異質な安楽死 ALS患者嘱託殺人…致死量の鎮静薬を投与したとして…2020/7/24 中日新聞「核心」

2020-07-24 | Life 死と隣合わせ

異質な安楽死 ALS患者嘱託殺人 
 中日新聞 2020年7月24日 朝刊  核  
 安楽死を希望する女性難病患者の依頼で致死量の鎮静薬を投与したとして、医師二人が嘱託殺人容疑で京都府警に逮捕された。患者を死なせた医師が有罪となったケースは過去にもあったが、今回は二人が女性の主治医ではなかった上、インターネットを介して依頼を受け、現金も受け取っていたとされる。専門家は「これまでとは全く異質な事件」と指摘。障害者の命が軽視されるとの懸念も広がった。 

■来訪者
 昨年十一月三十日、京都市中京区のマンション。筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の林優里さん=当時(51)=の部屋に、仙台市の医師大久保愉一(よしかず)容疑者(42)と東京都の医師山本直樹容疑者(43)がやってきた。二人は五〜十分ほどで現場を後にし、席を外していたヘルパーが意識不明の林さんを発見した。 
 捜査関係者によると、林さんはツイッターで大久保容疑者に自身の殺害を依頼。具体的なやりとりは、二人しか閲覧できないダイレクトメッセージ機能を使っていた。山本容疑者の口座には、林さんから現金百万円以上が振り込まれていた。 
 二十三日夜、事件の概要を報道陣に説明した京都府警幹部は、2人がすぐに立ち去っていたことや金銭の授受を挙げ、「安楽死か否かを問題にする以前の事案だ」と悪質性を強調した。

■ブログ
 大久保容疑者のものとみられるブログには、薬物などを使って人を死なせる方法を書いた記事が並び、殺人の証拠を残さず捜査をかわす方法を独自に考察。「医療者がその気になれば、跡形もなく人を葬ることは造作もない」などと記し、質問も募集していた。
 東京大大学院の会田薫子特任教授(臨床倫理学)は「主治医ではない医師が金銭を受け取って薬を投与したのであれば、過去に医師が関わった事件や、不起訴になった事案とは、全く性質が異なる。人生の最終段階の医療を巡って国や関係者が積み上げてきた議論とも根本的に違う」と驚く。
 「鎮静薬の過量投与で生命を終わらせたということなら、適正な使用で患者の苦痛を取り除く緩和ケアの現場に誤解や混乱をもたらさないか心配だ」との危惧を示した。

■尊厳死
 病気などで回復の見込みがなく死期が近づいている人が、本人の意思に基づいて延命措置を受けずに自然に死を迎えることは「安楽死」とは異なり、「尊厳死」と呼ばれる。社会の高齢化や医療の発展に伴い、「本人や家族が納得できる最期を迎えたい」という自己決定権への意識は近年高まっており、日本尊厳死協会のホームページによると、同会の会員は10万人を超える。
 厚生労働省は国民の意識の変化を踏まえ、2018年に終末期医療のガイドラインを改定。「本人の意思に加え、医療・ケアチームとの話し合いが必要」としており、患者と家族、医師や介護職らが事前に対話を重ねる「人生会議」の普及を呼び掛けている。
 安楽死を巡っては、脚本家の橋田寿賀子さんが16年、月刊誌で「安楽死を認めるべきだ」との文章を掲載した。スイスでは、医師が処方した致死薬を患者が自ら使う「自殺ほう助」が認められており、NHKは昨年、同国で安楽死を選んだ難病の日本人女性のドキュメンタリーを放送した。
 女性の死生観に共感が広がる一方、障碍者団体から「自殺を肯定する内容で障碍者や難病患者の尊厳や命が脅かされた」と反発や懸念の声も出ていた。

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)


豪の104歳科学者 オーストラリアでは安楽死が認められておらず、スイスで安楽死 2018/5/10 


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