安田純平さん解放情報 トルコで保護「可能性高い」
2018年10月24日 朝刊
菅義偉(すがよしひで)官房長官は二十三日深夜、首相官邸で緊急記者会見し、内戦下のシリアに二〇一五年に入り、国際テロ組織アルカイダ系の「シリア解放機構」(旧ヌスラ戦線)に拘束されていたとされるフリージャーナリスト安田純平さん(44)=埼玉県入間市出身=とみられる男性が解放され、トルコ国内で保護されているとの情報があると発表した。旧ヌスラ戦線の関係者も二十三日、本紙の電話取材に「解放は事実だ。カタールが仲介した」と認めた。 (妹尾聡太、カイロ・奥田哲平)
菅氏は「確認中だが、(安田さん)本人の可能性が高いと考えられる」と述べた。行方不明から約三年四カ月、事件は大きな転機を迎えた。
菅氏によると二十三日夜、カタール政府から「安田さんが早ければ本日中に解放される」「解放されてトルコ南部アンタキヤの入管施設にいる」と、相次ぎ連絡があった。政府高官によると、健康状態は悪くなく、在トルコ日本大使館職員が施設に向かった。政府高官は「解放に条件はなく、身代金の支払いもない」と話した。
安田さんは一五年六月、トルコ南部ハタイ県から陸路でシリア北西部イドリブ県に入国後、消息が途絶えた。一六年三月と五月に、自称シリア人活動家がフェイスブック上に安田さんとみられる映像などを公開。交渉開始の要求に応じなければ、過激派組織「イスラム国」(IS)に引き渡すと警告し、安田さんは「助けてください。これが最後のチャンスです」と訴えた。
二年以上消息が途絶えていたが、今年七月に数回にわたって映像が公開された。七月末の映像では、ISが人質を殺害する場面を連想させるオレンジ色の服を着た安田さんが「ひどい環境にいます。今すぐ助けてください」と呼び掛けた。
■紛争地寄り添いルポ
安田純平さんはイラク、アフガニスタン、ヨルダン、シリアなどの紛争地や戦地のほか、スマトラ沖地震で被災地を取材、ルポし続けてきた。内戦が激しくなったイラクでは、基地建設現場などイラク軍の関連施設で料理人として働きながら取材。消息不明となる直前の二〇一五年六月には、ツイッターに「そこで生きている人にはそれぞれの事情があって、そういうものを少しでも知りたくて私は現場に行っている」と記していた。
埼玉県入間市出身。信濃毎日新聞社に在籍中の〇二年に休暇を取り、アフガニスタンやイラクを取材。翌年、フリーとなりイラク戦争前から現地取材を始め、戦争中はイラクの様子を伝え続けた。〇四年には先に拘束された日本人の三人の消息をつかむためファルージャに向かう途中に、武装勢力に拘束されたが、数日後に解放された。
帰国後は、「自己責任」を追及する批判や「国に迷惑を掛けた」などと言われる中、ジャーナリストとして取材に行ったことを繰り返し説明。拘束中に見た武装勢力の暮らしや武装勢力とのやりとりを自らイラストをつけルポにした。
その後もイラクやシリアの取材を継続。反体制派の武装勢力と暮らして生活をルポしたり、紛争地で生きざるを得ない人々の日常を、同じ場所で生活しながら取材した。消息不明となる際も、シリア情勢が悪化し欧州のジャーナリストが撤退する中、危険を押して現地に向かったという。 (片山夏子)
◎上記事は[東京新聞]からの転載・引用です
.............
