夕飯を済ませて、夜の横浜を歩く。
うっかり〆に家系など食べてしまったものだから腹ごなしをしなければならない事情もあったけれど、好きな街というのはどれだけ歩いても苦にならない。
関内駅から馬車道、日本大通りを通って山下公園へ。トライアスロン大会のためのステージやら大会ロゴ入りフェンスなどを眺めながら公園を東に突っ切り、そのまま新山下のヒルサイドガーデンの階段を上がって港の見える丘公園へ。階段を上がりきったところの狭い坂道ではカップルがひしと抱き合っていた。邪魔してすまんな。
もったりとした花の香りが漂う公園から港を少し眺めたあと、公園正門横の石段を下って元町商店街へ。ショーウィンドウをチラ見しながら商店街を西方向に踏破して、石川町から中華街を通って再び山下公園に戻った。元町商店街の気の利いた街燈を見たあとだと、山下公園の白色の武骨な照明がなんとも好ましい。氷川丸のライトアップなんてダサかっこよくて最高だと思う。
東京の大学に通っていた時から横浜は好きな街だった。ここに住めるようになったらいいなと思いつつも、希望業種・職種に就くことを優先して大阪へ行くことを決めた。今住んでいる神戸もまずまずだと思うけれど、やはり横浜にはかなわないなと出張のたびに思う。
昔は「東京で就職して横浜に住んでいたかもしれない自分」を想像するたびにどことなく苦しかった。「やり直すのは今からでも遅くないんじゃないか」などという馬鹿な考えを、全面的に馬鹿だと否定しきれない可能性があったからだ。ただ、結婚して10年、上の娘が小学校に通いだして2年目、もう関西・神戸に完全に根を下ろしてしまった今となっては、そんなパラレルワールド的考察を単なる夢想として楽しめるようになっていることに気づいた。
それがほんとうに幸せなことかどうかはわからないけれど。