ケニアといえば、山川惣治著
「少年ケニヤ」だという方、どれくらいいるだろうか。
小学校に入学してまもなく、父親が第1巻を買ってきてくれた。たちまち夢中になり、あっという間に全巻を読破してしまったのを覚えている。
アフリカで父親と生き別れになってしまった少年ワタルの手に汗握る冒険譚は、とにかくスピード感があった。マサイ族の老酋長ゼガや美少女ケイトとの出会い。そして襲い来る巨大ニシキヘビやライオン、ワニなどの猛獣。果ては恐竜まで出てきたように記憶している。挿絵も豊富で、ひたすら読み進んだものだ。
ケニアのトルコライスもスピード感では負けていない。出来上がりの早さ云々の話ではなく、ポイントは皿をたぷたぷに満たしているさらっとした液状のデミグラスソースである。このおかげで、ケチャップライスをまるで茶漬けのようにかきこむことが可能だ。それがトルコライスを食べる際に適したやり方なのか自信はないが。茶漬け感に抗うようにポークカツは厚みがあり食べ応え十分で、好アクセントになっているが、あっという間に食べ終えてしまった。
「少年ケニヤ」を読んでいるからといって一目置かれるわけではないし、このトルコライスをどれだけ速く食べても別に褒められはしない。
そんなところも似ている。
トルコライス1030円
(道頓堀店)
大阪市中央区道頓堀2-4-2
06-6213-6882
営業:9:00~23:00
道頓堀店のトルコライスを紹介してからはや10年、福島店のトルコライスはそれとは全くの別物だという事実を紹介したい。
道頓堀店ではたぷたぷと皿を満たしていたデミグラスソースが一滴もなく、チキンライスとカツと薄焼き卵という構成で、チキンカツにはウスターソース、卵にはケチャップがかかっているという、市販の調味料をフル活用したシンプルなつくり。
チキンライスの味つけが極めて薄いこともあり、道頓堀のそれと比べると(といってもなにぶん10年前のことだから記憶も薄れているけれど)相当あっさりした印象である。
店員が「味が薄かったらどうぞ」と醤油さしに入ったウスターソースを置いていった。作り手側も自覚があるらしい。
味が薄いから途中で飲み物を挟む必要もない。淡々と、さくさくと、短時間で食べ終わった。茶漬け型の道頓堀、シンプル薄味の福島。さっさと平らげられるところは共通しているといえなくもないが。
それにしても10年、決して短い時間ではない。以前までの記事を見て「これが福島でも食べられるのか」と足を運んで裏切られた方々に心の中で頭を下げつつ、これからも社会的使命とは無関係にぼそぼそと(以下略)
トルコライス 820円
(福島店)
大阪市福島区福島5-14-12
06-6458-2421
営業:8:00~22:00