原発【新設】認可 米原子力規制委員会(NRC)/高レベル放射性廃棄物、危険性が消えるまでには十万年

2012-02-10 | 政治

米原子力規制委:34年ぶり原発新設認可 委員長は反対
 【ニューヨーク山科武司】米原子力規制委員会(NRC)は9日、東芝子会社の米ウェスティングハウス・エレクトリック(WH)の原子炉を採用した、南部ジョージア州のボーグル原子力発電所内の原子炉2基の建設・運転を認可した。米国で原子炉の新規建設認可は1978年以来。ただ、NRCのヤツコ委員長は建設に反対しており、トップが「異例の反対」(ロイター通信)を表明する中で、原発建設が再開されることになった。
  NRCは米スリーマイル島原発事故(79年)後、新規建設を認めてこなかった。AP通信などによると、委員5人のうち4人の賛成多数で認可が決まった。
  ヤツコ委員長は反対票を投じた。反対理由として、福島第1原発で起きた部分的な炉心溶融(メルトダウン)の防護対策強化を新型原子炉の事業者らに強制していない点を指摘した。他の4委員は、既に昨年の見直し作業で安全性は強化されたとした。
  新たに建設されるのはWHの新型加圧水型原子炉「AP1000」。昨年12月、NRCはこの原子炉の設計を認可していた。出力は1基110万キロワットで、建設費は約140億ドル(約1兆870億円)。米エネルギー省から83億ドルの融資保証を受ける。1基は2016年、別の1基は17年の運転開始を目指す。
  昨年の福島第1原発事故を受け、NRCは米国内の原発104基の安全性を検証。7月に福島と同じような事故が「米国で起きる可能性はほとんどない」と結論付けた特別委員会報告をまとめ、原発新設に問題はないとしていた。
  オバマ政権は、地球温暖化対策の観点から、原発建設を容認する方針を示している。
毎日新聞 2012年2月10日 10時24分(最終更新 2月10日 11時12分)
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米原発34年ぶり承認 スリーマイル事故以来
日本経済新聞2012/2/10 11:33
 【ワシントン=御調昌邦】米原子力規制委員会(NRC)は9日の会合で、米南部ジョージア州で原子力発電所について建設・運転計画を承認した。米国内では1979年のスリーマイル島の事故以降は原発の新規建設はなく、新設が認められるのは78年1月以来34年ぶり。福島第1原発の事故を受け、欧州では原発建設を凍結する動きが出ているが、米国は原子力を主要なエネルギーとして利用していく方針だ。
 承認したのは、米大手電力サザンカンパニーがジョージア州オーガスタの南東約42キロメートルにあるボーグル原発3、4号機。NRCは同日、5人の委員で採決し、4対1の賛成多数で承認した。ただ、ヤツコ委員長は「運転前に福島原発事故を受けた強化策を実施する必要がある」と述べ、同意しなかった。NRC関係者は同日の採決を受け、10日午後にも正式に認可することを明らかにした。
 同原発では、東芝傘下のウエスチングハウス(WH)の新型加圧水型軽水炉(PWR)「AP1000」を採用する。2016~17年にも運転を開始する見通しだ。サザンカンパニーのファニング最高経営責任者(CEO)は声明で「1つの技術では(エネルギーの)すべての問題を解決できないが、原子力が解決策の大きな役割を果たすのは明らかだ」と指摘した。
 オバマ大統領はエネルギー安全保障の観点からエネルギーの自給率向上を掲げており、原子力もその一部として重視している。NRCは福島原発事故を受け、米国内の原発の安全性強化に乗り出しているが、原発の認可作業なども並行して続けてきた。
 米国では他にも新規建設の計画があり、今後も安全性などが確認されれば、認可される可能性がある。
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映画「100,000年後の安全」地下500㍍ 核のごみ隠すオンカロ/原発から出た放射性廃棄物を10万年後まで保管2011-06-01 | 地震/原発
   
     

【特報】中日新聞2011/5/26Thu.
