<秤の重み 裁判員制度10年> ⑥裁判官の視野広がる (=終わり)2019/5/21

2019-05-23 | 裁判員裁判/被害者参加/強制起訴

<秤の重み 裁判員制度10年> ⑥裁判官の視野広がる

2019/5/21 朝刊

 裁判員制度は、二十一日で施行十年を迎えた。五回にわたり裁判員経験者や辞退者、被害者遺族らの声を連載した中で見えてきた課題を、裁判所はどう受け止めるか。名古屋地裁の揖斐潔所長(63)に聞いた。

----死刑を言い渡したことで心理的負担を抱える裁判員経験者がいる。死刑判決が予想される事件は裁判員裁判の対象から外すべきだとの声がある。

 「刑事裁判に参加することで精神的負担を感じられることは理解できるが、死刑が予想されるような重大な事件は社会的影響も大きいからこそ、裁判員の意見や知恵を拝借しながら一緒に判断していくことは非常に大事だと思う。負担軽減のための相談窓口を設けており、名古屋地裁では、判決後に裁判員とメーリングリストを組むなどして負担感を共有しようとする裁判官もいる」

----裁判員裁判では裁判官裁判に比べ、性犯罪事件の量刑は重くなり、介護をきっかけとした殺人事件などは軽くなる傾向にある。

 「裁判員と裁判官が一緒に検討することで、国民の多様な視点や感覚が量刑に反映された結果だ。なじみのない見方や意見が裁判員からだされたことで視野が広がったという裁判官の感想も多いと聞く。市民感覚を受け入れたことにによる積極的な変化と言える」

----裁判員候補者の辞退率が上昇し、出席率が低下している。

 「2018年の裁判員経験者へのアンケートでは、裁判員に選ばれる前は制度への負のイメージが先行していたが、経験後は96%以上が『よい経験だった』と回答している。審理予定日数の増加傾向や雇用情勢の変化、高齢化の進展、国民の関心低下などが影響しているとも言われるが、裁判所としては経験者の生の声を伝えられるよう広報活動に地道に取り組んでいくことが重要と考える。

----裁判員裁判は審理スケジュールや証拠があらかじめ決められ、言いたいことも言えず、置き去りにされた印象を持った遺族がいる。

 「非常に残念なこと。必要な証拠書類は法廷に出ているはずだが、置き去りにされたと感じられる遺族の思いをどう制度に反映させていくかについては難しい課題かと思う」

----守秘義務が足かせとなり裁判員経験者の体験が社会で共有されず制度の関心低下につながっているとの声がある。

 「守秘義務が必要とされる理由は自由な評議の確保で、裁判員を守るためのもの。被害者などのプライバシー確保も重要だ。評議の具体的な意見などを除き、感想などであれば、話してもらっていい。その点が誤解されているような気がしており、理解を得る努力をもっとする必要がある」

----制度から10年を振り返って。

 「裁判に対する国民の理解と信頼の向上に非常に役立っている。目で見て聞いて分かる公判中心主義になり、審理の内容が分かりやすくなってきた。より定着させていくために国民の意見に耳を傾けていかなければならないと思う」=終わり

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)

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