密かに産まれる命 女子刑務所 ー出産・育児は…ー
NHKハートネットテレビ 2016年6月29日(水曜)再放送2016年7月6日(水曜)
生まれて数時間で母親と引き離され、何年も…ひょっとしたらずっと、会えない。
全国の女子刑務所で、服役中の母親から産まれた子どもたちの、知られざる運命です。
毎年およそ20人。刑事法では、所内で最大1年6ヶ月までの子育てが認められていますが、実践された例は、直近10年、ほぼ皆無。背景には、女子受刑者の過剰収容や高齢化などにより、刑務所側に、受刑者の出産・育児ケアまで‘手が回らない’現状があります。
有識者から問題の指摘をうけ、法務省は昨年11月に勉強会を設置。受刑者の心身ケアや更生とともに、子どもの権利条約・3条「子の最善の利益」、9条「親からの分離禁止」という視点から、専門家らと検討を重ねています。番組では、受刑者の妊娠・出産・育児の各段階を取材、どんな理解やケアが必要なのかを考えます。
■密かに産まれる命 女子刑務所 -出産・育児は…-にご出演された小野純平さんにメッセージをいただきました。
<小野純平さんプロフィール>
法政大学現代福祉学部 教授
――受刑中の母とその子をとりまく現状や背景について、どうお感じになりましたか?
女子受刑者の被虐待体験は、極めて高率かつ重篤な状況にあることがわかっています。そこからは、女子受刑者自身が愛着の障害による様々な心の問題を抱え、苦悩している姿が見えてきます。
――番組内でお伝えしきれなかった大切な視点がありましたら、教えてください。
女子受刑者とその子どもが、乳幼児期の一定期間、一緒に生活することには、二つの意義があると思います。
一つは、「子の最善の利益」に照らして、乳幼児期において母親との間に密接な関係を持つことで、心の安全基地といった、今後の生活に不可欠な心理的発達を補償することにあります。もう一つは、母親が産んだ子どもをわが子としてしっかり認識することができるということにあります。
出所後のわが子との生活への期待は、更生への意欲と大きくかわるとともに、出所後の社会的な自立や生きる意欲の創出へとつながります。こうした取り組みは、再犯防止という観点からも、大きな意味があると思います。
――今回の番組を通して、視聴者の方にどのようなことを伝えたいですか。
犯罪や虐待行為の背景には、愛着の傷つきの世代間連鎖があります。
女子受刑者に限らず、母子を孤立させることなく、地域の中で社会が育てていくということが、今後さらに重要となってくることと思います。また、そのためには、司法・矯正、医療・看護、福祉、心理など、多職種間の連携が不可欠であると思います。
◎上記事は[NHKハートネットテレビ]からの転載・引用です
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