地下500㍍ 核のごみ「隠す」
 大惨禍を引き起こすまで「思考停止」に陥っていた原発政策。「推進」「脱」を超えて、目をそらさないでほしいのが核燃料廃棄物の最終処分問題だ。最終的には地下深い岩盤に埋めるが、受け入れ先は決まらず、「地震大国」ゆえに半永久的に安全管理する適地も多くない。原発を稼動し続ける限り、危険な放射能の害はたまり続ける。先々の世代にまで核の後始末を押しつけていいのか。

               
フィンランド最終処分場
 雪が降り積もった凍土を、トナカイがゆったりと歩く。壮大な自然の光景に見とれていると、カメラは洞窟のような工事現場に移る。地下500㍍まで強固な岩盤を掘削して建設される、フィンランドの高レベル放射性廃棄物の最終処分場だ。
 今、話題のドキュメンタリー映画「100,000年後の安全」は、世界初の最終処分場がテーマ。原発から出た大量の放射能が無害になるとされる10万年後まで、果たして廃棄物を銅と鉄の特殊な容器に入れて安全に保管し続けられるのか。マイケル・マドセン監督が政府関係者や専門家にインタビューを重ねる。
 処分場は首都ヘルシンキから北西240㌔、オルキルオト原発から東に約1㌔の場所にある。名前は「オンカロ」。フィンランド語で「隠し場所」という意味だ。現在は調査施設を造り、2020年から操業予定だ。
 放射能の危険から未来の人類を守るにはどうすればいいか。映画の中で専門家らは「隠し方」を大真面目で議論する。
無害になるまで“10万年”
 「10万年後は次の氷河期をへて別の人類がいて、危険標識の言葉は通じないかも」「恐怖感を感覚で伝えるのにノルウェーの画家ムンクの絵『叫び』を使っては」・・・。
 配給元のアップリンク(東京都渋谷区)によると、福島第1原発の事故で4月の上映開始から東京など17館で約2万人が鑑賞した。今後、シネコンも含めた全国60館で上映が予定され、自主上映の問い合わせもひっきりなしだという。
 中部地方でも、名古屋市千種区今池の「名古屋シネマテーク」で28日から6月17日まで、浜松市中区田町の「シネマe-ra」で8月13日から3週間上映予定など主要都市で公開される。
 映画の中である専門家は「原発への賛成、反対は関係ない。放射性廃棄物という、現存する危険に取り組む必要がある」と語る。政治的なメッセージはない。伝わるのは「十万年」という永遠と同等の時間の重みだ。
 「廃棄のリスクがあまりにも大きすぎることを知り、呆然とした」などと、配給元には観客の感想が続々と寄せられている。
 フィンランドは人口540万人。同国在住のジャーナリスト、靴家(くつけ)さちこさんは、「電力の約3割を原子力で賄う原発推進国。今、5基目となる世界初の160万キロワット級新型炉を建設中」と話す。
 福島の事故への反応はどうだったか。「チェルノブイリ事故の記憶から『恐ろしいことが起きた』と瞬時に反応した。薬局からは安定ヨウ素剤が消えた。でも、地盤が固く地震も少ない国で、ドイツのような脱原発の動きは出てきていない」
 それでも情報隠しが次々と明らかになる日本とは異なり、「情報公開を徹底して、透明性を保とうとしている」と靴家さん。事故があると、地元住民の問い合わせ先として、担当者と携帯電話の番号まで公開される。
 最終処分場の存在はほとんどの国民が知っているはずだというが、注目されていない。
 建設中のオンカロは「日本の原発立地事情と同じく人口が少ないへんぴなところにある。地元は雇用が増えると賛成した」と話す。
「サイクル路線」日本 行き詰まり
 なぜフィンランドが、世界で初めて最終処分場の建設に着手したのか。
「将来起りそうな問題を予見し、事前に処理する。放射性廃棄物についても万全の対策を講じようとした」と語るのは、北欧諸国の事情に詳しい「スウェーデン社会研究所」の須永昌博所長だ。
 フィンランドは、独自技術で原発を推進する隣国スウェーデンと連携してきた。最終処分場も、計画自体はスウェーデンのほうが先行していた。同国での着工予定は13年だ。原発は世界30ヵ国に432基あり、フィンランドは4基(世界18位)、スウェーデンは10基(10位)だ。須永氏は「産業を振興していくためには原発が必要と判断した」と解説する。
