私の面倒を見てくれた政権の座にある人物が1日中、椅子に座らされて、1人でいるのは耐えられなかった

2011-10-04 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア

フラッシュバック:小沢氏、再び法廷に
 WSJ Japan Real Time2011/10/3 16:48.
政治資金規正法違反(虚偽記載)罪で強制起訴された小沢一郎・民主党元代表の初公判が6日、東京地裁で開かれるが、同氏が師と仰いだ田中角栄元首相の裁判が改めて思い出される。田中元首相は国防関連最大手、米ロッキードからの収賄罪に問われた。
政治資金規正法違反罪で強制起訴された小沢一郎・民主党元代表の初公判が6日、東京地裁で開かれる。当時まだ若かった小沢氏は、1977~83年にわたった191回の公判全てに出席した。審理の結果、田中元首相には有罪判決が下った。田中派議員のなかでも、毎回公判に出席したのは小沢氏1人だけだった。
小沢氏は毎回終了までとどまり、田中元首相と目が合うのを待って深くお辞儀をしたと伝えられる。

政治ジャーナリスト渡辺乾介氏が執筆した1992年の本のなかで、小沢氏は心情的にそうした、と述べたと引用されている。
この本の出版に当たり、小沢氏は渡辺氏と長時間にわたり会談したという。「あの人~ひとつの小沢一郎論~」と題するこの本の中で小沢氏は私の面倒を見てくれた政権の座にある人物が1日中、椅子に座らされて、1人でいるのは耐えられなかった、と語ったと記されている。
政治資金規正法違反の嫌疑について、小沢氏は自身の不正行為を否定している。田中元首相も収賄罪で不正行為を働いたことを否定し、有罪判決を受けた後も陰の実力者の地位に君臨した。
小沢氏はその後何年にもわたって田中元首相を擁護し、不当に罰せられたと指摘した。小沢氏は2006年に出版された別の本のインタビューで、田中のオヤジが完璧だと言っているのではない、と語ったという。田中さんだけじゃなく、国民も政治家も官僚もみなやっていたことだと述べ、田中元首相はスケープゴートにされたと言及した。
小沢氏は自身の裁判でも同様の弁護を行っている。田中元首相の裁判の最中でさえ、小沢氏は法廷に立つことを予想していたかのようだ。小沢氏は、政治家として裁判で同じ立場に置かれたら、どうすべきかと考えていたと、1992年の本の出版に際しての渡辺氏とのインタビューで語っていた。自分だったらどうするかと、公判の間、ずっとそういったことを考えていた、と語っていた。
記者:Jacob M. Schlesinger *強調(太字・着色)は来栖
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〈来栖の独白〉
>毎回公判に出席したのは小沢氏1人だけだった。
>小沢氏は毎回終了までとどまり、田中元首相と目が合うのを待って深くお辞儀をした
>私の面倒を見てくれた政権の座にある人物が1日中、椅子に座らされて、1人でいるのは耐えられなかった
 もう、私は、泣いてしまう。ここに「人間」がいる。温かな、尋常な心を持った人間がいる。
 いつの頃からか、私は、心鬱々とするとき、きまって小沢さんを思うようになった。「この世」からこれほどまでに(完膚なきまでに)破壊され貶められ誤解の坩堝に叩き込まれて、なおご自分の矜持と平静を保っておられる小沢さんを思う。並みの心的労苦ではない。
 この人を、どうか、能力ある人は、そろそろ擁護、弁護してあげてほしい。法曹は法曹の立場から、ジャーナリストはジャーナリズムから、正論をこの世に示すことで、擁護してほしい。掃いて捨てるほどいる「名誉教授」の肩書の識者の皆さん、正論を張ってください。
