読書の秋到来。
村上春樹氏がどこかで書いていたと思うのだが、たまに辞書をぱらぱらめくるというのもなかなか楽しいものだと思う。
以前流行った「新解さん」の話ではない。ぐっと来るのは挿絵なのだ。
例えば広辞苑第四版2354頁の「ほくそ-ずきん【苧屑頭巾】」の挿絵。頭巾を図示しなければいけないはずの挿絵にもかかわらず、ある人物が座ってひょうたんから何か液体を注いでいる絵になっている。それにしてもその人のうれしそうな顔ったら。液体はおそらくお酒なのだろう。旅の途中なのか、それとも狩の途中なのか、ともあれ一息入れての一杯というのはいいものだ、うん。僕も何か飲みたくなってきたな、というところまできた時に気づく。
「あ、この人そういえば頭巾かぶってるわ」
辞書という、言葉の意味を効率よく調べるための存在の中にある非効率な図。この場違い感にたまらなく魅かれてしまう。
さらに2083頁の「はな-おうぎ【花扇】」。その花扇らしき花束を持った若い男性の他に、その花扇を濡らすまいとするのか傘で覆う老人、さらにその二人を先導する若い女性も描かれている。花扇を説明するには明らかに過剰だろう。老人の方を向いた若い男性の困ったような顔と老人の楽しそうな顔の対比につい目が行ってしまうことになる。この若い男性は老人に無理やり借り出されて花扇を運んでるのだろうか。だとしたら楽しそうに傘を持ちながら進む老人の心理が理解できていないんだろうな。「もう花扇なんか流行らないんだよ爺さん」くらいは思っているかもしれない。というかそれよりも先導の女性が左手に持つ黒い箱は何だ。何が入っているんだ。
ちっとも花扇に身が入らないのだ。
もうひとつ2740頁の「ろく-ろ【轆轤】」。和服の二人がろくろを使って共同作業をしている図なのだが、片方の男性に幼子(彼の子供だろうか)がじゃれついて着物をはだけさせてしまっている。しかもその幼子、バックショットながら下半身丸出しである。じゃれつかれている男性は怒るというよりも何か微笑んでいる表情。一方、もう一人の眼鏡の男性は眉間に深い皺を寄せてその二人を見ている。そりゃそうだ。今は仕事中なんだと。子供の相手をしている暇があったら作業に集中しろと。自分の子供ならなおさら仕事場に入れるなと。眼鏡の男性に全面的に賛成。でも、と思う。怒っているだけではないのかもしれない。眉間の皺は或いは羨望の表情なのかもしれない。眼鏡の男性、子供好きなのかな、でも未婚なのかな。とか考えているうちに気づくのだ。
「このろくろの絵、仕組みがよくわからないや」
辞書の挿絵、秋の夜長にいかが。
ちなみに1861頁の「とび-にんぎょう【飛人形】」どこかに売ってないかな。ハート鷲掴み。
村上春樹氏がどこかで書いていたと思うのだが、たまに辞書をぱらぱらめくるというのもなかなか楽しいものだと思う。
以前流行った「新解さん」の話ではない。ぐっと来るのは挿絵なのだ。
例えば広辞苑第四版2354頁の「ほくそ-ずきん【苧屑頭巾】」の挿絵。頭巾を図示しなければいけないはずの挿絵にもかかわらず、ある人物が座ってひょうたんから何か液体を注いでいる絵になっている。それにしてもその人のうれしそうな顔ったら。液体はおそらくお酒なのだろう。旅の途中なのか、それとも狩の途中なのか、ともあれ一息入れての一杯というのはいいものだ、うん。僕も何か飲みたくなってきたな、というところまできた時に気づく。
「あ、この人そういえば頭巾かぶってるわ」
辞書という、言葉の意味を効率よく調べるための存在の中にある非効率な図。この場違い感にたまらなく魅かれてしまう。
さらに2083頁の「はな-おうぎ【花扇】」。その花扇らしき花束を持った若い男性の他に、その花扇を濡らすまいとするのか傘で覆う老人、さらにその二人を先導する若い女性も描かれている。花扇を説明するには明らかに過剰だろう。老人の方を向いた若い男性の困ったような顔と老人の楽しそうな顔の対比につい目が行ってしまうことになる。この若い男性は老人に無理やり借り出されて花扇を運んでるのだろうか。だとしたら楽しそうに傘を持ちながら進む老人の心理が理解できていないんだろうな。「もう花扇なんか流行らないんだよ爺さん」くらいは思っているかもしれない。というかそれよりも先導の女性が左手に持つ黒い箱は何だ。何が入っているんだ。
ちっとも花扇に身が入らないのだ。
もうひとつ2740頁の「ろく-ろ【轆轤】」。和服の二人がろくろを使って共同作業をしている図なのだが、片方の男性に幼子(彼の子供だろうか)がじゃれついて着物をはだけさせてしまっている。しかもその幼子、バックショットながら下半身丸出しである。じゃれつかれている男性は怒るというよりも何か微笑んでいる表情。一方、もう一人の眼鏡の男性は眉間に深い皺を寄せてその二人を見ている。そりゃそうだ。今は仕事中なんだと。子供の相手をしている暇があったら作業に集中しろと。自分の子供ならなおさら仕事場に入れるなと。眼鏡の男性に全面的に賛成。でも、と思う。怒っているだけではないのかもしれない。眉間の皺は或いは羨望の表情なのかもしれない。眼鏡の男性、子供好きなのかな、でも未婚なのかな。とか考えているうちに気づくのだ。
「このろくろの絵、仕組みがよくわからないや」
辞書の挿絵、秋の夜長にいかが。
ちなみに1861頁の「とび-にんぎょう【飛人形】」どこかに売ってないかな。ハート鷲掴み。