 それでも国民からは未解決の最終処分問題に疑問の声が上がり続けた。両国政府がいち早く処分場の選定に取り組んだことが、国民的議論を巻き起こしたともいえる。
 スウェーデンは1980年、国民投票で原発の是非を問い、条件付き賛成が6割、反対は4割。反対の主な理由が処分問題だった。当時の国会は、10年までに全廃する方針を決めたが、09年、現状の10基体制の維持へと転換。フィンランドも、5基体制で行くことになっている。
 一方、日本では使用済み核燃料の処分方法が確立されないまま、54基もの原発が立っている。使用済み核燃料から核物質のプルトニウムとウランを取り出し、燃料として再利用する「核燃料サイクル路線」を推し進めてきたものの、行き詰まっている。
 青森県六ヶ所村の再処理工場はいまだに稼動していない。六ヶ所村と全国の原発施設には、使用済み核燃料が福島第1原発の事故前で約1万6千300㌧もたまっている。
 仮に再処理ができたとしても、高レベルの放射性廃棄物が残る。再処理せずに捨てる「直接処分方式」のフィンランドと同様、最終処分の問題はついて回るわけだ。

         
 処分事業を担う「原子力発電環境整備機構(NUMO)」の計画では、まず放射性廃棄物をガラスと混ぜて金属容器に流し込み「ガラス固化体」(高さやく1・3㍍、直径約0・4㍍)を作る。
 これを30~50年間冷やした後、300㍍以上の地下の岩盤に埋める「地層処分」とする。その際、鉄製の容器や粘土固めなど「4つのバリアー」で閉じこめて「ガラス固化体と地下水が少なくとも千年間は接触しないようにする」という。
地下水、活断層・・・適地探しは困難
 だが、豊富な地下水と活断層に覆われた日本で適地を探すのは難しい。
 今、六ヶ所村などに貯蔵するガラス固化体は千7百本。国内の使用済み核燃料をすべて再処理すると約2万4千百本に上り、さらに年間で千3百~千6百本増えていく。
 原発大国の米国でも、使用済み核燃料は行き場を失っている。ネバダ州ユッカマウンテンで処分場建設が決まったが、地元の反対などでオバマ大統領が白紙撤回した。
 舘野淳・元中央大学教授(核燃料化学)は「米国は原発の敷地が広いから貯蔵する中間処理施設を造ってためておけるが、日本では地元の理解を得るのは難しい。最終処分場選びはもっと困難だ」と指摘する。
 須永氏は「福島の事故を機に原発をやめるのかを徹底した情報公開によって国民に問うべきだ」とし、こう促す。「もし脱原発に向かったとしても、既にたまった放射性廃棄物の処理の問題は残る。日本は技術面、情報公開のあり方などをフィンランドから学ぶべきだ」 *強調(太字)は来栖
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高レベル放射性廃棄物、危険性が消えるまでには十万年/文明転換へ覚悟と気概2011-05-09 | 地震/原発
 文明転換へ覚悟と気概 週のはじめに考える
中日新聞【社説】2011年5月8日
 東日本の巨大地震からまもなく二カ月。連日の余震となお遠い復興への道のり。私たちが問われているのは、文明転換への覚悟と気概のようです。
 なかば義務感にかられて、北欧フィンランドに建設中の放射性廃棄物最終処分場「オンカロ」を題材にしたドキュメンタリー映画「100、000年後の安全」を見に出かけました。
 多くの国際賞受賞のこの記録映画の配給元は「アップリンク」。今秋公開の予定でしたが、四月、東京・渋谷の自社劇場で上映したところ連日の行列と満席、全国各地の五十館以上での上映へと広がっていったそうです。前例のない反響、福島第一原発事故で国民が原発問題に真正面から向き合うようになったことがわかります。
 高レベル放射性廃棄物は世界に二十五万トン、危険性が消えるまでには十万年。「オンカロ」はフィンランド語で隠し場所を意味します。廃棄物を凍土奥深くの岩盤に埋め込む世界初の試みです。管理可能か、明快な回答を持ち合わせる専門家はいませんでした。
*人間支配が及ばない
 日本列島が現在の形になったのは一万年前、人類が文明をもったのはたかだか五、六千年前です。十万年は人間のリアルな思考や言葉が及ぶ時空域ではありません。人間が制御できないという絶望感。静かな画面は、人類が手にしてしまった原発の恐怖と不気味さを伝えていました。
