自民党石原幹事長が「小沢一郎切り」を増税法案賛成の条件にする「おかしさ」

2012-04-06 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア

自民党石原幹事長が「小沢一郎切り」を増税法案賛成の条件にする「おかしさ」
現代ビジネス 2012年04月06日(金)長谷川 幸洋
 野田佳彦内閣が消費税引き上げ法案を国会に提出したと思ったら、まだ審議が始まってもいないうちから、与野党の間で「法案を成立させて話し合い解散」という気運が高まってきた。
 自民党の石原伸晃幹事長は講演で民主党が「小沢一郎元代表を切り、衆院解散時期を明示し、輿石東幹事長が党内をまとめると約束すれば、自民党が法案に賛成して成立する芽が出てくる」と語った。政策的には、民主党がマニフェストで約束した最低保障年金の創設と後期高齢者医療制度の廃止を取り下げれば「話し合う余地がある」という姿勢だ。
 財務省も法案修正を目指している。馬淵澄夫元国土交通相は自分のブログで、財務省が景気が好転しなければ増税を凍結する条項と歳入庁の創設を検討する条項を法案から削除する一方、将来の再増税条項を復活させるよう自民党議員に説得工作していると暴露した。
 これに対して、政権幹部や民主党執行部からは「野党の修正要求には柔軟に対応する」とのサインが相次いでいる。こうした動きをみると、消費税引き上げ法案はどうやら大幅修正が必至の情勢だ。
 となると、野田はどこまで修正要求を受け入れるのか。修正すれば法案は可決成立するのか。さらに法案成立で政局はどうなるのか、が次の焦点になる。
 野田はもちろん法案を通したい。だが、参院で野党が多数を占める国会のねじれ状況を考えれば、最終的に法案を可決成立させるためには、自民党など野党の賛成が不可欠になる。その場合は自民党の要求を飲まざるをえない。
 自民党は繰り返し「小沢切り」を持ち出している。だが、これは少しおかしくないか。国民の負託を受けて議員バッジをつけている他党の議員について「党から除名せよ。そうすれば法案で協力する」というのは、自分たちが実現しようとしている政策を人質にして、特定議員の政治活動に制限を加えようという話になる。しかも他党の議員だ。
 国会議員が国会議員の政治活動を制限するというのは、法を犯した場合などを除けば、基本的に望ましくない。自殺行為につながる。「小沢の主張は間違っている」としても、野田政権の政策が正しいと考えるなら、小沢の立場、処遇に関係なく堂々と賛成すべきだ。
 小沢が民主党にいる限り、増税法案に賛成できないというなら、自民党は小沢の存在によって重要政策についての判断と政治行動を変えてしまう形になる。それでいいのだろうか。
 自民党の言い分は「あいつは嫌いだ。あいつと縁を切れば、あなたと付き合ってもいい」というような子供じみた話に聞こえる。野田にしても、他党から言われて小沢を切るには大義名分がない。
 小沢切りではなく「最低保障年金の創設や後期高齢者医療制度の廃止をやめよ」という話は、それなりに理解できる。野田がこの要求を受け入れると、どうなるか。民主党内からは猛烈な反発が起きるだろう。党の分裂を招いてもおかしくない。
 民主党はこれまでもガソリン税暫定税率の廃止に始まって、マニフェストに盛り込んだ目玉政策をことごとく捨て去ってきた。加えて最低保障年金もあきらめるとなると、民主党という政党はいったい何を実現したいのか、なんのために政党を続けているのか、と存在理由が問われる事態になる。
 言い換えれば、野田が最低保障年金をあきらめ、党分裂も覚悟して増税実現を目指すなら、野田政権は完全な「自民党亜流政権」になる。野田政権が目指す政策は民主党オリジナルではなく、自民党が唱えてきた政策そのものになるからだ。
 現実にも自民党との連立政権になって、谷垣禎一総裁をはじめ複数の自民党議員が入閣するだろう。つまり解散・総選挙前の政界再編による増税大連立である。
 野田が本当にそんな増税大連立政権を目指すかどうかは、今後の内閣支持率が鍵になるはずだ。最低保障年金を捨て去って小沢切りに動く気配が濃くなると、内閣支持率は上向くのか、それとも急落するのか。支持率が下がった状態で解散・総選挙となれば、選挙後は政権の座から滑り落ちる可能性が高まる。すると、本当にいざ大連立に打って出るにはブレーキが働く。
 自民党の賛成が見込めないまま法案採決に臨めば、否決されるかもしれないので、採決を先送りして法案は継続審議にする可能性が出てくる。ただし、財務省は内閣がつぶれたところで増税法案さえ成立すればいいので、野田に「勝負せよ」と激を飛ばし続けるに違いない。
