福島を除染ゴミと使用済み核の最終処分場に/時間をかけカネを投じて容認させる 原発行政の“悲しき宿命”

2012-01-19 | 政治

「福島を除染ゴミと使用済み核の最終処分場に!」という民主党政権の“本音”が表面化する新年
現代ビジネス 2012年01月05日(木)伊藤 博敏
 放射性物質汚染対策特別措置法(特措法)が、1月1日に施行され、東京電力福島第一原発事故で発生した放射能汚染土壌の除染活動が本格化する。
  除染活動は、福島復興の第一歩である。そして原発事故は東電に第一義的責任があるとはいえ、国の原子力政策の一端を押し付けたのだから国も“同罪”であり、特措法で住民を強制避難させた警戒区域や計画的避難区域を、「除染特別地域」として国が直轄で除染するのは当然のことだろう。
  だが、この除染作業は、すべての住民に帰還を促すものではない。
 除染には限りがないし、どんなに人手と最新の除染技術を投入しても、住環境を整えられない地区もある。
  それを見越して、細野豪志原発相、枝野幸男経済産業相、平野達男復興相の3閣僚が、12月18日、福島市を訪れて、佐藤雄平福島県知事らに、避難地域の見直しと帰宅困難地域の設定を伝えた。
 ■住民ではなく国家にとってのメリット
  原発事故後、政府は機械的に「同心円避難」を促し、20キロ圏内を警戒区域、20キロから30キロを避難に備える緊急時避難準備区域とした。その後、風向きによって汚染度が高い地区を計画的避難区域として避難を促した。
  その区分を、地上から高さ1メートルの放射線量の年間換算で、50ミリシーベルト以上の帰還困難区域、20ミリシーベルトから50ミリシーベルトまでの居住制限区域、20ミリシーベルト未満の避難指示解除準備区域の三つに組み直した。
  区分けの再編は、野田佳彦首相が12月16日に行った「事故収束宣言」を受けて行われたものだけに、一般には、正常化(避難住民の帰還)へ向けた動きということになろう。だが、その裏にある民主党政権の思惑は、「福島を除染ゴミと使用済み核の最終処分場に」というものではないだろうか。
 そう思うのは、菅直人政権の頃から政府が、「住環境に戻れない地区がある」というのを自覚、その汚染の激しい地区の将来的な国有化と、そこを核汚染物質の処理場とする案を密かに温めていたからだ。
  私は、このコラムの5月19日付けで「試算では費用1兆4100億円 菅政権が言えない『原発被災地の国有化』というタブー」という記事を書いた。
 「放射線量が高く、土壌汚染が進み、子供を屋外で遊ばせることができない環境の土地は、国が買い上げるしかない」という政府関係者の声を紹介、そこには①国の責任の明確化、②被災者の前向きな希望、③エネルギー政策への有効活用、という三つのメリットがあることを指摘した。
  当時、松本健一内閣官房参与が、「原発周辺には20年は住めない」という「菅首相発言」を伝え、菅首相が烈火のごとく怒り、訂正したことがあるが、その真偽はともあれ「将来的に住めない土地」が発生するのは、誰しもわかっていた。
  12月18日の帰還困難区域の設定は、事故から9カ月が経過、「もう戻れない」という“諦め”が住民に芽生えたことを織り込んでのものである。
  そのうえで、「エネルギー政策への有効活用」というメリットの追求も始めた。もちろん住民にとってではなく、国家にとってのメリットである。そこには、国有化した土地を除染で発生した汚染土壌などの中間貯蔵施設として利用したいという民主党政権の思惑がある。
 ■先送りしてきた使用済み核燃料の処理
  すでに、12月28日、福島県を訪れた細野豪志原発・環境相と高山智司政務官が、「双葉郡内での貯蔵期間30年以内の中間貯蔵施設の設置」を要請した。「30年以内」は、政権交代しても守る約束というのだが、当事者の大半がどうなっているかわからない約束など、到底、当てにならない。
  原発は、「科学技術の永続的発展」をもとに推進されてきた。その技術への盲信が原子力村の「安全神話」につながり、それが今回の地震や津波を「想定外」にした。要は、自分の代では責任を取りたくないという意味での先送り。あれだけの大惨事を経て、日本の政官界の“性根”は変わらない。
 その先送りの最たるものが、使用済み核燃料の処理だろう。
  核廃棄物の処理場が日本にはない。「トイレのないマンション」といわれるゆえんで、どの原発も使用済み核燃料を原発内のプールに溜め込んで、冷やし続けている。
  将来、この使用済み核燃料は青森県六ケ所村の再処理工場に持ち込まれ、取り出されたプルトニウムで高速増殖炉を稼働させ、残りをガラスで固めて高レベル放射能廃棄物とし、これを最終処分場で数万年かけて冷やすことになっている。
  だが、その「将来」が、なかなかやってこない。高速増殖炉も再処理工場も、完成しないのである。そこに福島原発事故が起き、高速増殖炉もんじゅは、廃炉となる可能性が高い。“夢”の核燃料サイクルは、“夢”に終わりそうで、そうなると現実に立ち戻り、使用済み核燃料を、直接、地下500メートルから1キロの地中深くに埋め込んで、長い年月をかけて冷やす最終処分場が必要になる。
 ■応募自治体がひとつもない実情
  最終処分場探しを新たに行うのは、不可能と言っていい。なにしろ候補地選定作業は、30年近くに及ぶが、候補地が取りざたされるたびに、反対運動が起き、2007年の高知県東洋町を最後に、応募自治体はひとつもないのが実情だ。
  再処理工場と各原発に溜めこまれた使用済み核燃料は、すでに満杯に近く、いつどんな不測の事態が発生するとも限らない。民主党政権も電力業界も、「国有化した福島原発周辺地、なかでも廃炉となる福島第二原発とその周辺地が最終処分場に相応しい」という“本音”を隠し持っている。
 こちらが表面化するのは、汚染土壌などの「中間貯蔵施設」という名の最終処分場より時間がかかるだろう。福島県民の激しい反発も予想される。しかし、どこかの時点で、民主党政権は理解を求めざるを得ない。
  そのために、時間をかけカネを投じて容認させる――。
  その発想は、原発建設の時と同じであり、それが原発行政を継続する政権の“悲しき宿命”なのである。
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原発の「ごみ」行き場なく/「核半島」六ヶ所村再処理工場/東通原発/大間原発/核燃料 中間貯蔵施設2011-04-28 | 地震/原発 

