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再審開始決定 2012.3.7 大阪地裁 青木惠子受刑者と朴龍晧受刑者(平成7年、大阪東住吉 放火殺人事件)

2012-03-07 | 死刑/重刑/生命犯

大阪の放火殺人事件 再審開始決定
NHK 3月7日 11時40分
 17年前、大阪市で、自宅に放火し、長女を殺害したとして無期懲役が確定した母親ら2人が再審、裁判のやり直しを求めていたことについて大阪地方裁判所は、「自白の信用性に疑問が生じた」として再審を認める決定をしました。
“有罪の認定揺らぐ”
 平成7年、大阪・東住吉区で住宅が全焼し、小学6年生だった青木めぐみさん(当時11)が入浴中に逃げ遅れて死亡しました。
 母親の青木惠子受刑者(48)と同居していた朴龍晧受刑者(46)が自宅に放火し、保険金目当てにめぐみさんを殺害したとして殺人などの罪に問われ、2人は裁判で無実を訴えました。
 捜査段階で作成された自白の供述調書以外に犯行を直接裏付ける証拠はありませんでしたが、1審、2審とも「自白は信用できる」として無期懲役を言い渡し、最高裁判所で刑が確定し2人は服役しています。
 その後、弁護団が実施した鑑定や実験の結果、「火災は放火ではなく、自宅の車庫に止めていた車からガソリンが漏れて気化し風呂釜の種火が引火した事故の可能性が極めて高くなった」として平成21年、2人は、再審、裁判のやり直しを求めていました。
 これについて大阪地方裁判所の水島和男裁判長は、「弁護団の実験は火災を忠実に再現していて証拠価値が高く、自然発火による可能性を排除できない」と指摘しました。
 さらに、「朴受刑者の自白どおりに車庫にガソリンをまいてライターで火をつけたとすれば、やけどもせずに放火するのは不可能で、自白には重要な部分で不自然な点や不合理な変遷が多く見られる。2人の自白には疑問が生じ、もはや有罪の認定を維持できるほどの信用性はない」として、2人にいずれも再審を認める決定を出しました。
■最高裁判所で無期懲役が確定
 捜査段階では、犯行を認める内容の2人の供述調書が作成されました。
 裁判で、2人は「厳しい取り調べでうその自白に追い込まれた」と無罪を主張。
 自白以外に犯行を直接裏付ける証拠はありませんでしたが、1審の大阪地方裁判所は、「自白は信用できる」として無期懲役を言い渡しました。
 2審の大阪高等裁判所も同様に有罪と判断し、平成18年に最高裁判所で無期懲役が確定しました。
■弁護団の主張
 その後、弁護団は、大学の専門家に鑑定を依頼。
 鑑定書の中で専門家は、「自白どおりの方法で、本人がやけどをせずにガソリンに火をつけるのは不可能だ」と指摘しました。
 さらに、弁護団は実験を行いました。
 現場の車庫を再現し、コンクリートの床にガソリンをまきました。ガソリンは緩やかに傾斜した床を伝い、車庫の出入り口に向かって流れていきます。出入り口付近には風呂釜があります。およそ20秒後、気化したガソリンに風呂釜の種火が引火し、火災が発生しました。
 実験結果などから、弁護団は「火災は放火ではなく、車庫の車から漏れて気化したガソリンに風呂釜の種火が引火した事故の可能性が極めて高くなった」と主張しています。
 こうした新たな証拠を基に、平成21年、2人の無罪は明らかだとして再審、裁判のやり直しを求めました。
■2人の手記や手紙
 2人は刑務所で心情をつづった手記や手紙を書いていました。
〔朴受刑者の手紙〕「火災では子供を救助することができず」「恐怖や絶望が自分の限界を越えて理性を失ったために嘘の自白をしたのです」。
〔青木受刑者の手記〕「新証拠を真剣に検討して頂き、再審決定を言い渡してもらえることを強く、強く望みます」「一日も早く無実が証明されてめぐちゃんのお墓に報告したいです」。
■2人の近況
 青木受刑者は、和歌山刑務所に服役しています。
 支援者によりますと、本人は火災で娘を助けられなかったことを悔やみ、「刑務所を出られたら、まず娘の墓参りをしたい」と話していたということです。
