2019年3月7日 Thu 中日新聞朝刊 核心
ゴーン被告保釈 定まらぬ判例、争う余地 最強弁護団 一転攻勢
日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(64)が六日、東京拘置所から保釈された。 勾留中に四回目の逮捕をにらんでいた検察側は、目算が外れた格好。 そこに挑むのは「日本最強」とも言える弁護団だ。起訴された内容には、法的評価が判例で定まっていないものも含まれ、争う余地は十分あるとされる。ゴーン被告と時間をかけて法廷戦略を練り、反転攻勢に出る構えだ。
[写真] 日産自動車本社と検察庁の建物を背景に、日産前会長カルロス・ゴーン被告(左中央)と、弁護人の弘中惇一郎氏(左上)、高野隆氏(左下)、森本宏東京地検特捜部長(右上)、西川広人日産社長(右下)のコラージュ
▽ 奇妙
「日産が長い間、問題にしてこなかったを検察に持ち込み、ゴーン氏ら二人の犯罪とするのは奇妙。普通の方法ではない」。弁護人を務める弘中惇一郎弁護士(73)は4日に開いた記者会見で、検察、日産双方に痛烈な批判を浴びせ、無罪獲得への自信をのぞかせた。
起訴内容の1つは、有価証券報告書に虚偽の記載をした金融商品取引法違反の罪。粉飾決算事件に適用されることが多いが、東京地検特捜部は、企業業績とは別の役員報酬を初めて対象とした。罪の成立には、投資判断を左右する「重要事項」への該当が要件となるが、対象となり得るかは専門家の間でも見解が分かれる。
▽ 布陣
私的な投資の契約主体を日産に変更し、評価損を付け替えたなどとする会社法違反(特別背任)事件でも、検察側と真っ向対立を続けるゴーン被告。弁護人には「無罪請負人」と言われる弘中氏だけでなく、刑事弁護のスペシャリストたちが名を連ね、まさしく最強の布陣だ。
保釈時に東京拘置所に姿を見せたのは、数々の著名事件で無罪判決を得てきた腕利きとして知られる高野隆弁護士(62)。今回、ゴーン被告に厳しい保釈条件を設定し、裁判所の許可を引き出す役割を果たした。
弘中、高野両氏を結びつけたのは、主任弁護人の河津(かわつ)博史弁護士(46)とみられる。日弁連では、刑事司法の調査・研究を担う刑事司法調査室の室長を務めるエキスパートだ。虚偽記載事件でゴーン被告と共犯とされた前代表取締役グレゴリー・ケリー被告(62)を担当するのは喜田村洋一弁護士(68)。「陸山会」事件で強制起訴された小沢一郎衆議院議員の事件などで弘中氏とタッグを組んできた。
▽形勢
海外での高級住宅の購入費や、ヨットクラブの会員権取得費、姉への実体のないアドバイザー契約料…。日産の社内調査では、こうした支出を日産に肩代わりさせていた実態がうかんだ。
しかし、これまでの起訴内容は「会社の私物化ぶり」を印象付けるには決定打を欠いていた。特捜部は「このまま終結すべきではない。全容解明すべきだ」との判断から、4回目の逮捕を視野に中東への資金の流れを捜査してきた。ただ今後は難航が必至とまられる。
仮に保釈が許可されるにしても、争点や証拠を絞り込む「公判前整理手続き」後とみられていた。まだ整理手続きも始まっておらず、あるベテラン弁護士は「拘置所での面会ではどうしても時間の制約があるし、言葉の壁もあるだろう。保釈されれば、じっくりと法廷戦略を協議することがる。この違いは極めて大きい」と解説する。
形勢逆転をうかがう弁護団。高野氏を知る検察幹部は「自分たちは一切手の内を明かさず、検察に証拠を出すだけ出させて、こちらの構図の穴をみつけるのが高野さんのやりかただ」と警戒感を強めた。
◎上記事は[中日新聞]からの抜粋、書き写し(=来栖)
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◇ 東京地裁、カルロス・ゴーン被告を保釈 逮捕から108日ぶり 2019/3/6
◇ カルロス・ゴーン被告保釈 2019.3.5 なぜ認められたのか 国際世論意識? 「無罪請負人」恐れ?
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◇ 弘中惇一郎著『無罪請負人』 (2014/4/10初版発行) / 三浦和義氏手記
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◇ 陸山会事件:小沢一郎氏 無罪確定へ 検察官役、上告断念の方針
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