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◇ 田中元首相没後20年 小沢一郎[生活]代表に聞く 「僕の裁判もロッキード裁判も、司法の自殺行為だった」 2013-12-02 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア 
 【角栄の流儀】田中元首相没後20年(番外編)小沢一郎・生活の党代表に聞く
 産経ニュース2013.12.2 15:10
*信頼してくれたおやじ
 おやじ(=田中角栄元首相)は、ものすごく魅力的な人だったよ。面白いし、世話好きで、割合そそっかしく、せっかちな面もありました。
 最初? 最初はすごくおっかなかったね。知り合いのつてで秘書を頼り、目白の自宅に行った。「田中派の候補として衆院選に出たい」というあいさつをするためだ。「今度、選挙に出ますからよろしく」と。それが意外なことに即「オーケー」ではなかったんだ。僕は2代目だから普通に考えれば当選する可能性は高い。それなのに反応は違った。
 あのころの田中先生は若い者には厳しいことを言う人だった。毎日つじ立ちしろ、戸別訪問は何万軒回れ、なんてことをいつも言われて、もうこれは「はい」というしかないよ。初当選のあいさつに行っても、今度は「2期目を当選するのがおまえたちの役目だ」ってな感じだった。会えば「ちゃんと地元に帰っているか」というのが口癖でね。最初のころは、政治手法を学ぶどころではなかったよ。
 田中先生がいうように、選挙というのは常に民主主義の原点だ。地元に帰って有権者のことをちゃんと理解し、民意を丁寧にくみ取らないといけない。これを民主党時代に盛んに言ったら、「うるさい」とか、「それは古い考え方だ」という反応だったがね。
 首相就任当初、田中先生は中学も出ないで立身出世して「今太閤」ともてはやされた。そこは日本人の好きなところだ。ところがロッキード事件で一気にバッシングの嵐だ。
 僕の裁判もそうだと思うが、ロッキード裁判も司法の自殺行為だったと思う。田中裁判では、お金をもらったかどうかの問題以前に、最高裁の裁判官会議で相手方の免責を決めた上で証言をとるという違法なやり方で得たものを証拠として訴追し裁判を始めた。
 僕は裁判を全部傍聴しました。日本の裁判・司法に対する問題意識からだ。もちろんいろいろ心情的な思いもあった。親とも思っている人が首相にまでなったのに、今度は目の前で被告人になっているのだから。でも、田中先生は、あれだけ権力を持っていながら、結局最後まで自分の捜査や裁判では決して権力を使おうとしなかった。
 田中派が膨張するのはロッキード事件以降だ。民主主義の原則通り、数の力で影響力を行使しようと考えたのだと思う。その意味で民主的な日本人の良いところがあったのだろうね。その頃から田中派にはわれわれのような「子飼い」でない人たちが増えた。
 創政会旗揚げのときは、そもそも別に田中先生をどうこうする話では全くなかった。取り巻きが間違った情報を入れたのだろうと思う。田中先生も裁判を抱えていたし、感情的になって参加者を「裏切り者」と思って、どんどん対決する構図になってしまった。仮にあのときに面と向かって怒鳴られていたら、すぐやめていたと思う。
 その後、梶山静六さんや羽田孜さんと一緒に田中先生に呼ばれて、先生とわれわれ3人で話をしました。その結果、田中先生を潰すつもりでやったという誤解のうち半分は解けたと思う。でも最初のインプットがあったから、なかなかねえ。
 田中先生は「官僚」を使うのがうまかったといわれている。それは、当時は官僚が描いている路線と大体一致していたからだ。田中先生は、いつも時代の先を読んで良い知恵を出すものだから、官僚もみんな賛成したんだ。今なら震災復興でも、きっと思い切ったことをスピーディーにやったに違いない。
