から左に等速直線運動をしています。

そうであればこの2つの時計はそのまま2つの慣性系を代表しています。

そうしてこの時計にはそれぞれ観測者が立っています。



いま距離 L だけ離れた所でその2つの時計をリセットします。

そうしてそのまま2つの時計は接近して距離 L の中のどこかの場所ですれ違います。

それですれ違う時にお互いに相手の時計の針の位置を確認します。

こうして時計A,Bはすれ違った時に相手の時計の時刻を知る事になります。



さてこの時に時計Aの立場に立てば「距離L離れた場所でリセットした時計Bがこちらに相対速度Vで接近してくる」となります。

距離Lを速度Vで走りますからt1秒後に時計Bはこちらに到着する、と時計Aは計算します。ここでt1=L/V です。

さてそうであればすれ違う時の時計Bの針の位置(=リセットしてからここまで来るのにかかった経過時間)τ2(タウ2)は次のように計算できます。

τ2=t1*sqrt(1-V^2)

時計Aは静止しており、時計Bが運動しているから、その分時間が遅れる、と言うのが相対論の主張ですからこうなります。

そうして又これは前回示した様に時計Bの固有時そのものになります。



さてそれで、今度はこの状況を時計Bの立場で考えます。

時計Bの立場に立てば「距離L離れた場所でリセットした時計Aがこちらに相対速度Vで接近してくる」となります。

距離Lを速度Vで走りますからt2秒後に時計Aはこちらに到着する、と時計Bは計算します。ここでt2=L/V です。

さてそうであればすれ違う時の時計Aの針の位置(=リセットしてからここまで来るのにかかった経過時間)τ1は次のように計算できます。

τ1=t2*sqrt(1-V^2)

そうしてこれは又時計Aの固有時そのものになります。

時計Bは静止しており、時計Aが運動しているから、その分時間が遅れる、と言うのが相対論の主張ですからこうなります。

そうしてまたこのように時計Aと時計Bの立場は入れ替える事が可能である、と「時間の遅れはお互い様」が主張するのです。



さてここで

t1=L/V=t2

従って

τ2=t1*sqrt(1-V^2)

=t2*sqrt(1-V^2)

=τ1



こうして以上の議論から出てくる結論は

τ2=τ1 つまり

時計Aの固有時と時計Bの固有時は同じである、と言う事になります。

それで、時計Aの固有時と時計Bの固有時はどの場所で同じだったのでしょうか?

2つの時計がすれ違う場所で同じであったのです。

そうして前回示しましたように「固有時は客観的な存在」でありますから、どこから見てもその値になるのです。

そうして固有時は「2つの時計がすれ違うというイベントが発生した場所までにそれぞれの時計が移動するのに必要だった経過時間を示します」から、すれ違う時には時計A、Bの針の位置はそれぞれτ1とτ2の位置にあった、と言う事になります。

すれ違う時のそれぞれの時計が示していた時刻

時計A=τ1

時計B=τ2

そうして

τ2=τ1 ですから

「時計Aから時計Bを見ても、時計Bから時計Aをみても時間の遅れは観測できない」という事になります。



まとめますと、

宣言1・相対速度Vで運動している方はsqrt(1-V^2)で時間が遅れる。(=ローレンツ変換が成立する。)

宣言2・時間の遅れはお互い様(=全ての慣性系は平等)

宣言3・固有時は客観的な存在(=固有時はローレンツ不変)

以上の宣言=前提から出てくる結論は「相対速度Vで運動している2つの慣性系の間では時間の遅れは観測できない」と言う事になります。

しかしながら実験による実測では「時間の遅れが観測されている」のです。

これがここで問題にしている固有時パラドックスの内容です。



さてそれで、そうであれば上記の3つの宣言は同時には存在できないのです。

つまり3つのうち一つは退場しなくてはならない、という事になります。

そうして当方の見る所、退場する事になるのは「宣言2・時間の遅れはお互い様」と言う事になります。(注1)



さて以上がいままで業界が問題にしてこなかった固有時パラドックスとなります。



注1:「宣言2・時間の遅れはお互い様(=全ての慣性系は平等)」はローレンツ変換則を導出するまでは一定の役割を持っていましたが、ローレンツ変換がこの宇宙で成立している事を認めた場合、「全ての慣性系は平等」という宣言は役割を終えた、と見る事が出来ます。

実際、ローレンツ変換の導出後で「宣言2・時間の遅れはお互い様(=全ての慣性系は平等)」を必要条件とする理論展開は存在していない様に見えます。

他方で「宣言3・固有時は客観的な存在」(=固有時はローレンツ不変=時計AとBがすれ違った時のそれぞれの時計の針の位置はどのような観測者から見ても変化しない)という内容を基礎とした固有時導入からの理論展開は相対論を量子力学に展開していく上での基礎となり、その結果は相対論的量子力学の誕生につながっています。ーー>「相対論 四方山話」: https://archive.md/Qj7Bh :を参照願います。


PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/NCHeR