今日の秋櫻写

こちら新宿都庁前 秋櫻舎

その他 その3

2011年03月28日 15時03分50秒 | きもの

西澤さんの作品をめぐって授賞作品を競り合った(!)
『きものサロン』の副編集長とベテラン編集者のおふたり。




帯部門の今年の最優秀賞は
上田環江さんの作品。


これもすごい。

友禅で御簾がかかっている部分と
かかっていない部分を描き分けているのです。
生地の織りがストライプになっているわけじゃないのですぞ。



御簾がかぶっているほうの秋草は、
生地の裏から濃い色目の染料で描いています。

若冲の画にヒントを得たそうです。




これは小倉貞右さんの梅の帯。
すてきでしょ?





3月25日(金)は
高田馬場で授賞式でした。





比佐子さんの講評を聴くお三方。
左から熊崎さん、小倉さん、高橋さん。
秋櫻舎ではもうお馴染みの面々であります。
しかしこの3ショットはある意味で貴重だ。

この会場の前には大きな桜の木があって
毎年花は満開か、散りはじめくらいなのに
今年は一つも開いていないのです。

今年は花が遅いって本当なのね。


とにかく。
早くあたたかくなりますように。


受賞者にインタビュー その2

2011年03月28日 14時46分01秒 | きもの

高橋 孝之氏 絵羽「松竹梅」





手描きです




今回、高橋さんの出展作品のほぼすべてが賞をとっていました。
でもそれは確かにそうで、作品はどれも勢いと力にあふれており、
こちらに訴えかけてくるものばかりでした。

「こすもす賞」に決まった作品は、無線友禅といって、
糸目糊で防染をする本友禅に対して、糸目糊を使わずに
筆で直接生地に模様を描いて染める技法で作られたものです。
「その中でも原点の縞」を手描きで。

「最後までまっすぐ引くだけじゃなく、
 これは模様の途中でいったん止めて、
 また同じ調子で引いていくのが難しかったところですか」

ここしばらく手描きの線描に夢中になっていらっしゃるので、
よろけ縞はなさらないんですかとたずねると

「まっすぐに引くのが気もちいいんでね。
 よろけは逆に意図的になっちゃうんだよ。
 それにまっすぐでも、ちょっとした手で
 色の違いや味わいが出るんです。それがたのしい」

今回各賞を総ナメした線描シリーズにはこんな裏話も。

「おととし初めてこの縞を出したときは、事前審査でハネられたんですよ。
 その理由が手描き染めに見えないと。型染か織りか分からない、
 江戸小紋と紛らわしいというところまで出た。
 これを見て手描きだって分からないのか!とカーっと来ちゃってね(笑)。
 それで翌年は途中で縞をねじったりして縞だと分かるようにしたんです」

この論議はけっこうな波紋を投げかけたそうです。
でもさすがは江戸っこ。負けず嫌い。

とはいえ、そのおかげですてきな縞のねじり小紋も、
今回の絵羽も生まれたのだから、終わりよければすべてよしです。





上は、最優秀賞を受賞した
高橋さんの作品「白樺」。




西澤 幸雄氏 帯「蔦(つた)」



小津映画のきものは、ほとんどが浦野利一もの。
当時のおしゃれな女性の憧れのきものでした。



鬼シボ(古代ちりめん)のたっぷりした質感に
ダイナミックな蔦がいっぱいに。




2007年につづき、二度目の受賞です。

「ちょっと変わっていて、着やすそうなものというところを
 狙いました。配色にもこだわりました」

西澤さんの作品の特長は何といっても素材です。
西澤さんは、今ではなかなか染め帯では
お目にかかれない古代ちりめん一筋。
シボの高いちりめんです。

「たっぷりの古代ちりめんだけを二十年来使っている」
というのですから相当です。

「古代ちりめんは同じ色を使っても、
 深みのある色が出るんですよ。その魅力にとりつかれたんですね。
 九十九パーセント、生地はこれです」

審査会で賞を決める際の札入れは早い者勝ちなのですが、
この「蔦」は『きものサロン』副編集長から寸での差で勝ちとりました(!)。

色の美しさにも魅せられます。

西澤さんご自身がすきだという「藍でもない紫でもない」地色は
「他に何の色をもってきても映りがいい」。

実際、この蔦の葉には黄色やモスグリーン、
そして白が部分的に射されているのですが、
その洗練された美しさははっと人を惹きこむのです。

「濃淡はっきりした色味がすきです。
 だけど原色ではなくてね。能衣装の生(ナマ)の色を
 ちょっと殺すっていうのかな。
 わりと好みがはっきりしているので色では迷いません」

小津安二郎監督作品の衣装きものを
担当していたことでも有名な先代の浦野理一氏とは、
ずっと一緒に雑誌『ミセス』掲載用の作品づくりを
なさっていたそうです。

「浦野さんとはけんけんごうごうやりあってましたが、
 あの人の影響ってのはずっと受けています」


第49回 東京手描友禅コンクール その1

2011年03月28日 14時38分47秒 | きもの

3月4日(金)東京都立産業貿易センターへ
染芸展コンクールの審査会に行ってきました。

今年度の「こすもす賞」の受賞作品は、
絵羽部門は高橋孝之氏、
帯部門は西澤幸雄氏に決定しました。


高橋 孝之氏 「松竹梅」 絵羽












西澤 幸雄氏 「蔦(つた)」 帯









◎「こすもす賞」授賞作品の講評  中谷 比佐子   

【絵羽部門】 高橋 孝之氏 「松竹梅」

まず少し残念だったのは、一番選びたかったきものが、タッチの差で他の方に取られてしまったこと(!)。でも着る立場からしたら、こちらのほうが着やすいのは確か。同色濃淡でまとめられていた縞のラインが非常に効いており、フリーハンドなので立体感が出ている。そうすると着たときに、その立体感が浮き上がってくるのがいい。梅や松の丸いラインと対照的なのも面白い。すごく精緻なのにふくらみがあるのも手描きだから。


【帯 部門】 西澤 幸雄氏 「蔦(つた)」

帯は基本的に、主張が強い帯がいい帯だと思っている。古代ちりめんに非常に大胆な柄で、古典でありながら、配色もあわせてとてもダイナミック。染め帯の場合、紬や小紋に合わせることが多いが、その際のきものは主に表情がないものを選ぶ。そこへこうした大胆な帯をもってくると、着姿に迫力が出る。これがいい。蔦の独自性もよかった。蔦はたいてい紅葉した葉を描くことが多いが、それを紫で表現したところが面白く、よいと思った。