 「日本列島改造論」は、そもそも高度成長がずっと続くという前提で書かれたものだ。田中先生はいわば右肩上がりの時代の政治家で、全国が均等に発展していくべきだという思想がその根本にあった。同じ自民党でも今の政権は違う。正に強者の論理だよ。最近の政府のやり方は、例えば農林漁業中心の地方なんていらないという話でしょ。これでは地域社会が滅んでしまう。そこは自民党が根本的に変質したところだね。
                   ◇
 僕は田中角栄、竹下登、金丸信という3人の政治家に仕えた。3人とも典型的な調整型だ。竹下さんや金丸さんは相手の話をよく聞いて足して2で割るタイプだった。田中先生はあちこちにボールを投げてその反響をもってうまく判断した。
 僕も実は調整をやらせたら大得意だよ。でも今は丸く丸くではおさまらない時代だ。基本原則を変えないといけない。それなのに、いまだにコンセンサスの手法でやっているから、日本の政治はいつまでたってもダメなんだ。
 僕はよく「田中先生は反面教師」というから、何か冷たい人間だと思われているようだが、それは情緒論と混同しているからだ。政治哲学や政治思想と、人間の心情論をごっちゃにしている。おやじといっても、論理的、理性的に考えれば違いもあるのは当然だ。
 でも、まあとにかく親子のような関係だったよ。将棋を打ったりね。ものすごく信頼してくれたし、墓場まで持っていくような政治の機微のことまで全然隠そうとしなかった。中身はとても言えないけどね(笑)。(沢田大典)
 ◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します
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検察を支配する「悪魔」 田原総一朗+田中森一(元特捜検事・弁護士)講談社 2007年12月5日 第1刷発行
p37~ 角栄をやり、中曾根をやらなかった理由---田原
  でも、ロッキード事件はできたじゃないですか。田中角栄は逮捕した。角栄は時の権力者ですよ。
  僕はかつて雑誌『諸君!』に「田中角栄 ロッキード事件無罪論」を連載した。ロッキード事件に関しては『日本の政治 田中角栄・角栄以後』で振り返りましたが、今でも、ロッキード事件の裁判での田中角栄の無罪を信じている。
  そもそもロッキード事件はアメリカから降って湧いたもので、今でもアメリカ謀略説が根強く囁かれている。
  僕は当時、“資源派財界人”と呼ばれていた中山素平(そへい)日本興業銀行相談役、松原宗一大同特殊鋼相談役、今里広記日本精工会長などから、「角栄はアメリカにやられた」という言葉を何度も聞かされた。
  中曾根康弘元総理や、亡くなった渡辺美智雄、後藤田正晴といった政治家からも、同様の見方を聞いた。
  角栄は1974年の石油危機を見て、資源自立の政策を進めようとする。これが、世界のエネルギーを牛耳っていたアメリカ政府とオイルメジャーの逆鱗に触れた。
  このアメリカ謀略説の真偽は別にしても、検察は当時の日米関係を考慮に入れて筋書きを立てている。結果、角栄は前総理であり、自民党の最大派閥を率いる権力者だったにもかかわらず検察に捕まった。
  かたや対照的なのは中曾根康弘元総理。三菱重工CB事件でも最も高額の割り当てがあったと噂されているし、リクルート事件でも多額の未公開株を譲り受けたとされた。
  彼は殖産住宅事件のときからずっと疑惑を取りざたされてきた。政界がらみの汚職事件の大半に名が挙がった、いわば疑獄事件の常連だ。しかし、中曽根元総理には結局、検察の手が及ばなかった。
  角栄は逮捕されて、中曽根は逮捕されない。角栄と中曾根のどこが違うのですか。冤罪の角栄をやれたのだから、中曾根だってやれるはずだ。
  それから亀井静香。許永中との黒い噂があれほど囁かれたのに無傷に終わった。なぜ、亀井には検察の手が伸びない?
