第1部 日本人いじめここまでやるか中国! 日本人だとわかると殴られた 世界最低最悪のビジネスの現場から
おかしいのは中国です
現代ビジネス「経済の死角」2012年10月30日(火)週刊現代
前世紀の冷戦華やかなりし頃、「アカ狩り」が流行ったが、いま中国で起こっているのは「日狩り」である。日本製品は不買、現地に暮らす日本人は叩け。中国は、文化大革命の悪夢の時代に逆行する気なのか。
■国籍がバレるとやばい
昨年の取扱貨物量7・2億tと、いまや世界一の港湾に成長した上海港の発展に、大きく寄与したと地元で礼讃されている日系企業がある。広島県福山市に本社を置く常石造船だ。(*リンクは来栖) 昨年の売上高は2351億円で、日本第2位の造船メーカーだ。
1917年に福山市で創業した常石造船が中国に進出したのは、01年のことだった。1億ドル以上を投資して、上海近郊の舟山に造船所を設立。本社から派遣された約80人の日本人社員が、5000人を超える中国人スタッフを雇って造船技術を指導している。模範企業として、地元政府から、何度も表彰を受けている。
10月11日晩、同社の4人の日本人駐在員と、一人の中国人社員の計5人が、上海一の観光名所「外灘」近くにオープンして間もない高級焼き鳥店「鳥真」で、ビールと串焼きをつまんでいた。上海で一番旨い焼き鳥店と評判の店で、近くには「100万ドルの夜景」と呼ばれる「外灘」が広がっている。
そんな夢うつつな晩餐のひと時を打ち破るような出来事が起こった。周囲で食事していた中国人男性のグループが酔った勢いで、「お前らは日本人か!」と絡んで来たのだ。
常石の中国人社員が間に入って応対した。だが悪酔いした中国人グループは、「お前ら日本鬼子はわが国の釣魚島を不当に占領しやがって!」などと毒づいて、ナイフを取り出し、中国人社員を斬りつけた。店にいた客たちがたちまち、「ワーッ」と沸いて野次馬と化した。店員が慌てて警察に通報したが、その間にも、日本人駐在員たちが殴る蹴るの暴行を受け、病院送りとなったのだった。
まさに、中国経済の発展に寄与してきた名門企業の日本人駐在員に、降って湧いたような災難だった。
■麺を頭からかけられた
この事件を、中国最大の国際ニュース紙『環球時報』が小さく報じると、中国のネット愛好者たちは、狂喜乱舞した。
〈そうか、日本製品を壊したりせずに、日本人を壊せばいいんだ!〉
〈よし、この勢いで釣魚島へ上陸だ!〉
だが、被害を受けているのは、常石の社員ばかりではない。9月のデモで1万7000人もの〝暴徒〟に取り囲まれた上海総領事館は、ホームページで次のような例を公開し、注意を喚起している。
○グループで深夜に食事をしていたところ、中国人に因縁をつけられ暴行を受けた。
○タクシーで移動中、不審なバイクの運転手からタクシーの運転手に「金を払うので、乗客を降ろせ」などの要求があった。
○複数名で歩道を歩いていたところ、中国人からペットボトルを投げつけられ、「ばかやろう」との罵声を受けた。
○複数名で歩道を歩いていたところ、中国人から「JAPANESE」と言われ、1名が 麺をかけられ怪我を負い、1名が眼鏡を割られ持ち去られた。
○歩道を歩いていたところ、中国人から「日本人か」と声をかけられ、突然、脚を数回蹴られ打撲傷を負った。
○歩道を歩いていたところ、向かってきた電動自転車の中国人に「JAPANESE」と言われ、炭酸飲料を頭にかけられた。
上海には戦前、25万人もの日本人が暮らしており、虹口区には、昔の日本家屋や神社、銭湯跡など、旧日本街が残っている。そしていまや当時に匹敵するほどの日本人が上海を行き交い、学生数3000人を数える上海の日本人学校は、海外で最大規模だ。
だが最近は、市内最大の繁華街「南京路」でさえ、日本人をすっかり見かけなくなった。
大手商社の上海駐在員が嘆いて言う。
