【これまでとこれからの「小沢一郎」の話をしよう】石川議員独占インタビュー
日刊ゲンダイ2011年9月27日
「こんなウソだらけの判決は絶対に受け入れられない」
9月26日、陸山会事件の判決が言い渡されました。無罪を信じていましたが、結果は厳しいものでした。
「被告人・石川知裕を禁錮2年に処する。この裁判が確定した日から3年間、刑の執行を猶予する」――。
主文を聞いた瞬間は愕然、茫然自失です。数日前から報道では厳しい観測が流されていたので、ある程度は覚悟もしていました。
でも、やはり驚きと脱力感で頭がクラクラしましたね。拘置所で田代検事に言われた「事実と裁判の結果は違う」という言葉の重さを噛みしめています。
ただ、今回の判決は、まさしく司法の危機だと思います。検察が起訴できなかった水谷建設からの裏ガネが、裁判所の独断と偏見で認定されてしまった。
その根拠となったのが、水谷建設の川村元社長の証言。私が彼と会ったことを裏付ける物証は何ひとつないのに、「渡した」という川村元社長の証言だけで、裁判所が「推認」してしまった。本当に私が5000万円を受け取ったというなら、そっちの罪で裁けばいいじゃないですか。
川村元社長に聞いてみたい。どうして、こんなウソをついたのか。ウソで冤罪に陥れて、何とも思わないのか。死ぬ前に、一度でいいから真実を語って欲しい。これが、私の一番の願いです。
ウソだらけの川村元社長の証言を「自然だ」と判断した裁判所の感覚も、私には分かりません。普通、顔も分からない人間に、5000万円もの大金を渡しますか?裁判官は、あまりに世間知らずですよ。社会経験がなく、閉鎖的な世界にいると、そうなってしまうのでしょうか。
判決後、検察官とも挨拶を交わしたのですが、彼らはニヤついていて、やけにうれしそうでしたね。
私の裁判の結果について、まだ小沢氏と話をしていないし、何も報告していません。判決後、報道陣から小沢氏のことを聞かれて、内心では「今ごろ、囲碁でも打っているんじゃないかなぁ」と思っていました。小沢氏は、こういう重大な局面で、囲碁を打ちながら待つことが多いんです。きっと、嫌なことも忘れられるんでしょうね。実際は、夕方から「チュリス赤坂」の事務所で、弁護士資格を持つ階猛議員や弁護団の先生らと協議をしていたみたいですが。
10月6日からは、小沢氏自身の裁判が始まります。私も証人として出廷することになり、精神的にキツいですが、控訴して闘っていきます。小沢氏にも、必ず嫌疑をハネ返して欲しいですね。
地元でも判決の反響は大きくて、事務所の電話が鳴りっぱなしだったそうです。午後6時の時点で、すべて激励の電話だったと聞き、ありがたくて涙が出ました。元外務省主任分析官の佐藤優氏からも励ましの電話をもらいました。みなさんに支えられていると実感し、「これから闘っていくんだ」と闘志を新たにしています。
こんなウソだらけの判決は、到底受け入れられないし、絶対に許しちゃいけない。今回のようなケースがまかり通れば、狙い撃ちされた政治家はひとたまりもないからです。政界全体のためにも、ここで私が踏ん張るしかありません。
▽いしかわ・ともひろ 1973年生まれ。早稲田大学卒業後、小沢一郎氏の秘書を経て、07年から衆議院議員。陸山会事件で起訴され、民主党を離党。今年7月に出版した「悪党 小沢一郎に仕えて」(朝日新聞出版)は5万部のベストセラーになっている。メルマガも好評配信中。
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陸山会事件判決、小沢事務所の説明一蹴 石川議員「事実ない」 陸山会事件判決に
日本経済新聞2011/9/27 1:02
小沢一郎・民主党元代表の資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件で、東京地裁は26日、衆院議員、石川知裕被告(38)ら元秘書3人全員に有罪を言い渡した。小沢事務所の意向を「天の声」と指摘して建設業者との癒着という“背景事情”まで幅広く認定した判決に被告側は怒りを隠さず、一方の検察側は胸をなで下ろした。政治とカネを巡り繰り広げられた法廷での攻防。次の舞台となる小沢元代表の初公判は来月6日に迫る。
「事実でないことを基に判決が下された」。禁錮2年、執行猶予3年の判決を受けた石川議員は26日夕、東京・永田町の衆院第1議員会館で記者会見し、憤りをあらわにした。