p39~ ロッキードほど簡単な事件はなかった---田中
  ロッキード事件に関わったわけではないので、詳しいことはわかりませんが、検察内部で先輩たちから聞くところによると、時の権力が全面的にバックアップしてくれたので、非常にやりやすかったそうです。
  主任検事だった吉永祐介あたりに言わせると、「あんな簡単でやりやすい事件はなかった」---。
  普通、大物政治家に絡む事件では、邪魔が入るものですが、それがないどころか、予算はふんだんにくれるわ、いろいろと便宜を図ってくれるわけです。三木武夫総理を筆頭に、政府が全面的に協力して、お膳立てしてくれた。
  ロッキード事件では超法規的な措置がいくつもある。
  アメリカに行って、贈賄側とされるロッキード社のコーチャン、クラッターから調書を取れた。相手はアメリカ人だから、法的な障害がたくさんある。裁判所だけでなく、外務省をはじめとする霞が関の官庁の協力が不可欠です。とりわけ、裁判所の助力がなくてはならない。
  政府が裁判所や霞ヶ関を動かし、最高裁が向うの調書を証拠価値、証拠能力があるとする主張を法律的に認めてくれたばかりが、コーチャン、クラッターが何を喋っても、日本としては罪に問わないという超法規的な措置まで講じてくれた。
  贈賄側はすべてカット。こんな例外措置は現在の法体制では考えられません。弁護人の立場から言えば、非常に疑問の多い裁判でもあった。「贈」が言っていることを検証しないで、前提とするわけだから。贈賄側が死んでいれば反対尋問はできないけれど、本来は、原則として仮に時効にかかろうが、贈賄側を一度、法廷に呼び出して供述が本当なのか検証するチャンスがある。
  ところが、ロッキードではなし。それで真実が出るのかどうか、疑わしい限りです。しかも、贈賄側は一切処罰されないと保証されて、喋っている。その証言が果たして正しいか。大いに疑問がある。
  それぐらい問題のある特別措置を当時の三木政権がやってくれるわけです。つまり、逮捕されたときの田中角栄は、既に権力の中枢にいなかったということなのでしょう。
p41~ 風見鶏だから生き残った---田中
  角栄は、総理に上り詰めるまでに、「角幅戦争」とか「三角大福」とか、熾烈な政争を繰り広げてきた。えげつない現ナマのばら撒きで、相当、強引な裏工作もやっている。そのため、角栄を恨んでいる政敵が多かったということも逮捕につながった大きな原因だと思います。三木にも、角栄に対する根深い恨みがあったのではないですか。
  かたや中曾根元総理は、ついにやられると何度も囁かれたにもかかわらず、最後までやられずに無事、政界を引退した。
  決定的証拠も出てこなかったのでしょうが、「風見鶏」だから大丈夫だったのですよ。若いときから時の権力者にはうまく歩調を合わせていたから、彼を恨んでいる政敵がほとんどいなかった。角栄と違って、歴代の権力者には、中曾根を沈めてやりたいと憎んでいた人間がいなかったのでしょう。
  中曾根はマスコミにもウケがいいので、マスコミから何かをほじくり出されることも少なかった。
  亀井静香の場合は、秘書が有能だからでしょうね。竹下登や加藤六月も秘書がしっかりしていたから、やられなかった。秘書の力は大きいですよ。同じようにカネをもらっていても、処理の仕方によって、事件として問えるか否かが変わってきますから。 *強調(太字・着色)は来栖
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「小沢一郎裁判はドレフェス裁判だ」/角栄をやり、中曾根をやらなかった理由/絶対有罪が作られる場所 2011-11-12 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア 
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この国が恐ろしいのは、総ての権力が同じ方向を向いて走り、正義より自分たちの足元ばかり気にしている点だ 2011-10-03 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
 小沢「抹殺裁判」 『誰が小沢一郎を殺すのか?』
ロッキード事件に酷似 陸山会事件公判 (川村尚)証人が具体的に述べれば述べるほど低下するリアリティ 2011-04-28 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
小沢一郎氏、元秘書3人の判決について「裁判官が推測で有罪。政権交代のスケープゴートにされた」 2011-10-02 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
