<グルジア>CIS脱退表明 ロシアとの関係悪化原因か
(毎日新聞 - 08月13日 00:01)
【トビリシ小谷守彦】グルジアのサーカシビリ大統領は12日、旧ソ連12カ国で構成する独立国家共同体(CIS)から脱退すると表明した。トビリシの議会前で開かれた大統領支持者の集会で語った。今回の交戦によるロシアとの関係悪化が脱退の理由とみられる。
グルジアは93年にCISに加盟したが、04年に発足したサーカシビリ政権は北大西洋条約機構(NATO)加盟を目指して親欧米路線にかじを切り、ロシア主導のCISとは距離を置いてきた。CIS脱退は、この路線を一層推し進め、NATO加盟への道をさらに一歩踏み出す決意を表明したものだ。
ロシアの軍事作戦終了決定を受けてグルゲニゼ首相は12日、ロイター通信に、歓迎の一方で「拘束力のある合意が調印されるまで、あらゆる事態に備える必要がある」と慎重な姿勢を表明した。
メドベージェフ露大統領とサルコジ仏大統領が同日合意した6原則は、当面の間ロシア軍が平和維持軍として活動を続けることを盛り込んでおり、グルジアがこれを受け入れるかどうかが停戦実現に向けた焦点になる。
ヤコバシビリ再統合担当国務相は「これらの地域に占領軍が残る限り我々にとって(戦争が)続く」と述べ、ロシアが従来通り「平和維持軍」として駐留を続けることに難色を示している。グルジアは以前から国連の場などで、ロシア軍に代わる、多国籍の「真の平和維持軍」の配備を求めてきたからだ。
グルジアにとっては一時的な停戦が実現しても、独立派を支援するロシアが「平和維持軍」として駐留する限り「国家の一体性」は回復できず、紛争が再燃すれば再びロシア軍が介入することへの懸念も残る。グルジアのNATO加盟に強く反発するロシアとの関係が今後、CIS脱退宣言でさらに緊張を増すのは確実だ。
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南オセチア 作戦停止 孤立回避 ロシア自重
グルジアと、同国からの独立を求める南オセチア自治州などでのロシアとの紛争で、グルジア領内に侵攻を開始していたロシアのメドベージェフ大統領が、十二日になって急転直下、作戦終了を決定した。背景には、軍事侵攻を続けた場合、ロシアの国際的孤立が決定的となり、エネルギー資源を武器に、大国復興を進める現政権の基本戦略に狂いが生じかねない、との判断があったとみられる。
南オセチアでは今月に入り、独立派とグルジア軍との小規模な衝突が頻発。グルジアのサーカシビリ政権が七日、州都ツヒンバリ攻撃に踏み切ると、ロシア軍は北カフカス軍管区の二万人以上の兵力を投入、グルジア軍をけ散らした。
ロシアのプーチン首相はサーカシビリ大統領を「イラクのフセイン元大統領以下だ」と批判、軍事行動の正当性を強調し、グルジアとの交渉を拒否する強硬姿勢を示していた。
しかし国際世論はグルジアへの同情論が大勢。
ロシア軍のグルジアへの本格侵攻後は、ブッシュ米大統領に加え、旧ソ連や東欧諸国の首脳らもロシア非難を強めていた。
またロシアの主要株価指数は緊張状態が高まった先週後半以降、11%も下落するなど経済にもじわじわと影響が出ていた。
そうした中で経済実利を重視するメドベージェフ大統領が、プーチン首相と協議の上で、シロビキ(軍治安機関出身強硬派)の反対を押し切って決断を下した可能性がある。
軍事評論家のフェルゲンガウエル氏は「ロシアはサーカシビリ氏を排除するという基本的な政治目標を達成できず、グルジア軍の主要兵力も温存された。ロシアは政治的に敗北した」と指摘する。【モスクワ=常盤伸】
(東京新聞2008年8月13日 07時03分)