 逆に支持率が上向くようなら、野田はためらうことなく法案修正と小沢の離反を容認する結果的な「小沢切り」による大連立に動くだろう。どちらに転ぶか、いまの段階ではなんとも言えない。当面は4月26日に予定される小沢裁判一審判決の結果待ちだ。
 野田がいつ、どんなタイミングで決断するかは、いつまでも締め切りがないわけではない。もう一つの重要案件である特例公債法案は遅くとも8月初めごろまでには可決成立させなければならないからだ。
 国債発行を担保する特例公債法案が成立しなければ、いくら予算案が成立しても実際には予算を執行できず、政府機能が停滞する。そうなれば政権に対する批判も高まる。そうなる前に自民党と消費税引き上げについて話をまとめ、特例公債法案を成立させなければならないのだ。
 私は消費税引き上げに反対だ。しかし、野田は谷垣自民党と増税大連立すべきだと思う。なぜなら、それで解散・総選挙になれば、国民が増税大連立勢力を選ぶのか、そうでないのか、明確な選択肢ができるからだ。
 日本の政治が停滞している最大の理由は、自民党も民主党も増税のような重要政策をめぐって党内に対立する勢力を抱えていて、そのために国民がどの党を選べばいいのか分からない状態に陥っているからだ。
 ここで野田・谷垣による一大増税勢力が誕生すれば、その反動で反増税ないし非増税勢力も結集するだろう。そういう明確な対立軸ができた状況で総選挙が実施されれば、国民はどちらかを自由に選択できる。わかりやすくなるのだ。
 それで増税になるか増税凍結になるかは選挙の結果次第である。どちらにせよ政治が国民中心になって、いまよりはるかに機能するようになるだろう。永田町の緊張とともに、時計の針は着実に進んでいる。
(文中敬称略)
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小沢一郎裁判=「官僚支配に従う者」と「国民主権を打ち立てようとする者」とを見分けるリトマス紙である2011-10-10 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
 リトマス試験紙
田中良紹の「国会探検」日時:2011年10月9

 小沢裁判は、明治以来の官僚支配に従う者と、日本に国民主権を打ち立てようとする者とを見分けるリトマス試験紙である。裁判の結果とは別に、誰が官僚の手先で民主主義を破壊する者かがあぶり出される
 初公判での小沢一郎氏の陳述は、私がこれまで書いてきた事と軌を一にするものであった。私が書いてきたのは以下の事である。事件は政権交代を見据えてその推進力である小沢氏の政治的排除を狙ったものである。しかし十分な材料がないため捜査は無理を重ねた。目的は有罪にする事ではなく小沢氏の排除であるから、メディアを使って無知な大衆を扇動する必要がある。大衆に迎合する愚かな政治家が小沢排除の声を挙げれば目的は達する。
 民主主義国家における検察は、国民の代表である国会議員の捜査には慎重の上にも慎重を期さなければならない。それが国民主権の国の常識である。国家機密を他国に売り渡すような政治家や、一部の利益のために国民に不利益を与えた政治家は摘発されなければならないが、その場合でも国民が主権を行使する選挙の前や、政治的バランスを欠いた捜査をやってはならない。民主主義の捜査機関にはそれが課せられる。
 ところが一昨年、小沢氏の秘書が突然逮捕された「西松建設事件」は、政権交代がかかる総選挙直前の強制捜査であった。しかも政治資金収支報告書の記載ミスと言えるのかどうか分からないような容疑での逮捕である。これで逮捕できるならほとんどの国会議員が摘発の対象になる。そんな権限を民主主義国家が捜査機関に与えて良い筈がない。
 しかも捜査のやり方が極めて異常であった。かつて私が東京地検特捜部を取材したロッキード事件も奇怪な事件で、事件の本筋とは言えない田中角栄氏が逮捕され、国民は「総理大臣の犯罪」と思い込まされたが、それでも当時は手順を踏んだ捜査が行なわれた。ところが今回は国会議員に関わる事件であるのに検察首脳会議を開かず、「若手検事の暴走」という前代未聞の形での着手である。
 それほどの異常な捜査を新聞もテレビも追及する側に回らず擁護する側に回った。平均給与が全産業を上回るほど利益追求に走った新聞とテレビは、国税や検察がその気になれば、脱税などの犯罪で摘発される可能性があり、財務省や検察を批判する事など恐ろしくて出来ないからだろう。
 そして案の定、愚かな政治家が「政治的道義的責任」などと騒ぎ出し、国民生活のために議論しなければならない国会の審議時間を削るような事を言い出した。「国会で国民に説明責任を果たせ」と言うのである。そんな馬鹿な事を言う政治家が世界中にいるだろうか。「説明責任(アカウンタビリティ)」とは会計用語であり、国民から預った税金の使い道について「官僚には説明する責任がある」という意味である。