 続いて、菅直人首相が浜岡原発の全炉停止を要請しました。法的手続きではない政治判断でした。
 東京から百八十キロ、名古屋から百三十キロ。東海地震想定域の真上の浜岡原発は「世界で最も危険な原発」と呼ばれてきました。事故の場合の被害は福島原発の比ではなく、首都圏の一千万人の避難や首都喪失も想定されました。
*やむをえぬ浜岡の停止
 マグニチュード9・0の巨大地震は、日本列島を東西に数メートル引き伸ばし、首都直下型や東海、東南海・南海地震誘発が憂慮されます。浜岡原発停止はやむをえぬ判断でしょう。全原発に及ぼすべきかどうか、そこが問題です。
 浜岡を含め日本の原発は五十四基、電力の30%を占めるようになっています。すでに原油枯渇の兆候があり、太陽光や風力のクリーンエネルギーへ転換させるにしろ、先行きはなお不透明です。電力の安定供給のためには原発は不可欠という状況です。
 原発停止による生活レベルの一九七〇年代への後退は許容できるにしても、グローバル競争の落後者になる恐怖に打ち勝てるかどうか。私たちは無限の成長を前提にした近代世界の住人。文明転換の勇気をもてるかどうかです。
 地質学の石橋克彦神戸大名誉教授は、地震と原発が複合する破局的災害・「原発震災」の概念や言葉を提唱、浜岡原発の廃炉を訴えるなど警告を発してきました。
 「世界」や「中央公論」の誌上には「日本列島全域が今世紀半ばごろまで大地震活動期」「原発は完成された技術ではない」「人間の地震に関する理解は不十分」「地震列島に五十基以上の大型原子炉を林立させることは暴挙」とも書いています。警告通り、福島原発の大損傷が発生してしまいました。
 「原発震災」は人間存在への問いかけだったのでしょう。教授が提言したように原発総点検、リスクが高い順の段階的閉鎖・縮小が現実路線のように映ります。世界観を変えるには覚悟と決意、気概がいります。
 日本を代表する東北の農漁業。その被害も甚大でした。食料問題も原発に劣らない不安で重大な問題。世界の食料品価格が高騰、二〇〇八年のリーマン・ショック時を上回っているからです。
 食料価格高騰は投機と「将来の供給不足懸念」が要因とされるだけに深刻です。コメと野菜こそ90%台と80%台の自給率を保っているものの、小麦は10%台、大豆やトウモロコシはほとんど輸入しています。命にかかわる問題です。農業の復興と立て直し、食料の自給は急務です。
*新しい幸せと充実が
 失われたコミュニティーの復元や修復も大切なテーマ。震災は、私たちがそれぞれが独立しながらも、結局は支え合い、助け合って生きていくものだ、ということをあらためて気づかせてくれました。それは、ボランティアに向かう若者の行動にも表れました。
 極限状況にあっても、人間はなお優しさや思いやり、勇気や忍耐を示す存在でした。献身や自己犠牲も。それは私たちの未来へ向けての大きな希望でした。
 経済的繁栄や快適な生活とは別次元の幸せと充実。それが追い求める内容かもしれません。私たちは歴史の転換点に立っているのかもしれません。 *背景色着色は来栖
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使用済み燃料 大量に
中日新聞2011/5/7Sat.夕刊
 政府の要請を受けて浜岡原発が全面停止しても、建屋内には使用済み燃料が大量に残る。このため、想定外の地震や津波が起きた際の危険性はすぐには去らない。
 核燃料は、燃料棒を束ねた燃料集合体を一体とし、使用後も原子炉建屋内のプールで貯蔵される。冷却のために最低でも2年弱は保管され、青森県六ヶ所村の再処理工場や海外などに運ばれる。
 中電によると、3月末時点で浜岡原発1~5号機に保管されている使用済み核燃料は計6625体。福島原発の事故を受け、中電は緊急対策として冷却機能を保つための非常用ディーゼル発電機を建屋屋上に設置した。(略)
 榎田洋一名大院教授(原子力工学)は「原発を全面停止しても、使用済み燃料は発熱が続く。外部に移すにも、安全性が整った施設に限られており、簡単に運び出せない。国内の原発からは、六ヶ所村だけで処理しきれない量の使用済み燃料が出ており、長期的に手だてを考えなければならない」と話している。