2度の休廷を挟み4時間近くに及んだ判決公判直後で、表情には疲れもにじむ。だが判決で認定された水谷建設からの裏献金について問われると「大変驚いている。裁判所は(水谷建設側の)一方的な供述を認めてしまっており、司法の危機だ」とまくし立てた。
取り調べの際、検事から「事実と裁判の結果は違う」と告げられたといい、「検察の主張は到底受け入れられない」と強調。今後も政治活動を続けることに「ためらいはない」と言い切った。
同席した主任弁護人の木下貴司弁護士も「検察側が主張せず、証拠もない事実を裁判所が独自に認定している。検察の行き過ぎた捜査を許してきたのが今回のような判決だ」と批判した。
大久保隆規元秘書(50)と池田光智元秘書(34)の弁護団も「承服できない」などとするコメントを出した。
元秘書側はこの日の判決の言い渡し中も、納得のいかない表情を繰り返し浮かべた。
東京地裁で最も大きい104号法廷で午後1時半に始まった判決公判。冒頭、登石郁朗裁判長が有罪を宣告すると、3被告は法壇を前に立ち尽くした。裁判長に促されて着席した大久保元秘書は顔をこわばらせて前方を凝視。石川議員は深く腰掛けて目を閉じ、池田元秘書はやや視線を落として、判決理由の朗読に聞き入った。
「小沢事務所は談合で決定的影響力があった」「隠蔽工作が強く推認される」。検察側主張に沿った認定が次々と読み上げられ、大久保元秘書がたびたび顔をしかめる。水谷建設側からの裏献金を認めたくだりでは「違う」とでも言いたげに何度も首を振った。弁護団も首をかしげたり、時折苦笑したりと不満な様子を隠そうとしなかった。
一方、公判途中で多数の供述調書を却下されながら、判決では主張が全面的に認められた検察側。判決後、ある幹部は「妥当な判決、適正な判断だ」と指摘した。
裁判所が調書を大量に却下するなど「注目されるポイントも生まれたが、もともとそれほど騒がれるたぐいの事件ではない。政治資金規正法違反だから当時の秘書を起訴しただけ」と、冷静な受け止めを強調した。
別の幹部は「取り調べのあり方の問題が注目されがちだが、実際の裁判は証拠の積み重ねで立証している。主張が認められて正直、ほっとしている」と安堵の表情。八木宏幸・東京地検次席検事は「動機を含め、当方の主張がほぼ認められた」とのコメントを出した。
【判決骨子】
・岩手県などの公共工事の談合で小沢事務所の意向は決定的影響力を持ち、「天の声」と受け止められていた
小沢事務所側は、中堅ゼネコン「水谷建設」から工事受注に絡む「裏献金」として計1億円を受領した
・石川知裕衆院議員らは、小沢一郎元代表からの借入金4億円の原資などが追及されるのを恐れ、隠蔽しようと故意に虚偽記入した
・大久保隆規・元公設第1秘書は借入金隠蔽の認識を石川議員らと共有していたとみるのが自然で、共謀が認められる(ただし2007年分の一部は共謀は成立しない) *強調(太字・着色)は来栖
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◆陸山会・西松建設事件判決に見る危うさ 調書主義を転換、裁判官の印象・推認で黒白を決するようになった2011-09-27 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
〈来栖の独白2011/09/28Tue.〉
司法は、危ういところに差し掛かっている。換言するなら、われわれ市民が、危うい領域に踏み込んだ。
昨日の判決文を読んでみて感じたことは、裁判所は従来の調書主義・証拠主義を転換し、裁判官の「印象」「推認」で黒白を決するようになったな、ということだ。
6月、地裁は被告らの供述調書の検察側証拠請求を大幅に斥けた。大阪地裁特捜部の証拠改竄事件で、供述調書の信用性が揺らぎ、取り調べのあり方に問題が投げかけられたからだ。
取り調べに誘導や脅しは、勿論あってはならない。「全面」可視化は必要だ。
しかし、こうなってみると---検察官の挙証責任(推定無罪)を放棄されてみると---、被疑者の声(事件発覚直後)を聞く貴重な場も失われたことに、私は気づく。
勝田事件の場合だが、彼は人間味ある山崎刑事ら捜査官に心を許し、事件は無論のこと、自己の生い立ちから身辺のこと、心の機微まですべてを聞いてもらおうと望んだ。「僕は、ほかにも人を殺しています」と取り乱して叫ぶ勝田の心を、最初は思いもかけない告白に驚きながらも優しく慰撫してくれたのは刑事たちだった。
ほかの事件においても、そういった、刑事と被疑者の、(こういってはへんに聞こえるかもしれないが)人間的な交わりの場があったのではないか。そういうところから、被疑者は自己の罪に気づいてもゆくのだろう。
