金沢発 あれやこれや

-ヒントをくれる存在に感謝しつつ物語をすすめます-

草原の少女

2009-04-01 00:02:38 | 燃えだす人
-中央アジアの乾燥した高原地帯-

かすかに残る轍跡から道だとようやくわかる場所を女の子が
歩いている。彼女は家路を急いでいた。
1年間待ちに待った移動学校が来たので、
一週間泊まりこみで授業を受けていたのだ。
帰れば一日中家の手伝いにあけくれる日々が待っているのだが、
今の彼女は勉強した充実感で満ちていた。
手前の分かれ道で友達と別れ、自宅までの丘をくだるだけだった。

彼女が様子がおかしいことに気づいたのはそれからすぐだった。
乾燥した土地のはずが、足元にまとわりつくほど多くの
湿った草が生え、鮮烈な青草のにおいの中に立っていた。
ふと、夕暮れにしてはまわりがまだ明るいと思い、
遠くを見渡してみた。
東西南北どちらを見ても自分が今まで知らぬ風景だった。
「迷子になってしまった」
彼女は腰をぬかし座り込んだ。
「こんにちは」
背後から聞こえた声のほうに向くと、
今までどこにいたのか、自分と同い年くらいの少女が立っていた。
風変わりな服装をしている。
「よかったらいっしょに花摘みをしませんか」
花なんて今は咲いてないと言おうとした時、彼女は少女のうしろに
それは広い花畑が広がっていることに気づいた。
「私は家に帰る途中なんだけど実は道に迷ってしまったの」と言うと、
少女が「それならあとで家まで送ってあげるわ」と言ったので
彼女は、しばらく花摘みにつきあうことにした。

彼女はその少女の姿以外に奇妙な点に気づいていた。
しばらくして思い切って聞いてみた。
「さっきからずっと頭のあたりに見え隠れする小人さんたちの
話し声がが聞こえるんだけど、その人たちはいったいなになの」
「あっ、やっぱり見えていたのね。」
「皆、自己紹介しなさい。あら、私もまだ名前を言ってなかったわね」

その後、その少女がカノンという名で不思議な小人たちを連れて
いることを知った。
彼女はその後もしばらく広い草原で虫を追ったりと遊んでいたが、
気づくと自宅の前に立っていた。

彼女が自宅の目前で道に迷い、少女と花摘みした話をしても
誰も信じる者はいなかった。

<2007/9/2発表稿の書直し>
コメント
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