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原発の「ごみ」行き場なく/「核半島」六ヶ所村再処理工場/東通原発/大間原発/核燃料 中間貯蔵施設2011-04-28

        
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小沢一郎が語った「原発/衆愚の中からは衆愚しか/マスコミは日本人の悪いところの典型」 〈悪党①〉2011-09-19 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
 『悪党 小沢一郎に仕えて』石川知宏 元小沢一郎秘書・衆議院議員著(朝日新聞出版)
--第3部〈対決〉より部分抜粋転写--
p220~
小沢 役所は、クリーンで、コストの安い、安全なエネルギーであるみたいな宣伝文句を言っていたんだけども。いまの現実もその当時も、あまり変わりないのは、結果的に原発からできる高レベル放射性廃棄物の処理の方策が、いまだ適当な策がないんだよ。ボクは当初から、役所の宣伝文句は別として、過渡的なエネルギーとしては仕方がない。石油もないからね。石炭だってないし、事実上。だから過渡的なエネルギーとしては仕方ないけども、いずれ新しい、クリーンで、しかも日本で大量に生産できるエネルギーっちゅうものを考えなければダメだというふうに思ってきたし、オレは言ってきたんだ。
石川 はい。
小沢  だからいま、六ケ所村かな、ガラス固化で地中に埋めるという技術をフランスから導入したけどね、もう40年近く前から言ってきたことなんだ。だけどそれは技術として完成していないんだよ。ガラスに固めて埋めたってね、地震でつぶれっかもしれないしね。だから、高レベル放射性廃棄物っつうのはいまの事故でよくわかったけどもコンクリから鉄骨から、なにからみんななんだよ。だから本当は宇宙に飛ばすのが1番いいんだけども、とにかくこの処理はどこの国もまだ確実な方法は見つかっていないんだよ。まあ、見つかるわけないんだけどな。
石川 この間、三陸に被災地の慰問に行った時、三陸は地盤が固いと聞きました。津波被害を受けなかった地区では地震によって倒壊した家屋は少なかったそうです。岩手に原発がないというのは、先代(小沢佐重喜)だったり、ほかの岩手選出の政治家、小沢先生も含めて、誘致運動を止めたということでしょうか。当時は福島にあれだけ原発を持ってきているのに。
小沢 いや、止めたわけではない。結果として、だな。別に岩手がいいというオファーが強くあったわけでもなかったし、ぜひともほしいということもないし。だから、結果として何もなし。1つはね、むしろ電力会社の方がリアス式海岸があまり適してないと考えた節もあるな。オレも積極的にあれこれ運動はしなかった。
石川 やはり青森に六ケ所村があって、福島に原発があって・・・。
小沢 うん、岩手にはないわな。
石川 世間では「岩手は小沢一郎が思い通りに動かしている」と常に言われています。岩手に原発がないのは、「小沢先生ががんばったから」という都市伝説のような噂もあるらしいのですが、結果的には誘致する機運がなかったということでしょうか。
小沢 オレもあまり積極的に引っ張ってこようという気はなかったな。まあ、あの、みんなアレなんだよ。交付金狙いだから。だから、事故が起きない限りはカネをいっぱいもらうからいいっちゅうことになったけど、いまにして考えれば事故が起きて現地の人も大変だし、国全体が大変なんだ。
p226~
石川 ロシアは北方領土、中国は尖閣諸島に目をつけています。歴史からいうと第1次世界大戦後に列強が中国に入り込んでいったように、いま日本が周辺諸国から攻め込まれようとしています。これだけ好き放題にやられてしまっているのは、やはりリーダーの責任でしょうか。
小沢 リーダーのせいではあるけれど、それ以前に日本人自身の問題だな。よく言うように、国民のレベル以上のリーダーは出ねえんだよ。衆愚の中からは衆愚しか生まれない。だから国民のレベルアップをしないとリーダーも育たない。その意味でどうしたらいいのか。そういうことをもう少し日本人は自分で考えなきゃいけないな。
石川 はい。
