<安保関連法案>「周辺」の概念削除…与党協議、歯止め焦点
毎日新聞 2月20日(金)23時36分配信
自衛隊の海外派遣に関する法整備
政府は20日、今国会に提出する安全保障関連法案の与党協議会に、米軍への後方支援などで自衛隊を海外に派遣する3法案について大枠の考え方を示した。日本周辺の有事を想定した周辺事態法は名称を変更して「周辺」の概念を削除するとともに、支援対象を米軍以外の他国軍にも広げる内容。公明党内には「周辺概念が地理的な歯止めになってきた」との認識も強く、日本の防衛と極東の平和を目的とした日米安全保障条約の枠内に活動をとどめる形で同法の骨格を維持するよう要求。ほかの2法案も含め、歯止めの掛け方が与党協議の焦点になる。
昨年7月の閣議決定では、集団的自衛権の限定行使とは別に、武力行使を前提としない自衛隊の海外派遣についても法整備を進めることをうたっている。政府の考え方では、(1)日本の平和と安全を確保するための周辺事態法改正(2)国際的な平和と安定のための恒久法制定(3)国連決議に基づいて紛争後の復興支援などを行う国連平和維持活動(PKO)協力法改正--の3法案の提出を目指す。
周辺事態法は、日米両政府が1997年に日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の改定で合意したことを受け、99年に制定された。朝鮮半島有事や台湾海峡有事などを想定。「我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」と規定し、日本への武力攻撃に至っていない状況でも自衛隊が米軍に輸送や補給などの後方支援を行う根拠法となっている。
周辺事態について政府は「事態の性質に着目したもので、地理的概念ではない」としてきたが、一方で「中東やインド洋で起こることは想定されない」などとも説明。これまで周辺事態と認定して自衛隊が派遣された事例はなく、政府・自民党内には事実上の地理的制約になっているとの不満があった。今回の安保法制整備に当たって政府は当初、周辺事態法を恒久法に吸収することも検討。歯止めを残したい公明党に配慮し存続する方向となったが、政府側は周辺概念をなくすことにこだわった。
これに対し公明党の北側一雄副代表は20日の協議会で「対米支援が周辺事態法のコア(核)の話。中心目的はしっかりと押さえないといけない」と述べ、同法が「日米安保条約の効果的な運用に寄与する」ことを目的としていることを強調した。日米安保条約は5条で日本施政下の領域への武力攻撃に対して日米双方が対処すると規定するとともに、6条では日本の安全と極東の平和のため在日米軍の駐留を認めている。公明党は周辺概念が削除されても、日本有事に直結するような事態に限定し、日本から離れた地域への派遣に歯止めを掛けたい考えだ。
そのため政府は別途、国際社会の平和と安定を目的とした自衛隊派遣を随時可能とする恒久法を整備する方針。従来はイラク戦争などの国際紛争が発生する都度、時限立法の特別措置法で対応してきた分野だ。公明党内には慎重論も根強く、恒久法を制定する場合は国会承認を義務づけ、米軍などへの後方支援の内容にも歯止めを求めていく。【飼手勇介、高本耕太】
最終更新:2月21日(土)7時56分 毎日新聞
◎上記事の著作権は[Yahoo!JAPAN ニュース]に帰属します
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
自衛隊派遣:恒久法、公明が容認 手続きの厳格化を条件に
毎日新聞 2015年02月18日 07時00分(最終更新 02月18日 12時40分)
政府・与党は、国際平和協力活動で自衛隊が他国軍隊を後方支援するための恒久法制定へ最終調整に入った。恒久法に慎重だった公明党が国会承認手続きの厳格化などを条件に容認する姿勢に転じた。安全保障法制の整備に関する与党協議会では今後、自衛隊派遣がなし崩しに広がらないよう歯止めを法的にどう担保するかが焦点になる。【高本耕太、飼手勇介】
恒久法は、国際的な平和が脅かされた際、米軍や他国軍隊が行う活動に対し、補給や輸送などの後方支援に自衛隊を派遣するための法律。安保法制の整備に関する昨年7月の閣議決定に基づき、派遣先は「現に戦闘行為を行っている現場」以外の場所とし、戦闘が始まった場合には活動の停止を義務付ける。
政府・自民党は「派遣のたびに特別措置法を作っていたら緊急の対応ができない」と恒久法の制定を主張。安倍晋三首相も16日の衆院本会議で「具体的なニーズが発生してから改めて立法措置を行う考えはない」と答弁し、恒久法の必要性を強調していた。
