産経ニュース 2018.1.10 11:36更新
成年後見利用で失職は違憲 岐阜の警備員男性、提訴
成年後見制度利用者の就業を認めない警備業法の規定は、職業選択の自由を保障した憲法に違反するなどとして、勤務先の警備会社を退職せざるを得なくなった岐阜県の30代男性が10日、国に100万円の損害賠償と、会社に社員としての地位確認を求める訴訟を岐阜地裁に起こした。
男性の代理人弁護士によると、男性は軽度の知的障害がある。平成26年4月から県内の警備会社で警備員として勤務していたが、家族間のトラブルに悩んでいたことから、29年2月に成年後見制度を利用し、障害者支援団体を「保佐人」として自身の財産管理を任せるようになった。
その後、会社から、警備業法の規定で制度の利用者は勤務を続けられないとの指摘を受け、同3月に退職を余儀なくされたという。
警備業法は、「成年被後見人」や「被保佐人」などに当たる人は警備員となってはならないと規定している。
成年後見制度は認知症や知的障害などで判断能力が不十分な人を支援する制度。利用者は一部の仕事に就けなくなるなど権利が制限されることから、政府は来年5月までに見直すとしている。
◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です
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成年後見・欠格条項:「違憲」で提訴の男性「仕事したい」
2018年01月10日 22時21分 毎日新聞
岐阜の30代男性 警備会社相手に地位確認も求める
成年後見制度の利用に伴い、警備業法の欠格条項で警備会社を退職せざるを得なくなったのは、職業選択の自由を保障した憲法に違反するとして、岐阜県東濃地方に住む30代の男性が10日、国に100万円の損害賠償を求めて岐阜地裁に提訴した。勤めていた警備会社を相手に社員としての地位確認も求めた。
原告側弁護団によると、成年後見制度の利用に伴う欠格条項を巡って、国に賠償を求めるケースは全国で初めてとみられる。
訴えなどによると、軽度の知的障害がある男性は2014年4月に岐阜県内の警備会社に就職した。それまでも含め約10年間、警備員の仕事をしていた。
親族に男性名義で勝手にローンを組まれたり、乗用車を購入されたりしたため、男性は自ら成年後見制度の利用を家庭裁判所に申し立て、17年2月に制度に基づいて保佐人がつくことになった。岐阜家裁中津川出張所はNPO法人・東濃成年後見センターを保佐人に選任した。
男性は制度利用の手続き中に、警備業法の規定で被保佐人は警備員として働けないことを知り、退職せざるを得なくなったという。成年後見制度を利用した人に対しては約180の法律で、職業や資格を失う欠格条項が定められている。
弁護団によると、男性は「何かを間違えてやめてくれということならともかく、理由もなくやめなければいけないのはおかしい。警備員の仕事に戻りたい」と訴えている。
勤務先だった警備会社も「非常に仕事熱心で助かっていた。法律で定められているから退職してもらったが、解雇したかったわけではない」と説明しているという。【駒木智一】
*成年後見制度
認知症や知的障害などで判断能力が不十分な人について、家庭裁判所から選任された親族や弁護士らが財産管理や契約行為を代行する制度。民法改正で2000年4月に導入された。本人の判断能力に応じて保護の必要性が高い順に後見、保佐、補助の3段階がある。公職選挙法は成年後見人が付いた人は選挙権と被選挙権を失うと規定していたが、13年に東京地裁が違憲と判断し、法改正で規定が削除された。
*成年後見制度の欠格条項廃止法案、国が提出方向で調整中
内閣府によると、成年後見制度の利用者に対する欠格条項は、前身の禁治産制度を引き継ぐ形で定められている。禁治産制度は対象者を「能力がない」とする前提でつくられ、差別解消の目的もあって2000年に成年後見制度に改められたが、欠格条項は残ったままになっている。
欠格条項を巡っては2015年7月、大阪府吹田市の臨時職員だった知的障害者の男性が、地方公務員法の規定を理由に再任用されなかったとして、市を相手取り復職と未払い給与の支払いなどを求めて大阪地裁に提訴し、現在も係争中だ。
成年後見制度利用促進法が16年に議員立法で成立したのを受け、政府は17年3月、利用促進に向けた基本計画を閣議決定した。次期通常国会に成年後見制度の利用を理由とした欠格条項全てを廃止する法案を提出する方向で調整を進めている。
内閣府は「欠格条項には合理性がない。ノーマライゼーションを進める観点からも廃止は必要」としている。しかし、今回提訴した男性の弁護団は「これまでも改正する機会はあったのに放置されていた。政府の不作為だ」と批判し、訴訟を通じて男性の権利回復を目指す。
知的障害者とその家族らでつくる「全国手をつなぐ育成会連合会」の久保厚子会長は「欠格条項が廃止されれば一律に排除されることはなくなる。国の努力は歓迎すべきこと」と評価する。一方で「世間に色眼鏡で見られている限り、本当の意味で障害者が能力を発揮できる社会にはならない。訴訟を通じて国民一人一人の意識改革が進んでくれれば」と話す。【駒木智一】 毎日新聞
◎上記事は[@niftyニュース]からの転載・引用です
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◇ 86歳女性に勝手に後見人をつけて連れ去った冷酷な裁判所 成年後見制度の深い闇⑬ 2017/11/26
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