北朝鮮講演記録 「米と対等」国民鼓舞 核開発 能力向上を強調 2019/7/11

2019-07-12 | 国際/中国/アジア

特集・連載   核 心 
「米と対等」国民鼓舞  核開発 能力向上を強調  北朝鮮講演記録
  2019/7/11 中日新聞 朝刊

   
   2017年9月、「火星14」型核弾頭と題された図面の前で「水爆」とみられる物体を視察する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長。朝鮮中央通信が配信=朝鮮通信・共同

 北朝鮮で六回目の核実験強行直後に行われた講演の記録は、核開発を完了させた上で対米交渉に臨むという戦略を、北朝鮮が米朝対立の渦中に既に固めていたことを明らかにした。講演では、核・ミサイル能力の飛躍的な向上が重ねて強調されており、緊張状態にあった国内を結束させる意図が如実に伝わる。(中国総局・城内康伸)

レッドライン
 米朝対立が最高潮に達していた2017年9月。「朝鮮労働党中央委員会講演講師」という人物が壇上に立った。講演者は「われわれが今年、対米対決で収めた権利と成果を中心に」約70分間、熱く語った。
 「(米国と)力が対等でこそ、要求が通る」。講演者は核武力完成を急ぐ理由を説明。「核武力が完成すれば、米国と談判する」と力を込めた。講演は北朝鮮の度重なる挑発に対し、国連安全保障理事会が相次いで制裁決議を採択していた時期だ。講演者が「われわれは苦しくても、自尊心だけは決して捨てないようにしよう」と訴えると、会場から拍手が湧いた。
 「実に誇らしい。われわれはついに敵(米国)が引いたレッドライン(譲れぬ一線)を越えた」―。北朝鮮で「七・四革命」と呼称する、同年7月4日のミサイル「火星14」試射について、講演者はこのように説明し、聴衆の興奮を誘った。「実際の射程は高度の4倍で1万㌔を超え、サンフランシスコまで届く」
 北朝鮮は試射当時、高度28002㌔に達したと発表。米国防総省も大陸間弾道ミサイル(ICBM)と断定していた。

「石器時代」
 9月3日に行われた、北朝鮮が「水爆」と主張する最後の核実験は、過去最大の爆発規模だった。朝鮮中央通信は当時、開発した核弾頭について、電子機器をまひさせる電磁パルス(EMP)攻撃も可能と伝えていた。EMP攻撃は、国家機能やインフラに壊滅的な被害を与えるとされる。「今回の弾頭をワシントンの数百㌔上空で爆発させれば電磁波攻撃が米全土を襲う。米国は3日後には石器時代に逆戻りだ」。講演者の説明に会場はどよめいた。北朝鮮は同年2月、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星1」を地上発射型に改良した中距離弾道ミサイル「北極星2」を試射。講演者は「(1月20日に)米大統領に就任したトランプに送ったメッセージ」と述べ、牽制の意味があったことを明らかにする。

新型ロケット
 北極星1の試射が成功したのは、16年8月24日。講演者は、金正恩朝鮮労働党委員長が当日、地上型への改良を研究するよう直ちに指示したと紹介。水中発射するSLBMを「見えない核のこぶし」と表現し、「われわれが全滅した場合の第2の報復手段」とまで語った。
 韓国軍は同年3月、北朝鮮が同月中に3回にわたり発射した単距離飛翔体を口径300㍉の新型ロケットと推定していた。講演者はこれを初めて認め、「核を使わずとも、300㍉多連装ロケット砲だけで祖国統一は可能だと世界中が認識している」とうそぶいた。
 米朝首脳はいま、「素晴らしい関係」を築いていると口をそろえる。だが、講演者が米国を狙う核・ミサイルの開発を誇らしげに語り、トランプ氏を「老いぼれ」「人でなし」と激しくののしったのは、わずか約2年前のことだ。

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)
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「核武力完成を前提に」米朝交渉に乗り出す戦略  北朝鮮、緊張の裏で  2019/7/11


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