そのような捜査当局なら、昨日の東京地裁判決を読めば、「やってられない」と感じるのではないだろうか。
裁判所は、調書主義を捨てた。裁判員裁判とも相まって、これからは法廷が益々「印象(感情)」「憶測」の支配する場となっていくだろう。私たちは、まず身だしなみにも気をつけなくてはいけない♪ 「怪しい」と思われて身柄を引っ張られたら最後、言い訳は通用しない。すべて「感情」が支配するのだから。そして、裁判所のポチであるメディアは、裁判所の言うとおりに書く。
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陸山会事件:元秘書3人に有罪 知事、小沢元代表擁護 批判強める県議会野党 /岩手
小沢一郎・民主党元代表の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡り、東京地裁が26日、元秘書3人に政治資金規正法違反(虚偽記載)で有罪判決を下したことを受け、県内では関係者から擁護と批判の声が上がった。
民主党籍を持つ達増拓也知事は県庁で記者団の取材に応じ、今回の判決について「無罪になると思っていたので驚いた。客観的事実に基づいて(審理されれば)有罪にはならないケースと思っている」と述べた。民主党県連の佐々木順一幹事長も「(元秘書の)控訴審での無罪を信じて県連としての活動を行っていきたい」と話した。
小沢元代表は、元秘書と同じ事件で強制起訴され、10月6日に初公判を迎える。達増知事は「政治の中で非常に重要な役割を果たしてきた人を巡る裁判で、司法関係者はしっかりした根拠に基づいて事実関係を認定してほしい」と擁護した。
一方、県議会の野党会派は批判を強める。自民党県連の千葉伝幹事長は「県民の小沢元代表に向ける目は厳しくなった」と話し、地域政党いわての飯沢匡代表も「国民の政治不信を強める結果になった」と批判した。
小沢元代表の地元後援会は、平静を装いながらも動揺の様子は隠せなかった。ある後援会関係者は「裁判所が(共謀を認めていた)被告の供述調書を却下したので、(無罪を)期待したのだが。厳しい判決だ」と戸惑いの表情を浮かべた。そのうえで、「我々は小沢先生を信じている。(小沢元代表の)公判に影響が出るかもしれないが、ずっと支えていくつもりだ」と話した。【宮崎隆、湯浅聖一】毎日新聞 2011年9月27日 地方版
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◆「陸山会事件」 水谷建設川村尚元社長「小沢氏側へ1億円」証言の背後にある事情2011-04-27 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
「小沢氏側が1億円要求」=2回に分け提供と証言-水谷建設元社長・陸山会公判
小沢一郎民主党元代表(68)の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐり、政治資金規正法違反罪に問われた衆院議員石川知裕被告(37)ら元秘書3人の公判が27日、東京地裁(登石郁朗裁判長)であり、中堅ゼネコン「水谷建設」の川村尚・元社長(53)の証人尋問が行われた。元社長は「工事受注の見返りに元秘書から1億円の資金提供を要求され、2回に分けて支払った」と証言した。
検察側の質問に対する川村元社長の証言によると、元社長は2003年11月、協力会社社長の紹介で、議員会館の小沢事務所で元公設第1秘書大久保隆規被告(49)と会い、胆沢ダム(岩手県奥州市)建設工事の下請け受注を依頼。大久保被告から「同業者より遅い」と言われた。
同年の大みそかには、大久保被告の自宅を訪れ、現金100万円を渡し、その後料亭で4~5回接待したという。
04年9月に、議員会館で大久保元秘書から2回に分けて計1億円を提供するよう要求され、「分かりました」と応じた。同年10月15日に5000万円、05年4月中旬に5000万円を小沢氏側に提供したという。(時事通信2011/04/27-11:28)
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「小沢事件」キーマン水谷功氏の揺らぎ、変質2011-03-10
小沢一郎公判"ねじれ"の原因となった「水谷兄弟」の骨肉の争い 「渡せと指示したが渡したかはわからない」と証言が揺れ始めた