陸山会事件:午後判決/勝栄二郎 法務官僚と裁判官を使って小沢一郎を抑えつけ、財務省は好き放題やった 2011-09-26
前原誠司外相辞任と『誰が小沢一郎を殺すのか?』〈カレル・ヴァン・ウォルフレン著〉 2011-03-07 | 政治/検察/メディア/小沢一郎 
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平野貞夫の「永田町漂流記」
「日本一新運動」の原点(75)─憲法原理を崩壊させた陸山会事件の判決

 東京地裁の登石郁郎裁判長は9月26日(月)、小沢一郎氏の資金管理団体「陸山会」をめぐる政治資金規正法違反事件で、虚偽記載罪に問われた元秘書3人に対して、それぞれ有罪の判決を言い渡した。
 問題は有罪とした理由である。検察が背景事情として説明した「水谷建設からの裏金1億円」について、証拠に基づく実証がまったくなく、状況証拠に推定に推定を重ねて、事実として認定したのである。
 これは、憲法の原理を崩壊させる重大な問題であり、恐らくわが国裁判史上これほど司法権の機能を逸脱し、かつ破廉恥な判決は始めてであろう。さらに、劣化した検察の主張に上乗せするような論理で、政治に干渉した判決であり、司法ファッショの時代が全開となったことを証明するものである。これを許容するなら、議会民主政治をわが国で機能させることは末代まで不可能となる。以下にその論拠を述べたい。
(1)判決が、政治資金規正法違反で有罪とした根拠は「水谷建設からの裏金」を事実だと裁判官が認定したことである。検察はこの裏金を実証するため、巨額な経費と、検察の総力をあげて約二年もの年月をかけて徹底した捜査を行った結果、起訴できなかった問題である。図らずも検察は面目を保ったが、虚偽記載の背景説明として、水谷建設関係者を検察に有利になるよう追いつめ、裁判で証言させたのである。勿論、元秘書らは裏金を否定し、水谷建設の関係者の中にも、裏金の引き渡しを否定する証言をした人物もいる。こういった矛盾のある「裏金」を、実在のものと東京地裁が推定するというならともかく、個人的信条をもとに推定で「認定」するというなら、それを検察に実証させるべく、起訴のやり直しを命ずるべきである。虚偽記載でだけで有罪とすることに論理的限界があり、「裏金」を事実と認定することで有罪の判決を誘導したと思われる。言い替えれば、むりやりにでも「裏金」を認定しなければ有罪の判決ができなかったのである。
 司法の生命は「法と証拠」によって判断することである。この判決はこれをまったく無視し、検察は疑いをもったが、起訴したくてもできなかった「裏金」を、東京地裁の裁判官が検察に代わって起訴したことと同じことになる。一億円もの裏金となれば、所得税法上の問題もある。さらに、政治がらみとなれば、公職にある者等の「斡旋利得処罰法」など、重罪の法令がある。
 「法と証拠」論からいえば、3人の元秘書は無罪であるべきだ。虚偽記載罪に限定すれば違法性はない。裁判官が敢えて有罪にこだわるなら、当該事件の公訴を棄却して「裏金」の実証をすべく、検察に再捜査を命ずるのが健全な司法の在り方である。
(2)裁判所が、検察でさえ起訴できなかった問題を、根拠なしに状況説明だけで有罪にすることになれば、「疑わしきは罰せず」という憲法原理は崩壊する。今回の判決は「疑わしきは罰すべし」という判例となる。
 となると、人類がこれまで営々と築き上げた基本的人権はどうなるだろうか。憲法第37条は「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する」と規定している。近代国家の普遍的原理を冒涜した裁判は公平とは言えない。また、憲法第31条の「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない」と規定する、罪刑法定主義に違反する可能性がある。
 さらに重大な問題は、この判決すなわち実証性のない状況証拠だけを根拠にして、政治案件について有罪としたことである。恐らくわが国の裁判史上初めてのことと思われる。これは司法権が議会民主政治を支配することとなる由々しき問題である。証拠や実証のないことを、裁判官が推定を重ねて個人的価値観をもって認定し、検察が起訴しなくても有罪とすることになれば、健全な議会民主政治は成り立たない。
 今回の場合、石川衆議院議員がその対象となったが、石川議員を選んだ有権者の国民主権はどうなるのか。また、代表制民主主義による石川議員の国会議員としての諸権利を奪うことになる、きわめて重大な問題のある判決である。
■「司法ファシズム」という暗黒国家
 陸山会問題について、私が承知している経過を振り返ってみると、日本は「司法ファシズム」という暗黒国家になったといえる。