〈来栖の独白 2018.10.24 Wed 14:20〉
日本政府は安田氏解放に向けて幾許かの働きかけをしたのか? 2年前、安田さんは「助けてください。これが最後のチャンスです」と訴え、今年7月、映像が公開された折にも、政府からは何の声明も発表されなかった。
感じるのは、アンタキヤ (アンティオキア) 、ここもまた聖書の地ということだ。そして、カショギ氏殺害の事件もそうだが、何と日本は遠くにあることだろう。
――――――――――――――――――――――――
安田さん救出、政府「テロユニット」が役割
2018.10.24 19:56
フリージャーナリストの安田純平さん(44)について、政府は健康が確認され次第、3年4カ月間の拘束の経緯について全容解明に乗り出す。政府職員も接近困難な紛争地からの邦人救出の裏には、情報収集や交渉を専門に担う「国際テロ情報収集ユニット」の働きがあった。
ユニットは平成27年12月、言語や地域情勢、交渉能力などに習熟した外務省、警察庁など5つの政府機関出身の20人で発足、現在は80人以上が活動する部隊だ。
カタールとトルコに武装勢力との折衝を託したとされる今回の救出について、政府関係者は「情報を入念に収集、分析して協力要請国を選定、独特の駆け引きもしながら進めた成果だ」と指摘した。
これまで邦人救出事案に際しては、外務省や警察庁の緊急チームを軸に解決を図ってきた。テロ情報に特化した常設の専門機関の存在は、海外での邦人の安全管理に厚みを持たせている格好だ。
安田さんをめぐっては、身柄を不当に拘束された被害者として、刑法の国外犯規定に基づき警察が捜査に着手する可能性がある。イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)が平成27年にジャーナリストの後藤健二さんら邦人2人を殺害したとする映像を公開した事件などで、現在も国外犯規定に基づく捜査が行われている。ただ、紛争地などでの捜査や全容解明は事実上、困難だ。
安田さんは16年4月、イラクのバグダッド近郊で武装グループに拉致され、3日後に解放されたが、当時は被害届を出さなかったとされる。警察関係者は今回についても「交渉で解放されているので、本人が被害届を望まないかもしれない。捜査自体が、交渉の合意内容などに沿わない可能性もある」との見方を示す。
◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です *強調(=太字)は来栖
..............
〈来栖の独白〉追記 2018.10.24 20:48
「日本政府は何をしていたのか?」と不審に感じていたが、そうですかぁ、「国際テロ情報収集ユニット」ですか・・・。解りました。
..............
〈来栖の独白〉追記の追記 2018.10.25 21:42
安田氏が日本に到着したとのこと。
「助けてください」と云っている人に日本政府は何かしたのか?と書いた私だが、正直な気持として、今般の安田報道、また安田氏家族の対応は、おかしくないか? まるで安田氏を英雄扱い。氏は過去に4度も人質となった経験がある。「自己責任で」シリアへ行った。自分のやりたいことをやったにすぎぬ。公務でもなければ、日本に貢献したわけでも、日本の犠牲になったわけでもない。・・・どうも、釈然としない。
―――――――――――――――――――――――――――
【記者殺害】カショギの遺体の一部発見か 指はムハンマドに献上された?
2018年10月24日(水)13時03分
プリサ・ポール
<サウジアラビアの反体制ジャーナリストがトルコのサウジ総領事館で死亡した事件で、カショギのバラバラ遺体の一部が、サウジ総領事館の井戸から発見されたようだ>
サウジアラビアの記者で「ワシントン・ポスト」にも寄稿していたジャマル・カショギがトルコのイスタンブールにあるサウジアラビア総領事館で殺害されたとされる事件で、カショギの切断された遺体の一部が、サウジ総領事館の庭の井戸で見つかったと、複数の報道機関が伝えた。
トルコ祖国党のドウ・ペリンチェク党首が明らかにしたところによれば、遺体はサウジ総領事館の庭にある井戸で発見された。
ペリンチェクはロシアの通信社「スプートニク」に対して、「イスタンブール治安当局の信頼できる筋から、カショギの遺体の一部がサウジ総領事公邸の庭にある井戸から発見されたと連絡があった」と話した。
また、消息筋が「スカイニュース」に語ったところによれば、遺体の一部から、カショギは「バラバラにされ」、顔は「原形をとどめていなかった」ことが判明したという。
遺体発見のニュースが伝えられた前日には、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領がサウジ当局に対し、カショギの遺体の所在を明らかにするよう求めていた。「殺害されたと公式に認められた人物の遺体がいまだ見つかっていないのは、どういうわけだ?」とエルドアンは10月23日に語っている。
エルドアンはまた、カショギが殺害されたとされる事件をめぐる捜査の詳細も明らかにした。
*実行犯はムハンマド指揮下の「タイガー部隊」?