「駐在員の家族たちは大方引き上げ、日本人駐在員用マンションは、〝男やもめ〟の館となりました。当の駐在員たちは、社の公用車に守られて、毎日自宅とオフィスを往復するだけの日々です。助っ人がほしいところですが、日本からの出張は全面自粛。本来なら新たに駐在しているはずの社員も、中国当局から嫌がらせを受けて就労ビザが下りないので、任期を終えた社員がイヤイヤながら滞在延長している始末です」
別の上海駐在の日系広告会社の日本人駐在員も語る。
「9月のデモ以降、取引先の中国企業を回っても、先方の社長たちが『急用ができた』などと口実をつけて会ってくれなくなったのです。それでも押しかけて行くと、いつもは愛想のいい受付の女性からして、『どちら様でしょう?』などとトボける始末です。いまや日系企業は、まるで疫病神のような扱いを受けているのです」
■タクシーにも乗れない
日本人駐在員たちが戦々恐々としているのは、首都・北京でも同様だ。
先週、北京から一時帰国したばかりという建設メーカー幹部が憤る。
「私は青島に駐在していますが、北京で定宿にしている五つ星ホテルがあります。今回も宿泊の5日前にそのホテルに宿泊予約を入れておきました。ところが北京経由で帰国する前日にホテルへ着くと『予約は確かに承っているが、諸事情により外国人は泊められない』と言われたのです。私がホテルマンと言い争っている間に、アメリカ人がやって来ましたが、パスポートを見せるとルームキーを渡されていました」
この駐在員は、仕方なく別のホテルへ向かったが、その後、何軒回っても、日本のパスポートを見せた途端、宿泊拒否に遭ったという。
「もう呆れ果てましたが、夜遅くなったので、仕方なく北京空港まで行って、そこのソファで一夜を明かしました。驚いたのは、10人以上の日本人が、私と同じ目に遭って、空港で寝泊まりしていたのです」(同氏)
北京は、'08年のオリンピック開催時に、「文明都市宣言」を行い、世界中の一流ホテルを誘致。北京市政府は、「ホテルは5万床を突破し、どんなに混雑しても内外の賓客を歓待できる」と自負している。また、町の至る所に「厚徳 包容」(寛大)と記した「北京精神」の標語が貼ってある。これらは一体何なのか?
北京のホテルに関しては、日系銀行の駐在員も先日、不愉快な目に遭ったという。
「国際貿易センター近くの五つ星ホテルの入口でタクシーを待っていたら、ホテルのドアボーイが突然、『日本人か?』と聞いてきたのです。『そうだ』と答えたら、続けて『釣魚島は中国の領土と思うか?』と聞いてきました。私が『なぜそのような質問をするのだ?』と聞き返したら、『そう答えないとタクシーが乗せない』と言うのです。私が無言でいたら、ドアボーイはやって来たタクシーの運転手に対して、『この男は日本人だが、釣魚島は中国の領土だと言っているので乗せてやってくれ』と断りを入れていました。こういうのも一流ホテルのサービスと言うのでしょうか?」
北京では、日本大使館近くの「全日空」や「三菱東京UFJ銀行」など、日系企業のオフィスの巨大看板を黒幕で覆ったままの状態が続いている。
9月に一斉休業した北京市内の日本料理店は、徐々に再開し始めた。だが、「釣魚島は中国の領土です!」「釣魚島を防衛する愛国者の皆さんは2割引き!」などと書かれた看板を掲げている。そしてどの日本料理店にも、日本人客は皆無だ。
日系銀行の北京駐在員が続ける。
「9月以降、中華料理店に入るのは止めました。特に日本人同士で行って日本語を話すのは〝自殺行為〟です。同様に、日本料理店も避けていますが、どうしても日本食が食べたくなった場合は、絶対に信用できる店に事前に電話して、一人でも個室を予約します。そして無理に中国語で注文するようにしています。残念なのは、日本食レストランから日本メーカーのビールが消えたことです。注文する中国人がいなくなったのか、それともメニューに置いておくと店自体が危険なのか、おそらくその両方でしょう」
このように、いま中国では、「没有日貨」(NO日本製品)が合い言葉になっているのだ。
■ありがたいと思え! と逆ギレ
北京でネット広告を手がける日本人駐在員が証言する。