これに対し、公明党内には当初、特措法で対応すべきだとの意見が根強かった。しかし、首相の方針が揺るがないことを踏まえ、恒久法を条件付きで認めざるを得ないとの判断に傾いた。同党幹部はここにきて「迅速な対応ができれば国際社会での貢献度をより高めることができる」と恒久法に理解を示している。
歯止め策としては、自衛隊派遣に国会の事前承認を義務付けることが検討されている。緊急の場合には事後承認を認めるものの、国会が速やかに関与できる仕組みを整える方向だ。テロ対策特措法とイラク復興特措法は「対応措置を開始した日から20日以内に国会に付議して、国会の承認を求める」と定めたが、公明党はより短期間での国会承認を政府・自民党に求める構えだ。
一方、国連安全保障理事会の決議を自衛隊派遣の要件にするかどうかは与党内で結論が出ていない。安保理決議がある場合に限って派遣するよう求める公明党に対し、政府・自民党は安保理常任理事国が拒否権を発動した場合などに派遣できなくなることを懸念する。恒久法の策定段階では、「法律の目的」に関する部分で国連安保理に言及する案が浮上している。
政府は米軍への後方支援のための周辺事態法を改正し、米軍以外の他国軍隊も支援対象にする方針を既に固めている。日本周辺の有事の際には周辺事態法で後方支援し、それ以外の国際社会の平和と安定のための活動については恒久法で自衛隊を派遣する枠組みを想定している。
*自衛隊派遣の恒久法
恒久法は有効期間の定めがなく、一般法とも呼ばれる。自衛隊の海外派遣に関する恒久法には、朝鮮半島有事などで米軍を後方支援する周辺事態法や国連平和維持活動(PKO)協力法などがある。しかし、これらの法律の要件を満たさない場合は派遣できず、政府はその都度、特別措置法を制定して対応してきた。アフガニスタン戦争時のテロ対策特措法(2001年)、イラク戦争時のイラク復興特措法(03年)はいずれも期限のある時限立法だった。衆参両院で与野党勢力が異なる「ねじれ国会」など、時の政治情勢によっては特措法の成立に時間がかかることが、自民党などの恒久法制定論の背景になっている。
◎上記事の著作権は[毎日新聞]に帰属します
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
首相施政方針:安全保障見直しも「戦後以来の大改革」
毎日新聞 2015年02月12日 19時26分(最終更新 02月12日 22時05分)
安倍晋三首相は12日の衆院本会議で施政方針演説を行い、経済政策「アベノミクス」の達成に向けた「改革断行」の姿勢を打ち出した。経済再生や外交・安全保障の見直しを「戦後以来の大改革」と位置付け、集団的自衛権の行使容認を含む安全保障法制について「あらゆる事態に切れ目のない対応が可能な法整備を進める」と訴えた。
首相の施政方針演説は、昨年12月の第3次政権発足後は初めて。首相はイスラム過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)による日本人2人殺害を非難し、テロに屈しない考えを改めて示した。
今国会を「改革断行国会」とし、全国農業協同組合中央会(JA全中)の監査・指導権廃止を柱とする農協改革について「農政の大改革は待ったなし」と強調。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉の早期妥結▽混合診療の拡大▽法人実効税率を数年で20%台まで引き下げ−−の方針も示した。基準に適合する原発の再稼働を進める方針とともに、原発依存度を低減する考えを示した。
格差対策を念頭に「誰にでもチャンスがある社会」の実現のため教育再生を前面に打ち出した。「義務教育の6・3の画一的な学制の改革」を明言し、不登校の子どもらが通うフリースクールを例に「多様な学び」への支援を表明した。
外交・安全保障では「積極的平和主義の旗を一層高く掲げる」と宣言。4月の統一地方選後に提出する安保関連法案により「国民の命と暮らしは断固守り抜く」と強調したが、集団的自衛権の行使には直接言及しなかった。戦後70年の首相談話を念頭に、先の大戦の反省、自由と民主主義、今後の国際貢献へ「強い意志を世界に向けて発信する」とし、「憲法改正に向けた国民的な議論」を呼びかけた。【仙石恭】
◎上記事の著作権は[毎日新聞]に帰属します
.....................