 また、茨城県で男性が殺害されたいわゆる「布川事件」で、再審の結果、無罪が確定した桜井昌司さんとも面会して激励を受けていたということで、「朴受刑者の自白どおりの放火は不可能だ」とする実験結果が出てからは、裁判がやり直されることへの期待感を口にしていたということです。
 去年11月に裁判所に提出した意見書の中では、「ひどい取り調べを受け、身に覚えのない罪を着せられ、うその自白をさせられたうえ、最後には犯人に仕立て上げられている。新証拠を真剣に検討していただき、一日も早く再審開始決定を言い渡してもらえることを強く望みます」とつづっていました。
 一方、大分刑務所に服役している朴受刑者も実験の結果を基に裁判のやり直しが認められることを期待しているということです。
 去年10月には母親に宛てて、「裁判官には全く無実を信じてもらえず、本当に悔しい思いをしてきました。心がモヤモヤしてばかりで、重くて濃い霧に覆われていたのです。それを実験が吹き払ってくれた。希望でいっぱいです」とつづっていました。
 母親が先月21日に本人に面会した際には、布川事件や足利事件など再審で無罪となるケースが相次いでいることにも触れて、「再審が認められると自信を持っている」と話していたということです。
■再審を認める地裁の決定を受けて
 青木受刑者には担当の弁護士から再審を認める決定が伝えられました。
 弁護士によりますと、本人は決定を聞いて、「ありがとうございます。16年半にしてようやく真実を分かってもらえる裁判官に出会えてうれしいです。早く家に帰って、息子と一緒に亡くなった長女の墓参りをして、無実を分かってもらえたと報告したいです」と涙を浮かべながら話していたということです。
 また、朴受刑者は、弁護団を通じてコメントを出し、「逮捕から6024日にしてついに鎖を断ち切るスタートラインに立つことができました。英断を下された裁判官や支援をして下さった方々に感謝の気持ちでいっぱいです。うその自白をさせられたことが悔しくてならないが、僕が無実であることを改めて訴えたいと思います」と述べました。
 さらに、朴受刑者の母親は支援者への報告集会で、「先月21日に面会したとき、息子はいつものように冷静で、『実験結果には100%自信をもってる』と話していた。きょうの決定をきっと息子も青木さんも喜んでいると思う。裁判所に信じていただけたことを本当にうれしく思います。これからは検察が抗告しないようまた戦いたいと思います」と話していました。
■弁護団の記者会見
 今回の決定を受けて弁護団は記者会見し、喜びを語りました。
 このうち朴受刑者を支援する乘井弥生弁護士は、「これまでの裁判では、私たちが申請した証拠に対して、自白があるからという理由で、おかしいところに目を全く向けてくれなかった。やっと常識的な判断をする裁判官に出会えたというのが正直な気持ちだ」話しました。
 また、青木受刑者の齋藤ともよ弁護士は、「16年以上拘束されている状態が続いているので、検察には裁判所の決定に従って、すぐに再審の手続きに入るようよう求めたい。いったん自白をしてしまうと覆すことがどれだけ難しいか最後まで不安は残っていたが、きょうの決定は、裁判所が証拠を科学的、具体的に検討した結果で、立派な判断だと思う」と話していました。
■今後の手続きは
 7日の決定に対して、検察は「即時抗告」を決定の翌日から数えて3日以内に行うことができます。
 今回は土曜、日曜を挟むため今月12日までとなります。
 即時抗告があった場合、大阪高等裁判所が判断することになります。高裁の決定に不服がある場合はさらに最高裁判所に特別抗告することができます。最高裁でも再審が認められれれば、大阪地方裁判所でやり直しの裁判が始まります。

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産経ニュース 2012.3.7 19:20
【東住吉放火殺人】再審開始決定の要旨 「放火方法の自白に疑問」
【主文】
 青木恵子元被告、朴龍晧(たつひろ)元被告について再審を開始する。
【理由】
■第1 再審請求の概要(略)
■第2 確定判決の証拠構造(略)
■第3 再審請求審の審理(略)
