「核武力完成を前提に」米朝交渉に乗り出す戦略  北朝鮮、緊張の裏で 2019/7/11

2019-07-11 | 国際/中国/アジア

【国際】
対米交渉「核武力完成後に」 北、緊張の裏で戦略  
   2019年7月11日 朝刊

  

 【北京=城内康伸】北朝鮮が二〇一七年九月に六回目の核実験を強行した直後に南西部・黄海北道沙里院(ファンヘプクトサリウォン)市で行われた、講演会の記録を本紙は入手した。講演者は「国家核武力」が完成すれば米国と交渉する、と明言していた。北朝鮮が核とミサイルの開発にまい進し、米国と激しく対立していた当時、核抑止力の完成を前提にして米朝交渉に乗り出す戦略を、既に立てていたことが初めて確認された。
 講演記録によると、講演会は九月二十二日ごろ、沙里院市の工場で開かれ、従業員ら数百人が参加。講演者は「朝鮮労働党中央委員会講演講師」と自己紹介していた。労働党の最高機関である中央委員会から派遣された幹部とみられる。
 北朝鮮は同月三日、六回目の核実験を実施し、「大陸間弾道ミサイル(ICBM)に装着できる水爆の実験」に成功したと発表していた。講演者は「これとは別に、世界が知らない威力あることが起きる」と予告した。十一月二十九日のICBM「火星(ファソン)15」発射実験を示唆したとみられる。金正恩(キムジョンウン)党委員長はこの試射を受けて、「国家核武力の完成」を宣言した。
 講演者は「核武力が完成すれば米国と談判する。われわれの要求は(朝鮮戦争の休戦協定を転換し)平和協定を締結することだ」と強調。「平和協定が締結されれば、その日午前零時までに、南朝鮮(韓国)の駐留米軍は撤収しなければならなくなる」と付言していた。
 さらに、講演者は「元帥様(正恩氏)の意志は、朝米対決七十年の歴史を終わらせる時が来た、ということだ」と話し、核・ミサイル開発の完了を急ぐ意義を説明している。
 正恩氏は一八年元旦の演説で、前年までの核・ミサイル開発の成果を振り返った上で、「米国はわが国に戦争を仕掛けることができない」とけん制。対米関係に関する具体的な要求は行わなかった。同年三月に韓国を介して米朝首脳会談を提案。トランプ米大統領が応じたことで同年六月、シンガポールで初の会談が実現した。

【国際】
「対話は制裁効果」見方覆す 
  2019年7月11日 朝刊
<解説> 北朝鮮の朝鮮労働党幹部とみられる人物が二〇一七年九月に行った講演の内容は、日米韓などで、これまで支配的だった「北朝鮮が対話に出てきたのは制裁の効果」との見方を覆した形だ。「核保有国」として米国と対等な立場を築いた上で、対米交渉に臨むという戦略を周到に描いていたことがうかがえる。
 核実験や弾道ミサイル発射を受け、国連安全保障理事会が一七年十二月までに相次いで採択した決議に基づく制裁が、北朝鮮経済に深刻な影響を及ぼしていることは、北朝鮮関係者も本紙の取材に対し認めるところだ。しかし、北朝鮮が一八年に入り、対話に乗り出したことについて「それだけ制裁効果が出ているということだと思う」(一八年三月、河野太郎外相)との主張は、本紙が入手した講演会内容を知ると、説得力を失う。むしろ、韓国との対話を経て、米朝首脳会談にこぎ着けたこれまでの経緯を振り返ると、北朝鮮の思惑通りに進んでいるように見える。
 北朝鮮は昨年六月のシンガポールでの米朝首脳会談で、米国から「体制の安全の保証」で合意を取り付けた。講演内容は、平和協定締結や在韓米軍の撤収など要求を高めていく公算が大きいことを予想させる。
 六月末に行われた三回目の米朝首脳会談で、停滞していた米朝非核化協議は再開に向け動きだした。しかし、「核武力の完成」を宣言した北朝鮮に核を完全に放棄させることは、極めて困難な道のりだ。 (城内康伸)

    ◎上記事は[東京新聞]からの転載・引用です
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トランプ氏、金正恩氏と面会 南北軍事境界線越える 米朝首脳会談 2019/6/30
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