池袋サンシャインビルの下ならむ刑場ありて 2021.02.23

2021-02-23 | 本/演劇…など

 昭 和 遠 近  58 短歌にみる時代相
 島田修三 
 中日新聞 文化 15面 2021.02.23 Tues

 東京拘置所  戦犯処刑 癒えぬ痛み

池袋サンシャインビルの下ならむ刑場ありてそこに雪降る

 佐伯裕子歌集『寂しい門』(1999年)の一首。歌われているのは、池袋サンシャイン60に隣接した東池袋中央公園に雪の降る情景。昭和53(78)年、サンシャイン60は地上240㍍の超高層ビルとして建設され、池袋のランドマークタワーとして知られる。実はこのビルの敷地には、巣鴨プリズンとも呼ばれた東京拘置所があった。ビルの北に隣接する東池袋中央公園もかつては東京拘置所の一部で、刑場の建物があった。
 東京拘置所は明治期に設置され、当初は巣鴨監獄という恐ろしげな名の刑務所だった。後に未決拘留者と死刑確定者が収監される拘置所となる。敗戦直後の昭和20(45)年11月にGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)に接収され、日中戦争、太平洋戦争における戦争犯罪容疑に関わる政治家、軍人らが収監されることになった。戦勝国側の極東国際軍事裁判所によって「平和ニ対スル罪」の容疑で起訴されたA級から、「通例ノ戦争犯罪」「人道ニ対スル罪」に該当するB級、C級までの多数の戦犯容疑者が巣鴨プリズンに収監されたのである。
 (中略=来栖)

 くびらるる祖父がやさしく抱きくれしわが遥かなる巣鴨プリズン

 同じく佐伯の歌集『春の旋律』(1985年)の一首。佐伯の祖父はA級戦犯とされた旧帝国陸軍大将、土肥原賢二である。処刑直前の祖父が嬰児(みどりご)だった作者を面会所で抱いたのだ。記憶にあるはずもない祖父との今生の別れを歌って哀切きわまりない一首だが、両親に聞かされた場面なのだろう。東池袋中央公園には「永久平和を願って」と刻まれた石碑がある。絞首台の跡だという。
  (しまだ・しゅうぞう=歌人、愛知淑徳大学長)

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)
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〈来栖の独白 2021.02.23 Tues〉
 私のような平凡な人生の者にも、いかほどかの思いもあり、書き写させていただいた。


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