■第4 裁判所の判断
▽1 証拠の新規性と明白性(略)
▽2 新実験関連の証拠
 弁護側の主張・立証の中心は事件当時の車庫内の状況を可能な限り忠実に再現し、朴元被告の自白に基づく方法で放火を試みた燃焼再現実験にある。
 車庫内にある風呂釜が当時は種火状態だった点を再現したのは新実験が初めてで、火災状況をより忠実に再現しており証拠価値も高いと認められる。この結果を検討すると、放火方法に関する朴元被告の自白に以下のような疑問が生じる。
 新実験では、ガソリン約7リットルの全量をまき終わらない段階で、ガソリン蒸気が種火に引火した。自白通りにガソリンをまけば、ライターで点火する余地はないのではないかとの疑問が生じる。
 また、新実験では点火後ただちに炎が上がり激しく燃焼した。朴元被告がパンツ1枚の状態で点火し、頭髪を焦がす程度にとどまることがあり得るのか、自白が真実なら何らかのやけどを負う方がむしろ自然ではないかとの疑問が生じる。
 さらに新実験では黒煙が小屋内に充満したが、自白では触れられていない。
 新実験の結果に照らして検討すると、朴元被告の自白には科学的見地からして不自然不合理なところがあり、実験時の燃焼状況は自白と矛盾する。
▽3 検察官の主張
 検察官は床面の傾斜や気温や湿度などの条件が当時の車庫内の状況を忠実に再現したとは認められないと主張するが、再現忠実性に問題は見当たらず、自白の疑問点は払拭されない。
▽4 自白の信用性
 確定判決では2人の自白が唯一の直接証拠で、特に放火の実行行為者とされ、放火行為を詳細に供述した朴元被告の自白の信用性に重点を置いて検討された。新証拠によってその信用性に疑義が生じれば、確定判決の有罪認定もまた動揺する構造になっている。
 新証拠によって、朴元被告の自白は科学的見地から不合理で、火災の客観的状況ともそぐわないことが明らかになった。放火方法という自白の核心部分で信用性に疑義が生じた以上、自白全体の信頼性も揺らいでいると言わざるを得ない。
▽5 自白の主な疑問点
 朴元被告は、事件の1カ月くらい前に青木元被告から金が足りないと責められ、「生命保険があるやん」と言うのを聞いて死亡保険金のことを言っているのだとすぐに分かったと供述している。
 しかし、漠然とした発言のみで青木元被告の意図が分かったというのは不自然だ。その際の青木元被告の様子について供述が大きく変遷もしている。
 また動機に関する自白は、通常の社会生活を送っていた2人がわが子を殺すという重大犯罪に及ぶものとしては飛躍があり、不自然な感が否めない。
 確定審は朴元被告の頭髪に焦げがあったことや、ライターを所持していたことを自白の信用性を支える事情の一つと指摘している。
 しかし頭髪の焦げは消火活動の際に生じたとしても説明がつき、ライターは火災後見つかっていない。自白中には秘密の暴露というべきものはない。自白の信用性を高度に保障する客観的裏付けは存在しないと言わざるを得ない。
▽6 自然発火の可能性
 何らかの原因でガソリンが床面に漏れた場合、風呂釜の種火に引火する可能性は否定できない。全証拠を検討しても火災の原因を自然発火と認定するまでには至らないが、その可能性を積極的に排斥する証拠はない。
■第5 結論
 新証拠を中心に検討したところ、朴元被告の自白は放火方法という核心部分で科学的見地から不自然不合理な点があり、信用性は大幅に減殺された。自白の重要部分には不合理な変遷も多くみられ、信用性を容易に肯定できないことが明らかになった。青木元被告の自白も同様で、2人の自白はもはや有罪認定を維持しうるほどの信用性はない。
 以上によれば、自白の任意性や弁護側のその他の証拠の新規性・明白性について検討するまでもなく、有罪認定に合理的疑いが生じたと認められる。 
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大阪東住吉区の放火殺人事件 最高裁:再審決定2被告(青木恵子・朴龍晧)の執行停止認めず 2012/9/20 
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