現代ビジネス 伊藤博敏「ニュースの深層」2011年03月10日(木)
特捜部は、大久保隆規秘書を09年3月に逮捕、さらに「小沢逮捕」に駆け上がろうと、当時、脱税事件で三重県の津刑務所に服役していた水谷氏のもとに日参、「小沢事務所に裏ガネ1億円を渡すように指示した」という証言を引き出した。
09年10月以降、捜査を再開、10年1月の石川逮捕に至ったのは、功氏の「裏ガネ証言」があったからである
「四面楚歌」で孤立する水谷功氏
ところが、今年に入って「秘書公判」が始まると、「水谷証言」が揺らぎだした。
「5000万円を2回、持って行くように指示したのは事実だが、それが確実に相手のところに渡ったかどうかは、わからんわなぁ」と、あいまいな発言を繰り返すようになった。しかも、検察側ではなく弁護側(小沢秘書サイド)証人となったのである。
もともと、ぶれる人ではあった。佐藤栄佐久・前福島県知事の汚職事件では、「裏ガネを渡した」と証言、佐藤逮捕の決め手を検察に提供しながら、公判になると否認に転じた。 それにしても、大物政治家を権力の座から引きずり下ろすような証言をしながら、なぜ豹変するのか。
水谷氏の知人によれば、「四面楚歌で孤立している功氏は、水谷建設社長を務める兄・紀夫氏とも、裏ガネを運んだ川村(尚)元社長とも対立、独自の道を歩かざるを得ない状況だ」という。
「脱税事件で服役の間に、川村氏は距離を置くようになったし、水谷建設は復帰を許さなかった。『会社の為にやってきたことなのに』と、怒り心頭。現在、愛西市の日起建設というところで再起を図っているが、会社も川村も許すつもりはない」
渡せとはいったが、渡したかどうかは本人じゃないからわからない---。
石川元秘書に5000万円、大久保秘書に5000万円を手渡ししたのは、当時、社長の川村氏である。「本人じゃないからわからない」のは事実だが、あえてそれを口にするあたりに、両者の深い溝がうかがえる。
兄・紀夫氏との関係もそうだ。
昨年9月、水谷氏の知人の女性経営者が、債権譲渡した男性と二人で、水谷建設を相手に「貸金返還請求訴訟」を起こしている。
訴状では、8年前の03年8月、女性経営者は当時、会長だった水谷氏から頼まれて6000万円を融資したものの、現在に至るまで支払いがないので、元金に利息をつけて返還しろ、と訴えている。
すでに、裁判は始まっており、水谷建設の借金だという女性経営者の訴えが正しいのか、当時、代表権のない副社長だった功氏の個人的借金だったと反論する会社側の主張が正しいかを論評する気はない。
興味深いのは、提訴前に水谷氏が「陳述書」を提出、そのなかに「借入に際しては会社経理担当者と協議のうえで行い」、「借用目的は裏ガネ」で、「管理本部長に頼まれたから借り入れた」と、述べていることだ。
「三行半」を叩きつけてきた会社=紀夫社長に対し、過去の精算を、裁判所を通じて迫っていると見ることもできる。
水谷建設元会長と、今も表記されているため、一体と見られがちだが、実は、孤立無援、四面楚歌の状態にある。川村氏とも水谷建設ともケンカ状態。そこに小沢氏サイドが巧みに接近しているのだという。
「日起は小さなサブコンだが、功氏はここで食っていかなくてはならない。でも、事件続きで、みんな怖がって、なかなか完全復帰はできない。そこに小沢氏周辺が、『証言などで協力してくれれば悪いようにはしない』と、メッセージを送っているという話もある。弁護側証人を了解したのは、そんな"秋波"に応えているのでないか」(前述の知人)
日本有数のサブコンのトップとして、ゼネコンの前捌き役として、政界を含む各方面との調整作業を行っていた頃の面影はそこにはない。あるのは、必死の生き残り策に追われ、利用できるものは何でも使おうとする孤独なひとりの経営者の姿である。
だから弱く、でもしたたかに遊泳、それが傍目には"ゆらぎ"と映る。それは事実だがその背景まで考慮しなければ、「小沢事件」のキーマンの変質は理解できない
◆小沢氏強制起訴 水谷元会長告白「1億円裏ガネ=ワケ分かりません。石川、大久保なんて会ったこともない」2011-02-02
◆東京地裁、石川知裕被告弁護団の申請に基づき水谷建設元会長を証人採用2011-02-03
◆陸山会・西松建設事件 判決要旨/石川知裕議員、控訴の方針/小沢氏に「政治とカネ」の問題は存在しない 2011-09-26
どこを探しても出てこない虚偽記載の事実 . . . 本文を読む
◆この国を誤らせる最悪の誤判/陸山会事件:小沢元代表の元秘書 衆院議員石川知裕被告らに有罪判決2011-09-26