 平成21年3月1日、私は千葉県知事選挙の関係で、当時の法務大臣・森英介氏に会った。同席していた堂本知事に森法相が話した内容が、今もって頭から消えない。「平成になって、日本の政治を混乱させ破壊したのは民主党代表の小沢一郎ですよ。悪い政治家で、それを手伝ったのが平野さんですよ」という趣旨の話。
 小沢さんへの、明らかに悪意のある言い方に何かあるなと気になった。思えばこれが陸山会事件の始まりであった。2日後の3月3日、西松事件に絡めて大久保秘書の逮捕となった。一週間後、私は小沢代表に会い「政権交代を阻止するため、貴方は麻生自民党政権から狙われている。これは日本の民主主義のあり方の問題だ。議会民主政治を守るために国民運動を起こしたい」と進言した。
 小沢代表は「僕はそんなに偉くないよ。法に反することは何もやっていない。特捜がどんな出方をするか様子をみよう」ということだった。大久保秘書逮捕は小沢代表の退陣で効果がうすくなり、次に狙われたのが、石井一副代表の「郵政不正事件」だった。村木厚子厚労省局長の逮捕、起訴がデッチあげということが判明し、特捜の廃止論まで出る始末で、検察の信用は失墜していった。
 それでも民主党への政権交代は実現した。国家権力の守旧派が必死になったのは、「小沢改革の阻止」であった。「小沢排除」が民主党権力内でも行われ、特捜が目をつけたのが、水谷建設の裏金話を政治資金の虚偽記載と結びつけて犯罪をデッチあげることだった。検察は総力を挙げて小沢氏本人を起訴しようとしたが、犯罪事実を立証できるはずはなかった。次の策として、3人の元秘書の「法と証拠」を無視した起訴であった。
 守旧派権力が「小沢排除」の最後の手段に使ったのが、検察審査会であった。市民団体に名を隠した問題集団が、守旧派権力と共謀して、違法な手続を重ねて小沢氏本人を強制起訴した。10月6日から公判が始まる。その直前に憲法原理を崩壊させる判決が行われたのである。
 私は、7月末『小沢一郎完全無罪』(講談社α文庫)を刊行し、その文庫本まえがきで、「小沢問題に見る国家機能のメルトダウン」という文章を掲載した。その中で、わが国の政治的社会状況を「新しいファシズム」と定義しておいた。平成21年3月から始まった国家権力の「小沢排除」は、政権交代を阻止するため麻生自民党政権から仕掛けが始まっている。社会心理的暴力装置となった巨大メディアを活用して、政治権力と検察権力が推し進めたものである、という趣旨である。
 その「新しいファシズム」に、司法権=裁判所は組み入れられていないと私は推測していたがこれが甘かった。東京地裁の陸山会事件判決は、裁判官が検察とは関係なく風評だけで有罪の判決ができる道を開くことを可能にした。「新しいファシズム」の正体は「司法ファシズム」ということが判明した。憲法原理を守るべき裁判所が暴力装置となって民主主義を崩壊させている。これは恐ろしいことである。(国会議員よ目を覚ませ!)
 3人の元秘書への、憲法原理を崩壊させる破廉恥な判決にもかかわらず、野党は石川知裕議員に対して議員辞職勧告決議案を提出した。自民党の谷垣総裁、公明党の山口代表、社民党の福島党首は、それぞれ司法試験に合格した弁護士である。この人たちが、従来の政治家に対する判決と同じレベルで考えて、議員辞職勧告決議案を提出する不見識さに、生涯を国会とともに過ごした私には暗澹たる思いである。
 彼らは、憲法原理をまったく知らないようだ。否、なまじ憲法原理を知ることで、司法試験に合格できないのが日本の法曹界の実態のようだ。判決を出した裁判官と同じレベルといえる。「司法ファシズム」に入り込み、それを推進しているのが国会であるとすれば、日本の国家統治はきわめて危険なところにあるといえる。
 今回の判決を、議会民主政治の危機と感じない国会議員こそ辞職すべきである。明日は我が身と思うことができないなら、胸の議員バッジは返却すべきである。小沢氏の証人喚問論など、公判中の事案を調査できないという、国会の基本ルールを知らない愚か者としかいえない。
 議会民主政治が「司法ファッショ」で叩きつぶされようとしていることに、敢然として立ち向かうのが国民の代表者たる者の責任ではないか。
 劣化した検察や裁判所の尻馬に乗って、自分のことしか頭になく、党利党略に終始した政治が、昭和の初期に日本を最大の不幸に陥れた歴史を思い出してもらいたい。加えて、私たちの国が様々な危機に瀕している今こそ、国会議員の使命を果たすべきである。

 『小沢一郎完全無罪「特高検察が犯した7つの大罪』 講談社 2010年4月12日第1刷発行 


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