金沢発 あれやこれや

-ヒントをくれる存在に感謝しつつ物語をすすめます-

逃げてきた童子

2009-04-08 20:31:57 | 燃えだす人
-アメリカ サンフランシスコ-

高層ビルが乱立する一角。
ビルの谷間を大勢の人が行き交う中を
ひとりの少年が流れに逆らって走ってきた。
あわてているようで人にぶつかりながら必死に走っている。
少年は追われていた。

少年は一帯をよく知っているようで、細い路地から路地へ
巧みにすりぬけようやく追っ手をまいた。

「危なくつかまりそうになったけどやっとまけた。」

少年は目前の路地の入口に薄明かりを見つけ笑みをうかべた。
その場所に一匹の虫がいるのを見てさらに安心した。

「ただいま」

少年は虫に挨拶し、路地の明かりへとはいっていった。

数分後、少年を追っていた集団はその場所にたどりついた。
「ここで痕跡が消えた。」
「消えるなんてありえない。まわりをよく探すんだ。」
チームとおぼしき集団は散開して捜索をはじめた。

彼らは地球防衛隊北米情報部の精鋭メンバー。
他の星で犬人類として生を受け、母星が壊滅した後
魂が地球に移り、地球人に転生した者たちで
犬本来の嗅覚と俊敏さを備えていた。

「チーフ、ここから先何か変です。」
「どうおかしいのだ」皆駆け寄ってきた。
「そこから私を見てください。ぼやけて見えませんか。」
「うむ。たしかに少しぼやけて見える。」
「よし、この先を調べろ。」

そう言って先に進もうとした瞬間、チーフは何かの声を聞いた。
それが何かわからなかったが、自然と視線が自分の足元にむいていた。
そこには一匹のかまきりがいた。

「こら、驚かすなよ。でもこんな都会のまん中にいるとはな。」

その後、全く予期せぬことが起こった。

「*****」(虫)

ーこの虫、何か言ったか?ー

そう心中でつぶやき終わらないうちに彼ら全員遠くまで
吹っとばされ気絶した。

「どうしました将軍。」
かまきりの背後からバッタが現れた。
「隊長。あの子は後をつけられていたようだ。
 入り口を閉じておくようにカノン様に進言してくれ。」
「わかりました。」
将軍と呼ばれたカマキリと隊長と呼ばれたバッタは
周囲を伺いつつ薄明かりの中に消えていった。

<2007年9月5日発表稿の書直し>
コメント
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