誤判でも、原判決は重い。メディアも、確定的に報道する . . . 本文を読む
◆陸山会事件:午後判決/勝栄二郎 法務官僚と裁判官を使って小沢一郎を抑えつけ、財務省は好き放題やった2011-09-26 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
◆「チャーチル/復権・・・」裁判闘争を終えた時、小沢一郎はどんな言葉を国民に語りかけるか。2011-09-24
『悪党 小沢一郎に仕えて』②
◆小沢一郎が語った「原発/国家のリーダー(衆愚の中からは衆愚しか)/マスコミは日本人の悪いところの典型」2011-09-19
『悪党 小沢一郎に仕えて』 ①
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【佐藤優の眼光紙背】石川知裕衆議院議員に対する第一審有罪判決について
2011年09月27日08時30分
佐藤優の眼光紙背:第117回
9月26日、東京地方裁判所は、小沢一郎・元民主党代表の政治資金管理団体「陸山会」をめぐる政治資金規正法違反(虚偽記入)容疑で起訴された元秘書・石川知裕氏(衆議院議員)ら3人に執行猶予つきの有罪判決を言い渡した。土地取引事件で起訴された石川氏が禁錮2年執行猶予3年(求刑・禁錮2年)、後任の元事務担当秘書・池田光智氏(34)が禁錮1年執行猶予3年(求刑・禁錮1年)。会計責任者として、西松建設の違法献金事件でも起訴された元秘書・大久保隆規氏(50)に関しては、土地取引事件の一部は無罪としたうえで、禁錮3年執行猶予5年(求刑・禁錮3年6カ月)という判決が言い渡された。
今回の判決は、検察の完全な勝利だ。筆者は、この裁判を「誰が日本国家を支配するか」という問題を巡る政治エリート内部の権力闘争と見ている。もっともこの権力闘争に加わっている個々のプレイヤーは自らが果たしている社会的、歴史的役割を自覚していない。検察庁は「国家は資格試験で合格した偏差値エリートが支配するべきである」と考える官僚階級の集合的無意識を体現している。これに対して、「小沢一郎」という記号が、民意によって代表された政治家を代表している。ここで、実際に小沢一郎氏が民意を体現しているかどうかは重要でない。官僚から見れば、国民は無知蒙昧な有象無象だ。この有象無象から選ばれた国会議員は無知蒙昧のエキスのようなものだ。資本主義社会において、カネと権力は代替可能な関係にある。カネの力で無知蒙昧な有象無象の支持を取り付け、国家を支配しようとする「小沢一郎的なるもの」を排除しないと、日本が崩壊するという官僚階級の危機意識から、この権力闘争は始まった。
2009年11月、石川氏から筆者に電話がかかってきた。司法記者が石川氏の秘書に「検察が『石川は階段だ』と言っています」と伝えてきたので、その読み解きに関する相談だった。筆者は、「要するに石川さんという階段を通じて、小沢幹事長にからむ事件をつくっていくという思惑なのでしょう。これは僕にとってとても懐かしいメロディです。2002年6月に鈴木宗男衆議院議員が逮捕される過程において、『外務省のラスプーチン』こと私が『階段』として位置づけられていたからです」と答えた(2009年11月24日付眼光紙背「特捜検察と小沢一郎」参照)。
今回の地裁判決は、あれから約2年かけて、官僚階級の利益代表である検察が、きちんと仕事をしたということの証左だ。今回の事件における政治的争点は、政治資金収支報告書不正記入の問題ではなく、石川氏を経由して、5000万円、大久保氏を経由して5000万円の計1億円という巨額の裏金が小沢氏に渡っているか否かという事実の有無だ。この点について、朝日新聞はこう記す。
登石郁朗裁判長は判決理由の中で、小沢事務所がゼネコンと癒着して政治資金を集めていた実態を指摘し、裏金受領の事実まで明確に認めた。
そのうえで判決は、「政治活動や政治資金の流れに対する国民の不信感を増大させた」と述べた。10月6日に初公判がある小沢氏本人も、政治的・道義的な責任を問われそうだ。(9月27日asahi.com)
それならば、検察庁はなぜ1億円の裏金について石川氏、大久保氏、そして小沢氏を起訴して、刑事責任を追及しないのだろうか? どの新聞記事を読んでも合理的説明がない。事実ならば、これこそまさに巨悪ではないか? 巨悪を追いつめることができないほど検察庁の捜査能力は低いのだろうか? それとも裏金で起訴しても公判を維持できる自信がなかったのだろうか?
