〈来栖の独白2018.7.16 Mon〉
7月6日、オウム死刑囚7名に対し死刑が執行された。早朝の執行というのは例のないもので、メディアの報道も大々的であった。また、世界的にも報道され、死刑の正否も話題となった。
ここでは、死刑存廃論については語らない。
上川法相がカトリックで洗礼を受けておられるということは、私は寡聞にして存じ上げなかった。が、クリスチャン云々を別にして、人の命を奪うことに関与せざるを得なかったことに、痛みを禁じ得ない。それは、現場の刑務官の方たちにも、同様である。膨大な報道と死刑存廃論のなか、果たして、この方たちの痛みに、幾人の人が思いを馳せたろう。
また、既成の宗教教団は、有為な若者をみすみすオウムへ走らせたこと、道を示し得なかったご自分たちをどれほど反省し(責め)ておられるだろうか。他人事で済ましておられるのではないだろうか。あの若者たちこそ、既成教団は、キリストの弟子にしなければならなかった。あの若者たちを探して地の果てまで行かねばならなかった。それが、先に召し出された「キリストの」弟子の責務ではないのか。オウムを他人事と思ってはいけない。彼らこそ、救いの中に入らねばならなかった。
死刑存廃論をいう前に、死刑執行の現場の刑務官の痛みの遙か彼方にある既成宗教教団のお気楽さに、悲憤がこみ上げる。
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* “生涯にわたる警護”も検討 【オウム 麻原彰晃以下7名死刑執行 2018/7/6】 サインした上川陽子法相
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*【死刑執行】命令書にサインする法相と現場刑務官の苦衷…私も胸が痛む〈来栖の独白2018.7.7〉
〈来栖の独白2018.7.7 Sat〉
昨日(平成30年7月6日)、オウム真理教事件死刑囚7名に対する死刑執行があった。多くの記事を読んだ。
私には今、死刑制度の是非について論じる気持は失せている。「(死刑でなく)生きて償う」事に価値を認める人もいるが、きれい事に映る。「生きて」どうやって償うのか。
命は最も重い、との論もある。が、私は113号事件勝田清孝存命中も、その論には与しなかった。「朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり」(論語 )、命よりも大切なものがあると考える。イエスは云う。
マタイ10章
28また、からだを殺しても、魂を殺すことのできない者どもを恐れるな。むしろ、からだも魂も地獄で滅ぼす力のあるかたを恐れなさい。
34 地上に平和をもたらすために、わたしがきたと思うな。平和ではなく、つるぎを投げ込むためにきたのである。
35 わたしがきたのは、人をその父と、娘をその母と、嫁をそのしゅうとめと仲たがいさせるためである。
36 そして家の者が、その人の敵となるであろう。
37 わたしよりも父または母を愛する者は、わたしにふさわしくない。わたしよりもむすこや娘を愛する者は、わたしにふさわしくない。
38 また自分の十字架をとってわたしに従ってこない者はわたしにふさわしくない。
39 自分の命を得ている者はそれを失い、わたしのために自分の命を失っている者は、それを得るであろう。
死刑制度を必ずしも非としない私だけれど、死刑執行の報道に接し、ひどく胸痛むのは、法相始め刑務官の心中を思う時である。
昨日、記者会見に臨んだ上川陽子法相の表情は、直視するに忍びなかった。憐れでならなかった。諸般の事情が重なり、今月3日に執行命令書にサインを余儀なくされたのであろう。生気が消えていた。昨年12月の死刑執行時は、まだ力があった。直接手を下すわけではないが、法相のサインによって、事は始まる。今回、上川法相の命令により命を落とした死刑囚は10名となった。
そして、私の胸痛むのは、当該拘置所職員の事である。命令書が届けば、5日以内に執行しなければならぬ。今回の場合、恐らくはオウム死刑囚が分散移送された時点で、刑場等、準備はされていただろう。
所長が、当日朝、本日がその日であることを告げ、刑務官が房へ当該死刑囚を連れ出しにゆく。死刑囚は朝、「お迎えではないか」「自分の房のまえで足音が止るのではないか」と全神経を集注させている---この状況、私は首席から聞かされたことがある---。房へ呼び出しにゆくのも苦しみを伴うが、執行のボタンを押すことの苦しみは、法相がサインをするに等しいかもしれない。直接手を下す(絞首)わけではないが、どれほどの違いがあるだろう。
その傷みは、魂に長く残る。昨日の死刑執行に携わった人たち、どのような思いで当夜をやり過ごし、今朝を迎えられたことだろう。痛ましくてならない。
「諸般の事情が重なり」と書いた。同事情により、上川法相には残存のオウム死刑囚6名に対するサインも求められることだろう。総裁選(9月)の前ということか。苛酷だ。
※ 2人の死刑執行 2017.12.19 Tue 関光彦死刑囚(=犯行当時19歳) 松井喜代司死刑囚 上川陽子法相命令
※ 闇サイト事件 神田司死刑囚の死刑執行 2015.6.25 上川陽子法相
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◇ 《死刑とは何か~刑場の周縁から》 加賀乙彦著『宣告』『死刑囚の記録』 大塚公子著『死刑執行人の苦悩』
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