今日の秋櫻写

こちら新宿都庁前 秋櫻舎

8ダンス

2012年06月05日 20時14分45秒 | きもの
秋櫻舎で飼っていた蚕が
とうとう繭をつくりだした。

満月のきのう、一番はやい子らが
営繭(えいけん:繭をつくること)したという。
きのうは秋櫻舎を休んでいたので、
今朝美しく白い繭を数個みた。


蚕の一生はおおよそ次のとおり。


  卵
  ↓
  孵化
  ↓
1齢 幼虫(3~4日)
  ↓
1眠&脱皮
  ↓
2齢幼虫(2~3日)
  ↓
2眠&脱皮
  ↓
3齢幼虫(3~4日)
  ↓
3眠&脱皮
  ↓
4齢幼虫(5~6日)
  ↓
4眠&脱皮
  ↓
5齢幼虫(6~8日)
  ↓
  営繭(2~3日)
  ↓
  繭
  ↓
  化蛹(かよう:糸を吐き終わり、繭のなかで脱皮して
         幼虫がさなぎになること)
 ↓
さなぎ(10~12日)
  ↓
  羽化
  ↓
成虫・交尾・産卵



繭になるまで約25~28日。
一生としては約50日。

繭になるまでたべてねて、脱皮して、
たべてねて、脱皮してを4回も繰り返す。
その間、桑の葉をひたすらたべるのだけど、
4齢~5齢くらいの食欲たるやである。

ちなみに、ワタシがものすごくすきなのは、
蚕が新鮮な桑の葉をかじるときの匂いと音。

匂いはこれ以上ないというくらいの若い森の匂いがし、
音は山の中にいるときにふるような優しい雨の音だ。

昔、養蚕農家に取材に行ったときにその匂いと音を
初めて体験したのだけど、あまりにきもちよくて、
脳みその奥がゆるっゆるになったのがいまだ忘れられない。




これはたぶん3齢のときかな。
一番上の写真が抜けがら。



デジカメがオートになっていて、暗かったのだろう、
シャッターを押したらフラッシュが。
うわああ、ごめん!!!

ものすごく焦ったが、でも目はほとんど
見えないそうだからほっとした。
その代わり蚕は嗅覚がすさまじく鋭いらしく、
犬の嗅覚は人間の100万倍以上あるというが、
蚕はその犬をはるかに上回る嗅覚の持ち主だそうだ。

ということはああ、バラの花・・・。
やはりむせかえっていたに違いない。
それに毎日の昼食、それにそれにこの前の
ナイトコスモスではカレーを作ったし、
古着の整理もしたなあ・・・。

強くたくましく育ってくれて
ほんとうによかったと思う。




5齢の子たち。
わかるかな、糸を吐きだすときが近くなると、
体が半透明になっていって、体の中の体液が
透けてみえるようになる。
そしてぷくぷくになるの。

さらに体の表面。
そーっと触ってみると、ものすごくしっとり
吸いつく感じなのにさらさらなのだ。
こんな質感のお肌だったら最高だろうと思う。




糸を吐きはじめる。
頭を天に向けて「8」の字を描き出す。
みていると、面白くて、神秘で、目が離せなくなる。




「きゃあ、かわいー」
なんてはしゃいでるのはつかの間で。
あっという間に引きずりこまれる。
蚕の世界に。

このやわらかさ。ふしぎな動き。
泪がでてくる。




青いような、緑のような体。
美学の世界では「グルー(ブルーでもなく、グリーンでもなく)」
なんて言い方もするけれど、どんどん透明になりながら、
体液をどくどくいわせながら糸を吐きつづけ、
あの小さな美しい繭の中に見えなくなってしまうのだ。

この蚕は、皇室でも養蚕されている小石丸という
品種なのだけど、小石丸の繭は俵型。

絹糸はこの繭から引いたもの。
きものを1反作るのに要る繭の数は2600個~2700個。
小石丸は小さいからもっと必要になってくるだろう。

ひとつひとつの繭ができるまで、
一頭一頭の蚕がああして繭を作るのだ。

きものとは、なんと豊かな衣服であろう。






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