石川氏は、水谷建設からの5千万円の授受を取り調べ段階から一貫して否認している。筆者には石川氏が嘘をついているとは思えない。本件について、石川氏は著書『悪党 小沢一郎に仕えて』(朝日新聞出版、2011年)で、説明責任を果たしている。検察側主張、裁判所の判断と石川氏の著書を読み比べて、問題を虚心坦懐に評価しなくてはならない。
マスメディアは、本件を政局に発展させたいようだ。読売新聞の記事を引用しておく。
小沢氏の求心力低下避けられず…元秘書有罪判決
民主党の小沢一郎元代表の資金管理団体「陸山会」を巡る政治資金規正法違反事件で、石川知裕衆院議員ら元秘書3人が有罪判決を受けたことで、同党内で最大の120人の勢力を誇る小沢グループに動揺が走った。
8月の代表選を機に影響力を強めたと指摘された元代表の求心力低下は避けられない情勢で、復権への道はさらに険しくなったといえそうだ。
小沢グループは当初、東京地裁が違法な取り調べを理由に3人の供述調書の一部を却下したことで、「元秘書3人は無罪になる。小沢氏も無罪を勝ち取り、来年9月の党代表選に小沢氏が出馬する」とのシナリオを描いていたが、こうした楽観論は消えうせた。
同グループの一川防衛相は26日、石川議員らの判決を受け、防衛省内で記者団に「(裁判の行方を)注視していくことに尽きる。特に感想はない」と言葉少なに語った。東京地裁が政治資金収支報告書の虚偽記載だけではなく、西松建設からの違法政治献金を認定したことに関しても、グループからは「元代表の公判に影響する可能性がある。心配だ」と懸念する声も出た。(9月27日読売新聞電子版)
筆者は、司法の判断と政治家に対する評価は、原理的に区別すべきであると考える。国家と社会は、そもそも出自を異にする。司法は国家に属する機能だ。これに対して、社会を代表する国会議員は、国家権力を監視し、抑制することが任務だからだ。
それに無罪推定の原則が、近代国家、近代市民社会の基本的なゲームのルールだ。石川氏は第一審判決を受け入れず、争う意思を表明している。野党が、司法判断を理由に、民主党攻撃の道具に、無罪推定の原則を踏みにじるゲームをすると、そう遠くない将来にブーメランが野党にかえってくる危険がある。
筆者自身の小沢一郎氏に対する評価は二面的だ。政治とカネを巡る検察庁による小沢攻撃は、官僚による国家統制の強化を志向しているので、日本の民主主義に危機をもたらすと考えている。さらに石川氏にかけられた5千万円の裏金疑惑は事実でないと考えている。また特捜検察の石川氏に対する取り調べは、厚生労働官僚の村木厚子氏に対する冤罪事件に通底する無理があると考える。それだから、本件に対し、筆者は小沢氏を擁護する論陣を張っている。
他方、筆者は、民主主義原則の観点から、小沢氏の政治行動に対して強い批判がある。6月2日、野党が提出した内閣不信任案に賛成して、菅直人首相(当時)を打倒しようとしたのは、議会制民主主義の原則を根本から踏みにじる行為だ。民主政治において超えてはいけない線を小沢氏と同氏に同調した民主党議員は踏み越えたと認識している。
さらに民主党代表選挙で、当初、西岡武夫参議院議長を、その後、海江田万里経産相(当時)を擁立した小沢氏の政治手法は、1人1人の国会議員を単なる駒としてしか見なさずに、政治市場で勝利すれば、成果を総取りするという政治的新自由主義だ。こういう政治手法に筆者は強い忌避観を覚える。小沢グループに所属する若手国会議員がよく口にする「親方(小沢氏)が白と言えば、黒い物でも白」というのは、任侠団体の論理であり、冗談でも健全な政治家が口にすべき言葉ではない。自立した政治家を養成することできないような派閥がいくら肥大しても、日本の社会と国家の生き残りに貢献しない。
