瀬戸内海最大の島・淡路島は「くにうみ伝説」の伝わる島としても知られている。
神話紹介サイト「日本の神話-古事記」によれば、くにうみ伝説は「ある時、天の神様たちは、イザナギノミコトとイザナミノミコトに『この海の中にふわふわと漂っている国をしっかりと固めて完成させてほしい』とおっしゃって、天にあるりっぱな矛(ほこ)をお授けになられました」というくだりで始まる(以下引用部分は前述サイトによる)。
「そこで、イザナギノミコトとイザナミノミコトは、天からつながっている浮桟橋(うきさんばし)までやって来て、矛を降ろして、下界の海水をゴロゴロと掻き回してから、引き上げてみました。その時に、矛の先からしたたる海水が重なってできたのがオノゴロ島です」
この「オノゴ(コ)ロ島」こそが淡路島である、という説もあるのだが、事態はもっと複雑なようだ。続きを追ってみる。
「イザナギノミコトとイザナミノミコトは、その島に天から降り立って、天の神聖な大きな柱をお立てになり、その柱を中心として大きな御殿を作られました。そして、イザナギノミコトは、妻のイザナミノミコトにお尋ねになりました。
『あなたの身体はどのようになっていますか?』
『私の身体は、すっかり美しく出来上がっていますが、一カ所だけ出来きれていないところがあります』
とイザナミノミコトがお答えになられると、
『ほう、私の身体もよく出来上がっているが、一カ所だけ出来すぎたところがあります。では、私のからだの出来すぎたところをあなたの身体の出来きれないところに刺して、塞いで、この国を生みたいと思うのだが、どうだろうか?』
『それがよろしいでしょう』」
と、いきなり神々による性的交合が仄めかされ、その後、二柱の神が試行錯誤の末に、
「男女の交わりをしてお生みになった子が、淡路島です」というちょっとピンクな展開なのだ。
神々の物語とはいえ所詮人間の考え出したものだから下世話な展開も致し方ないのだが、滴る海水が重なっても神々が交わっても島が生まれてしまう、というのはいささか乱暴に過ぎないかと思う。
淡路島・南あわじ市にてトルコライスを供する茶茶丸の一品も乱暴、というかワイルドだ。
カレーピラフを覆う所々半熟気味の薄焼き卵の上に乗るポークカツはざっくりと大ぶりに切られ、その一切れあたりの迫力を誇示するかのように、ある一切れは薄焼き卵の上、またある一切れは皿の端にと無造作に置かれている。その上を彩るミートソースは、かけられた際の勢いを物語るかのように、画像皿手前に溜りを作るほど多めに配されているのだが、皿向こう側のカツにはほとんどかかっていない。総じて洋食らしい繊細さは無く、雄々しさ、強さ、勢いを感じるレイアウトである。
しかし、神話が幾千年もの月日に耐え今日でもその物語を伝え続けているように、ポークカツとミートソースの組み合わせは
(「スイス本店」の項でも既に述べたが)この先千年安泰を思わせる安定したコンビネーションだ。カレーピラフもスパイシーで大ぶりのカツの旨みに負けていない。薄焼き卵の焼け具合の変化も舌に楽しい。
多少乱暴だろうがなんだろうが、というか暴力的にシンプルだからこそ、料理も神話も長く楽しまれるのかもしれぬ。疑う者は焼肉を見よ。
乱暴にまとめてみた次第である。
トルコ風ライス 800円(サラダ付)
兵庫県南あわじ市八木大久保115-1
0799-42-4828
営業:10:00~25:00
定休:火曜