小沢 いまの震災を例にすると、マスコミを含めてバカみたいに、やれ挙国一致だ、やれいま政権を変えるのはどうだ、ってアホみたいな議論をしている。これは日本人的な議論だ。欧米では違うんだよ。危機だからこそ強力な政権とリーダーを作らなければならないっちゅうのが彼らの考え方だよ。日本人はみんな丸く丸くなろうとする。丸くなって、談合ばかりしていたって解決しねえんだよ。原発事故にしても誰も責任をとらない。誰が責任者なのか、誰が決めているのか。わけがわからない。そこをマスコミが一緒になってもっと仲よくなれって。何を考えているんだよ。
石川 まあ、そうですね。
小沢 マスコミは日本人の悪いところの典型なんだ。国家の危機を経験してきた欧米人は、危機のときだからこそ強いリーダーを選ぶ。第2次大戦前のイギリスはチェンバレンという首相がいて、ヒトラーと妥協して「チェンバレンの平和」と言われたんだな。それが結局はヒトラーの勢力を増大させてしまった。そのときにイギリス人は最も批判の多かったチャーチルを首相に選んで、チェンバレンを降ろした。危機だからこそ変えた。危機じゃなかったらチャーチルは総理にならなかった。発想が違うんだよ、ゆでガエルみたいな日本人とな。
(中略)
p229~
石川 産経新聞には私も先生もたたかれてきましたが、小沢一郎が総理にふさわしい人1位になっていました。国民の期待が高まれば、先生はそれに応える思いがあるのでしょうか。
小沢 おう、そういや、この言葉が好きで机に取っておいたんだ。「人事を尽くして天命に遊ぶ」。「天命を待つ」「天命に従う」が普通の言葉なんだよ。これは自分で自分に期待感がこもるだろ。自分のいいように天命が回ってくりゃいい、と。それじゃ、本当のアレじゃない。「天命に遊ぶ」ってのは、確か戦前の左翼が言ったんだよ。だからあまり言うなと忠告する人もいるけど、オレは最高に気に入っているんだ。期待するでも何でもない。待つんじゃねえんだよ。
石川 では、チャーチルのように70代でも総理に・・・。
小沢 そんなスケベ根性を起しちゃダメだっつってんだよ。人事を尽くすことが大事。それぞれが自分の立場、職責で全力を尽くせば世の中はよくなるんだよ。見え透いた根性を起すからみんなおかしくなるんだよ。
石川 なるほど。私も政治家として肝に銘じます。
小沢 お前も、まだまだだな。いまの民主党の欠陥は、俗に言う「雑巾がけ」、基礎的な鍛錬、基礎的な勉強もしないで偉くなっちゃったヤツばっかなんだよ。だから危機が起きるとどうしたらいいかわからなくなるんだよ。基礎的な修行を積み、経験を積み、知識を積み、そしてこういう時はこう、ああいう時はこうと、自分の価値判断基準、政策判断の基準っつうのが自然と作られてくる。それがピョンと偉くなっちまったもんだから。
石川 福田康夫政権で大連立騒動の時に私は先生に反対しに深沢まで行きましたけど、あの時は「先生は何でそんなことするんだ」という考えでした。
小沢 そうだったかな。
石川 でも、先生の言うとおりに「やっぱり大連立にしておけばよかった」と書く報道機関が最近になって多くなった気がします。
小沢 いい加減だからな。マスコミが時代遅れなんだよ。マスコミがダメだから日本がおかしくなっている。もっと合理的に論理的に、先見性を持ったオピニオンリーダーじゃなくちゃダメなんだよ、マスコミは。逆だもん。官僚と一緒になって足引っ張っているだけだから。意見を封殺する。
石川 大連立は、やはり民主党に経験を積ませないといけないと思ったからでしょうか。
小沢 うん。それが大きいね。それと政権交代への近道でもあった。わからねえんだからしょうがねえ。だからちゃんと相談したんだから、役員会で。1人でやっていて、誰も文句言わなかった。菅なんか何も言わなかったよ。
石川 そうでした。
小沢 これが権力の差よ。オレが総理だったら、あの時、誰も文句言わないよ。当時は野党の党代表だったから、みんな後になってワーワー言いだして。
石川 はい。
小沢 その程度だ・・・みんな。はあー(大きくため息)。
石川 歴史が動こうとしているときにお時間いただいてありがとうございました。あしたも裁判です。
小沢 そうか。
(2011年5月31日、チュリス赤坂内の小沢一郎事務所にて) *リンクは来栖
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