エルドアンによれば、サウジ総領事館の外にある監視カメラのハードディスクが、殺害があったとされる時間の数時間前に抜き取られていたという。また、カショギが総領事館を訪れる予定時刻の直前、軍幹部を含む「諜報、安保、法医学」関連のサウジ国籍の職員15人が総領事館に入り、数時間後に立ち去ったのち、直ちに飛行機でサウジアラビアのリヤドに戻ったという。
エルドアンはさらに、館内で口論になり誤って殺されたとするサウジ側の説明は信用できないと述べ、サウジに対し、この「残忍」で「計画的」な殺人の詳細を明らかにするよう求めた。
一方でエルドアンは、カショギの死亡時の音声記録に言及しなかった。トルコの捜査当局によればこの音声記録は、カショギが拷問を受け殺害された事実を証明するものだという。さらに、カショギが死亡する前に指を切断されたことも示唆しているとされる。
殺害を実行したのは、サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子の指揮下にあると言われる暗殺部隊「タイガー部隊」だと、「ミドル・イースト・アイ」は報じている。
報道によれば、暗殺部隊はリヤドへ戻ったあと、カショギの指を未来のサウジ国王に献呈したという。ある消息筋は「ミドル・イースト・アイ」に対して、「皇太子は日ごろから、自分を批判した記者全員の指を切断してやると言っている」と語る。
(翻訳:ガリレオ)
◎上記事は[NewsweekJapan]からの転載・引用です
――――――――――――――――――――――――
「安田純平さん」解放 手放しで喜べない「3億円」の裏事情
社会週刊新潮 2018年11月8日号掲載
〈いまだに危ない危ない言って取材妨害しようなんて恥曝しもいいところだが、現場取材を排除しつつ国民をビビらせたうえで行使するのが集団的自衛権だろうからな〉
2015年6月、ツイッターでこう啖呵を切った直後、安田純平氏(44)はシリアの武装勢力に拘束された。以後、「私は韓国人」などと喋る彼の映像などが断続的に武装勢力サイドから公開されたものの、安田氏の居場所等は判然とせず、膠着状態が続いた。
彼に関するニュースも途絶えがちとなり、日本人の記憶からも遠ざかりつつあったなか、突如、安田氏解放の吉報は届けられた。
東京外国語大学の飯塚正人教授(イスラム学)の解説によれば、
「シリアの反政府組織はイドリブ県というところに追いつめられ、いつ政府軍による総攻撃を受けるか分からない苦境に立たされています。安田さんは反政府組織に拘束されたと見られていますが、彼らにしてみれば、これ以上、安田さんを自分たちのところに留めておいても『利用価値』がないと判断して解放したのではないでしょうか」
他方、「在英国の人権団体からは、カタール政府が約3億円の身代金を払ったとの情報も出ている。事実だとすると、それは『肩代わり』であり、いずれ日本政府が何らかの形で『弁済』しなければなりません」(大手メディア外信部デスク)
*「借り」を作った日本政府
菅義偉(よしひで)官房長官は身代金の支払いについて否定しており、真相は藪の中だが、いずれにせよ、政府は水面下で安田氏救出に向け奔走していたという。
「菅さんは『国際テロ情報収集ユニットが機能した』と明かしています」(官邸担当記者)
国際テロ情勢に詳しい公共政策調査会の板橋功・研究センター長が後を受ける。
「このユニットは、外務省、防衛省、警察庁、内閣情報調査室などから集められたメンバーで構成され、外務省内に設置されていますが、全員が内閣官房兼任です。つまり、総理・官房長官直結の組織。現在は定員80名ほどで、安田さん救出は、15年に発足した同ユニットにとっても最重要課題だったと言えるのではないでしょうか。安田さん救出に協力してくれたカタールやトルコの情報機関と信頼関係を築き、彼らにシリアの反政府組織と交渉してもらったものと思われます。身代金が支払われていなくても、日本政府がカタールやトルコに『借り』を作ってしまったことは事実です」
ある中東専門家が続ける。
「借りを作った以上は『お返し』をしなければならず、例えばカタールが国連の非常任理事国に名乗りを上げた際、日本が賛成の一票を投じるといった形での『恩返し』が考えられます」
このように、安田氏の拘束および解放は、日本外交に少なからぬ「影響」を与えたと言えそうなのである。
特集「『安田純平さん』手放しでは喜べない『3億円』の裏情報」より
◎上記事は[デイリー新潮]からの転載・引用です
-------------------------