 前にも書いたが、アメリカのクリントン大統領には「ホワイトウォーター疑惑」と呼ばれるスキャンダルがあった。アーカンソー州知事時代に不動産業者に便宜を図って違法な献金を受けた疑惑である。事件が発覚した後に自殺者も出た。特別検察官が選ばれて捜査が開始された。しかしクリントン大統領に「議会で国民に説明しろ」などという声は上がらない。議会が喚問したのは検察官である。議会は行政府をチェックするところであるからそれが当たり前だ。説明責任があるのは政治家ではなく検察官僚なのである。それが日本では逆転している。
 日本の捜査機関は国会に呼ばれてもろくに答弁しない。「捜査中につきお答えできない」で終わる。サリン事件が起きた時、日本の警察は国会でそう言って答弁を拒否したが、同じ頃にアメリカ議会ではFBI、CIAが議会に喚問され、アメリカ国内でのオウム真理教の活動について捜査内容を証言させられた。そのビデオテープを自民党議員に見せたら「うらやましい」と言った。日本の国会は行政府に舐められているのである。
 「ホワイトウォーター疑惑」に関わったとされるヒラリー夫人は大陪審に喚問されて証言した。しかし議会には喚問されない。司法が追及している時に、議会が同じ事をやる意味はないし、議会にはそんな暇もない。ところがこの国では不思議な事が続いてきた。何かと言えば「国会で証人喚問しろ」と言うのである。それがどれほど意味のないバカバカしいパフォーマンスであるかを、政治家はイヤというほど見てきた筈だ。
 ところが今回も野党の党首クラスが揃いも揃って「証人喚問」などと騒いでいる。全く学習効果のない哀れな連中である。ロッキード事件以来続けられてきた「政治とカネ」のスキャンダル追及ほど民主主義政治の足を引っ張ってきたものはない。国民の税金の使い道を徹底して議論しなければならない予算委員会で、日本の政治は肝心要の事をやらずに政治家のスキャンダル追及に力を入れてきた。大衆に気に入られたいためである。
 下衆(げす)な大衆は権力者の凋落を見るのが何より楽しい。それが自らの生活を貶める事になるとは思わずに「やれ、やれ」となる。直接民主制であった古代ギリシアでは有能な政治家ほど大衆から妬まれて追放された。偉大な哲学者ソクラテスは愚かな大衆から死刑判決を受けた。ギリシアの民主主義は長く続かなかった。民主主義は厄介なもので、大衆が政治や裁判を直接左右すると民主主義は潰れるのである。それが歴史の教訓である。
 明治以来の官僚支配の背景にも官僚勢力とメディアによる大衆の扇動があった。政党政治家の原敬が暗殺され、反軍演説をした斉藤隆夫が衆議院から追放され、田中角栄が「闇将軍」となった背景にもそうした事情がある。
 小沢陳述はそうした過去にも触れつつ、検察権力の横暴と議会制民主主義の危機を訴えた。しかしそれに対するメディアの反論は、「検察が不起訴としたのに検察を批判するのは筋が違う。起訴したのは検察審査会だ」とか、「4億円の出所を言わないのはおかしい」という瑣末なものである。
 すべての問題の発端を作ったのは検察で、目的は小沢氏の政治的排除にあるのだから、そもそも不起訴にして大衆の扇動を狙っていた。従って乗せられた方ではなく乗せた方を批判するのは当然である。また自分の財布の中身をいちいち説明しなければならない社会とはどういう社会なのか。それが違法だと言うなら、言う方が違法性を証明しなければならない。それが民主主義社会のルールである。「政治家は公人だから」と言ってあらゆる責めを負わせるのは、国民主権を嫌う官僚の昔からのやり口である。
 ともかく初公判後の記者会見で小沢氏は検察とメディアに対し闘争宣言を行なった。潰れるか潰されるかの戦いを宣したのである。検察もメディアも引けないだろうが、不起訴処分にした検察は既に一歩後ろに退いており、前面に立つのは司法とメディアである。
 行政権力の手先だと世界から見られている日本の司法とメディアがこの戦いにどう対抗するのか。小沢氏を潰そうとすればするほど、民主主義の敵に見えてくるのではないかと私には思える。
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小沢一郎氏裁判 虚偽報告書作成の田代政弘検事が異動 2012-04-01 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア 
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