女性の主人公率が不思議と高い!『山桜記』 葉室麟 著

2014-03-13 | 本/演劇…など

インタビュー・対談 女性の主人公率が不思議と高い!『山桜記』(葉室麟 著) 聞き手「本の話」編集部
 本の話 WEB 2014.01.31 07:30
――いままで連作短編はありましたが、この「山桜記」のように登場人物も時代もばらばらというのは。
葉室 初めてですね。九州、そして武士の妻という漠然とした共通項はあっても、あとはそれぞれ独立した話ですね。この連載の話をいただいた時は、なんとなく大名と奥方の話を書いてみようかな、と思いました。当時は政略結婚とか個人の意思と関係なく、無理やり結婚させられた犠牲者、みたいなイメージで語られることが多かったですが、そんなことはないだろうと。夫婦としてのありようがちゃんとあるのではないかと。
 「汐の恋文」や「ぎんぎんじょ」のころ、当時の女の人っていってみれば戦時下の女性のようで、旦那は海を渡って戦っているのに、自分は銃後ではないですが、それぞれの家を守っているんですね。で、名護屋にやってきた秀吉が女漁りを始めますが、唯々諾々と自分を差し出すのではなく、変装したりして結構抵抗してみせ、家が取り潰されたりして。私はそんな抵抗する女性たちを書いてみたいなぁと。家の犠牲になるのではなく、自分の足でしっかりと立っている。いかに家を保つかというと、ずいぶん保守的に聞こえますが、意外とアグレッシブな戦いだったんだろうな、と思います。女の戦は刀や槍をつかうのではなく、心で戦うのだと。「花の陰」の細川ガラシャの嫁として生き残った者が翻弄されるのではなく、人生を自分で選び取って、自分なりの花を咲かせる、そこに魅力を感じます。
――いまの女性は幸せになるために結婚しますが。
葉室 そう。当時の女性にとって結婚は大冒険なんですね。他家に嫁ぐということは、自ら家を新たに作っていくことなのですね。家の主はある意味女性なんですよ。
――長編と比べて短編は書くに際して違うものですか?
葉室 短編を書くのは大変、という人もおるようですが、私は基本的に短編は好きです。書きたいテーマを鮮明に打ち出せるし、精神的に楽です。だいたい読み返すのは短編です。長編は思い通りにいかないとかいろいろ悩んだりしてしまうんです。それは長編のほうが達成感はありますけど。なんか手応えとか切り口の多様性とかは短編の方がありますね。
*デビュー作から三十冊目
――題材には毎回苦労されたんでしょうか?
葉室 「牡丹咲くころ」は「無双の花」を書いていたころ立花家史料館の植野かおりさんに資料を教えてもらいましたが、あとはなんとなく行き当たるというのでしょうか。前から知っていたこともありますし、資料を読むのが基本好きで、仕事でない時も資料を読んでいて、そろそろ書きはじめにゃいかんなと、ぼんやり考えていると浮かんでくるんです。そしてイメージが次第にはっきりしてくる感じでしょうか。タイトルは先に決まっていることもあれば、後から決まることも両方あります。「牡丹咲くころ」「ぎんぎんじょ」「くのないように」の3つは最初にタイトルが決まってました。
――この「山桜記」で30冊目ですね。
葉室 デビューが遅かったので、一里塚としてですかね、自分の目標にしてきました。特別な理由はないのですが、歴史、時代もののジャンルの中で、こういった品揃えがあります。ウインドウに並べて、注文を待つ葉室食堂ですね。
――ここ数年は年間6冊ペースだとか。
葉室 担当の編集さんには出しすぎだ、律儀に付き合う読者がどれだけいますか! なんていわれましたね。自分に残された時間を考えるととりあえず30という数があったわけです。
 書き始めたころは男が主人公、というのが多かったんですが、だんだん女性の主人公率が不思議と高くなってきました。女の人のいろいろなバージョンを書いていくというのが最近の指向でしょうか。ステレオタイプに語られてきた女性のイメージを変えていきたい。というか、そんなはずはないだろうと。ちゃんと自分で考え、自立できた女性じゃないのか。もっとしなやかで、強(したた)かな存在でしょうか。
 題材には特に制限はつけていないんです。古事記の時代から幕末明治まで、依頼があればどの時代も書きます。万葉の時代とか、奈良時代などは意外と女性の時代なんですね。女帝の時に大きく歴史が動いているんです。意外と歴史を動かしていたのは女性じゃないかと思います。
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