兵庫県東部、大阪府との県境に位置する尼崎市は、かつては阪神工業地帯の中核を担う工業都市として「工都」と号し、立ち並ぶ煙突が町の誇りとされた。現在でも様々な業種の約30の製造工場がひしめき合う工場密集地である。
現在の日本の繁栄は工業の発展によってもたらされたことに異論はないだろう。日本経済は、勤勉かつ均質優秀なる労働力を武器に「高品質工業製品」の生産拠点として、世界で揺るぎないブランドとプレゼンスを築き上げてきた。
その品質の高さは精密機械の性能に顕著だが、もうひとつのブランド力は機械を構成する部品一つ一つの高いレベルでの均質性にある。例えば、日本の自動車産業が世界最強となった理由の一つは部品製造にあるといわれている。樹脂バンパー、鋼板ボデーやネジに至る3万点の自動車部品を安く高品質に生産するには、設計技術だけでなく、製造技術と製造ノウハウが必要になる。形状が同じでも、高性能の部品を安く、高い品質で量産するとは実は容易ではないのだ。
かつて、日本も先発の欧米部品メーカーから基本技術を導入して部品生産を開始した。その後、日本は導入した技術に改良を加え独自の製造技術を開発。さらに、現場重視、チームワーク、絶え間ない改善、無駄の排除、仕入れ先との協力など日本独自の文化を背景に独自の製造ノウハウを獲得した。その先人たちの努力の結果、仮に同じ機械を用い同じ方法で部品を製造しても、日本ほど高品質な部品を均質に安く作れる国は他に無いという現在の地位を築き上げたのである。
尼崎で食べたトルコライスはMADE IN JAPANの均質性を偶然にも意識させられるものであった。
この「ビアカフェキッチン尼崎」は、新神戸にある同ブランドの店舗と同じく、ジェイアール西日本フードサービスネットの直営店である。つまりトルコライスもほぼ同じ形状、味のものが提供される。
ドライカレーと薄焼き卵とポークカツのおなじみの三層構造に、かけるソースはデミグラスかカレーかの選択制。デミグラスソースはかなり薄味でさらりとしている。ドライカレーもスパイシーさは抑えられていて、衣が薄めのカツと共にさくさく食べられる。
おんなじだ。
味というのは印象という要素もあるので一概には言えないものの、これは見事な均質性である。
と、食べ終わってふと皿に残ったものに気付く。
…付け合せのピクルスがそこにあるではないか。食後の口直しにどうぞという店側のサービス精神が沁みる。
このトルコライス、かつて日本の工業を発展させた先人たちがそうしたように、製品の品質は保ちつつ、更なるサービス、つまり機能向上をも目指したトルコライスであるといってよいだろう。
日本有数の工業都市で、ぜひこのトルコライスを味わいつつ日本工業の優秀性に思いを馳せて欲しい。
そんなことを思い浮かべたらかえって飯は不味くなるかもしれないが。
ビアカフェトルコライス700円
兵庫県尼崎市潮江1-1-60
06-6481-3833
無休
営業:平日・日祝8:00~20:00/土曜8:00~21:00
現在の日本の繁栄は工業の発展によってもたらされたことに異論はないだろう。日本経済は、勤勉かつ均質優秀なる労働力を武器に「高品質工業製品」の生産拠点として、世界で揺るぎないブランドとプレゼンスを築き上げてきた。
その品質の高さは精密機械の性能に顕著だが、もうひとつのブランド力は機械を構成する部品一つ一つの高いレベルでの均質性にある。例えば、日本の自動車産業が世界最強となった理由の一つは部品製造にあるといわれている。樹脂バンパー、鋼板ボデーやネジに至る3万点の自動車部品を安く高品質に生産するには、設計技術だけでなく、製造技術と製造ノウハウが必要になる。形状が同じでも、高性能の部品を安く、高い品質で量産するとは実は容易ではないのだ。
かつて、日本も先発の欧米部品メーカーから基本技術を導入して部品生産を開始した。その後、日本は導入した技術に改良を加え独自の製造技術を開発。さらに、現場重視、チームワーク、絶え間ない改善、無駄の排除、仕入れ先との協力など日本独自の文化を背景に独自の製造ノウハウを獲得した。その先人たちの努力の結果、仮に同じ機械を用い同じ方法で部品を製造しても、日本ほど高品質な部品を均質に安く作れる国は他に無いという現在の地位を築き上げたのである。
尼崎で食べたトルコライスはMADE IN JAPANの均質性を偶然にも意識させられるものであった。
この「ビアカフェキッチン尼崎」は、新神戸にある同ブランドの店舗と同じく、ジェイアール西日本フードサービスネットの直営店である。つまりトルコライスもほぼ同じ形状、味のものが提供される。
ドライカレーと薄焼き卵とポークカツのおなじみの三層構造に、かけるソースはデミグラスかカレーかの選択制。デミグラスソースはかなり薄味でさらりとしている。ドライカレーもスパイシーさは抑えられていて、衣が薄めのカツと共にさくさく食べられる。
おんなじだ。
味というのは印象という要素もあるので一概には言えないものの、これは見事な均質性である。
と、食べ終わってふと皿に残ったものに気付く。
…付け合せのピクルスがそこにあるではないか。食後の口直しにどうぞという店側のサービス精神が沁みる。
このトルコライス、かつて日本の工業を発展させた先人たちがそうしたように、製品の品質は保ちつつ、更なるサービス、つまり機能向上をも目指したトルコライスであるといってよいだろう。
日本有数の工業都市で、ぜひこのトルコライスを味わいつつ日本工業の優秀性に思いを馳せて欲しい。
そんなことを思い浮かべたらかえって飯は不味くなるかもしれないが。
ビアカフェトルコライス700円
兵庫県尼崎市潮江1-1-60
06-6481-3833
無休
営業:平日・日祝8:00~20:00/土曜8:00~21:00