現下日本の閉塞状況を打破するために、「政治家はダメだ」と国民が諦念をもってはならない。政治家の水準が、国民の平均から著しく乖離することはない。今の政治のだらしなさは、筆者を含む国民1人1人の実態を反映しているのである。われわれ国民も変わり、政治家を変えていく努力をしなくては、われわれの愛する日本が、帝国主義的傾向を強める国際環境の中で生き残ることができなくなる。
小沢問題のような国内政争に割くエネルギーはほどほどにして、日本の国家体制の強化のために政治エリート、特に与党国会議員の力を結集してほしい。(2011年9月27日脱稿)
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◆小沢一郎が語った「原発/国家のリーダー(衆愚の中からは衆愚しか)/マスコミは日本人の悪いところの典型」2011-09-19 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
『悪党 小沢一郎に仕えて』石川知宏 元小沢一郎秘書・衆議院議員著(朝日新聞出版)
p226~
石川 ロシアは北方領土、中国は尖閣諸島に目をつけています。歴史からいうと第1次世界大戦後に列強が中国に入り込んでいったように、いま日本が周辺諸国から攻め込まれようとしています。これだけ好き放題にやられてしまっているのは、やはりリーダーの責任でしょうか。
小沢 リーダーのせいではあるけれど、それ以前に日本人自身の問題だな。よく言うように、国民のレベル以上のリーダーは出ねえんだよ。衆愚の中からは衆愚しか生まれない。だから国民のレベルアップをしないとリーダーも育たない。その意味でどうしたらいいのか。そういうことをもう少し日本人は自分で考えなきゃいけないな。
石川 はい。
小沢 いまの震災を例にすると、マスコミを含めてバカみたいに、やれ挙国一致だ、やれいま政権を変えるのはどうだ、ってアホみたいな議論をしている。これは日本人的な議論だ。欧米では違うんだよ。危機だからこそ強力な政権とリーダーを作らなければならないっちゅうのが彼らの考え方だよ。日本人はみんな丸く丸くなろうとする。丸くなって、談合ばかりしていたって解決しねえんだよ。原発事故にしても誰も責任をとらない。誰が責任者なのか、誰が決めているのか。わけがわからない。そこをマスコミが一緒になってもっと仲よくなれって。何を考えているんだよ。
石川 まあ、そうですね。
小沢 マスコミは日本人の悪いところの典型なんだ。国家の危機を経験してきた欧米人は、危機のときだからこそ強いリーダーを選ぶ。第2次大戦前のイギリスはチェンバレンという首相がいて、ヒトラーと妥協して「チェンバレンの平和」と言われたんだな。それが結局はヒトラーの勢力を増大させてしまった。そのときにイギリス人は最も批判の多かったチャーチルを首相に選んで、チェンバレンを降ろした。危機だからこそ変えた。危機じゃなかったらチャーチルは総理にならなかった。発想が違うんだよ、ゆでガエルみたいな日本人とな。 *強調(太字・着色)は来栖
裏を返せばそれだけ小沢一郎先生が超強大な大物であり、小沢先生に不利な要素はどんなに眉唾なモノでも積極的に取り入れ、有利な要素は徹底的に排斥しにかかる、もはやなりふり構わぬ感じです。
でもわたしはきちんと信じています。小沢先生は負けない。きっと名誉回復を成し遂げて表舞台に復帰し、残り少ない人生の生命の炎を精いっぱい燃やして、我利我利亡者を斥け、国民がすべからく何の不安もなく生活できる輝かしい国づくりに奔走してくれることを。