「ニコンのイメージキャラクターを務めている台湾の人気アーティスト、王力宏が、自分の微博(ミニブログ)でニコンの新製品を宣伝したところ、『お前は日本鬼子の走狗か!』などという2万件を超す苦情が殺到したのです。資生堂のイメージキャラクターを務めている中国の国民的女優・孫儷も、同様の非難を浴びています。中国の有名人たちの間では、『日本と関わるとロクな目に遭わない』というコンセンサスができつつあります」 一方、製造業の多い広東省では、現地の日系企業において、中国人従業員とのトラブルが多くなってきているという。
香港に隣接した広東省深圳市で日系企業向けのビジネス会員誌を発行する加藤康夫氏が解説する。
「日系企業に勤める中国人社員からすれば、日系企業は薄給で残業が多い上に出世ができない。そのくせ中国語もできない定年前の日本人が、総経理(社長)としてふんぞり返っている。そうした不満が、今回の反日デモ以降、高まっていて、いわば『社内デモ』があちこちの企業で勃発しているのです」
深圳のある日系電気機器メーカーの日本人総経理が語る。
「わが社の中国人営業マンたちが、売り上げの1%ほどを、機器の売却先からキックバックして懐に入れているのは黙認していました。ところが9月のデモ以降、5%も取っていることが発覚したのです。私が叱りつけたら、中国人社員たちは逆ギレし、『このご時世に日系企業に勤めてやっているだけでありがたく思え!』と言うのです。顧問弁護士とも相談しましたが、営業マン全員に辞表を叩きつけられたら会社は潰れてしまうので、こちらが泣き寝入りするしかありませんでした」
広東省のある日本料理店の日本人店長も、やはり中国人従業員たちの「反逆」に遭ったという。
「9月のデモ以降、売り上げは3分の1以下に落ち込みました。そんな中、先日、夜の開店前に中国人の従業員たちが、何かコソコソやっているので問い詰めました。すると、偽醤油や偽ウイスキーなどを準備し、本物は自分たちが持ち帰っていたのです。私が『自分の目の黒いうちはそんなこと許さない』と怒鳴ったら、彼らはケロッとして言いました。『被害額100万元以下なら公安も見逃してくれるのに、なぜダメなんですか?』。結局、偽食品の提供は止めさせましたが、ショックは大きく、年内一杯で店を閉めようかとも思っています」
中国人の従業員問題で一番深刻なのは、日系企業に日本語の堪能な中国人従業員が就職しなくなるというリスクだろう。北京の大学で学生たちに日本語を教えるベテランの日本人教師が明かす。
「各大学の日本語学科で学ぶ学生の親たちが、『頼むから日系企業には就職しないでくれ』と自分の子供に頼むという現象が起こっています。このため学生たちは、『日本語に懸命に取り組んできた自分の4年間は何だったのか?』と悩み始めています。他の言語を専攻する学生たちからは、憐れみの眼差しで見られている。私自身、10年以上、北京で教えてきましたが、こんな逆境は初めてで、帰国しようかどうか迷っています」
一方、製造業の多い広東省では、現地の日系企業において、中国人従業員とのトラブルが多くなってきているという。
香港に隣接した広東省深圳市で日系企業向けのビジネス会員誌を発行する加藤康夫氏が解説する。
「日系企業に勤める中国人社員からすれば、日系企業は薄給で残業が多い上に出世ができない。そのくせ中国語もできない定年前の日本人が、総経理(社長)としてふんぞり返っている。そうした不満が、今回の反日デモ以降、高まっていて、いわば『社内デモ』があちこちの企業で勃発しているのです」
深圳のある日系電気機器メーカーの日本人総経理が語る。
「わが社の中国人営業マンたちが、売り上げの1%ほどを、機器の売却先からキックバックして懐に入れているのは黙認していました。ところが9月のデモ以降、5%も取っていることが発覚したのです。私が叱りつけたら、中国人社員たちは逆ギレし、『このご時世に日系企業に勤めてやっているだけでありがたく思え!』と言うのです。顧問弁護士とも相談しましたが、営業マン全員に辞表を叩きつけられたら会社は潰れてしまうので、こちらが泣き寝入りするしかありませんでした」
広東省のある日本料理店の日本人店長も、やはり中国人従業員たちの「反逆」に遭ったという。
「9月のデモ以降、売り上げは3分の1以下に落ち込みました。そんな中、先日、夜の開店前に中国人の従業員たちが、何かコソコソやっているので問い詰めました。すると、偽醤油や偽ウイスキーなどを準備し、本物は自分たちが持ち帰っていたのです。私が『自分の目の黒いうちはそんなこと許さない』と怒鳴ったら、彼らはケロッとして言いました。『被害額100万元以下なら公安も見逃してくれるのに、なぜダメなんですか?』。結局、偽食品の提供は止めさせましたが、ショックは大きく、年内一杯で店を閉めようかとも思っています」
中国人の従業員問題で一番深刻なのは、日系企業に日本語の堪能な中国人従業員が就職しなくなるというリスクだろう。北京の大学で学生たちに日本語を教えるベテランの日本人教師が明かす。
「各大学の日本語学科で学ぶ学生の親たちが、『頼むから日系企業には就職しないでくれ』と自分の子供に頼むという現象が起こっています。このため学生たちは、『日本語に懸命に取り組んできた自分の4年間は何だったのか?』と悩み始めています。他の言語を専攻する学生たちからは、憐れみの眼差しで見られている。私自身、10年以上、北京で教えてきましたが、こんな逆境は初めてで、帰国しようかどうか迷っています」
広東省の北側に位置する湖南省の省都・長沙では、9月16日のデモで、大型ショッピングモールの平和堂が徹底的に破壊された。屋上に避難した悲惨な日本人駐在員たちを映した衝撃的なテレビ映像は、記憶に新しいだろう。
その平和堂では、破壊されて瓦礫の山と化した店舗の復旧作業が、急ピッチで進められている。
平和堂の社員が語る。
「9月には3店舗が被害を受け、被害総額は直営部分だけで5億円に上ります。日本人駐在員の身の安全の確保が第一なので、危険な賃貸マンションを出て、中国人の偽名を使って長沙市内のホテルに泊まるなど、本当に悪夢の日々でした。3店舗合わせて、何とか今年中に再開を果たしたいと思っています」
■ビール瓶で殴り殺された
山東省青島の工場が破壊されたパナソニックでも、復旧作業が行われている。中国事業を統括する同社の幹部社員が語る。
「'08年5月に来日した胡錦濤主席がわざわざ大阪の本社を訪問し、『松下幸之助さんの支持は永遠に忘れることができない。中国の発展に尽くしていただき、ありがとうございます』と言って頭を下げたのです。それがいまや、『松下は出て行け』ですから、開いた口が塞がりません。
中国には8ヵ所の大型工場があり、1000人以上の日本人駐在員を派遣しています。中国でグループ全体の売り上げの約2割を叩き出しているので、そう簡単に撤退はできません。しかし今後は、ベトナムやミャンマー工場の比率を上げていくことになるでしょう」
中国全土では、9月のような大規模なデモこそなくなったが、相変わらず極端な「反日運動」が各地で展開されている。
海南省万寧市では、酒場で「中日戦争が起これば日本が勝つだろう」と言った25歳の青年に対して、居合わせた36歳の男がビール瓶で頭を殴打し殺してしまうという事件が起こった。
東シナ海に面した浙江省温州市では、6歳の息子を教育するため、「釣魚島は中国の領土だ!」と叫んで、橋の上から50m下の河へ飛び込んだ父親が話題を呼んだ。この父親の「愛国教育」をめぐって、賛否両論が飛び交っているのだ。
江蘇省南京市では、現地の富豪が、日本車を壊された43人の所有者に対して、中国メーカー「吉利」の乗用車をプレゼントした。1台約160万円で、合計約7000万円の出費である。ちなみに「吉利」は、スウェーデンの自動車メーカー「ボルボ」を買収したことで知られ、中国の愛国者としては溜飲が下がるのである。
中国全土で展開されるこうした日本人いじめ、一体いつまで続くのか。
一昔前まで「ゴールドラッシュ」と言われた中国ビジネスは、いまや世界最低最悪と化してしまった。いまの中国は明らかに異常だ。
「週刊現代」2012年11月3日号より
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