            
◆中日新聞【特報】2011/4/27Wed.
原発の「ごみ」行き場なく 使用済み核燃料の行方は 中間処理施設 建設中も
 福島第1原発の事故では、発電を終えた核燃料が敷地内に置かれている危険性を知った。使用済み核燃料は青森県六ヶ所村の再処理工場の貯蔵施設で受け入れているが満杯に近く、各原発内の貯蔵プールなども余裕がなくなりつつある。一方、この燃料を再びエネルギー源として使う核燃料リサイクルは実現していない。同じ下北半島に建設中の中間貯蔵施設の現場を歩き、原子力政策の限度を考えた。(篠ケ瀬祐司、小国智裕)
 まだ肌寒く、フキノトウが顔を出し始めた青森県むつ市関根。使用済み核燃料をいったん貯蔵する中間施設の建設現場付近からは、津軽海峡を挟んで、うっすらと北海道函館市が見える。
 昨年8月に着工され、貯蔵建屋は基礎を終え床部分を造る段階だ。大震災で資材は被災地に優先されて本体工事は中断するが、来年7月の稼動開始目標は変わらない。
 貯蔵能力は三千㌧。最終的に建屋はもう1棟造られ、最大で計五千㌧を貯蔵する予定だ。同施設を造るのは「リサイクル燃料貯蔵株式会社」で、東京電力と日本原子力発電が出資している。

            

・最長50年保管
 使用済み核燃料は、まず発電所内のプールで冷やされる。それから六ヶ所村の再処理工場に送るまでの間、キャスクと呼ばれる金属製容器に入れて、空冷式のこの貯蔵建屋内に保管される。
「中間」とはいえ期間は最長50年間。再処理が滞り、使用済み核燃料がたまり続けたり永久貯蔵化したりしないか。
 リサイクル燃料貯蔵社の江村公夫広報渉外部長は「年限や容量などは地元との約束だ」と、予定量や期間以上の貯蔵はないと断言する。
 同施設から海まで5百㍍と近いが、周囲に防潮堤は見当たらない。江村氏は「東電の自社評価では、6、3㍍の津波発生可能性を想定。施設は海抜20㍍の場所にあり、防潮堤は必要ない。キャスクは(固定の台から)転落したり、水没したりしても耐えられる」と安全性を強調する。
・背景に交付金
 施設はむつ市が誘致した。2000年6月の法改正で、原発敷地外でも使用済み核燃料を貯蔵できるようになった。5ヵ月後、当時の杉山粛(まさし)市長(故人)が東電に対し、市内に立地可能かの調査を依頼。OKが出ると杉山氏は03年の市議会で誘致を正式に表明した。
 誘致の背景は、見込まれる巨額の交付金や固定資産税だ。市は破綻寸前で02年度の財政規模が約90億円に達し、累積赤字は約14億円。杉山氏は「財政確保を模索する中で、誘致する考えに至った」と議会で述べた。
 財政的な効果はすぐ表れた。03年度に市に入った初期対策交付金は約9億7千万円。10年度決算では、原発関連で約22億3千万円の交付金を受けている。
 市は09年にショッピングセンターを改修して現市庁舎に移った。費用総額約27億円のうち13億円以上が東電と日本原電の寄付だった。
 下北半島は今、隣の東通村で東通原発、大間町で大間原発が1基ずつ建設中で「核半島」とも呼ばれている。誘致する背景はいずれも同じだ。 

再処理工場各原発内プール 容量はほぼ満杯

            

 ・「福島の事故後 不安に」青森・むつ市民
 中間貯蔵施設をむつ市民はどうみているか。
 会社員男性(56)は「地元には特別な産業がない。誘致でカネを引っ張ってくるのは苦渋の選択では」と、誘致に理解を示す。年配の男性も「息子が東北電力の東通原発で働いている。ここらでは自衛隊か原発関連の仕事しか働き口がない」と、施設の建設はやむを得ないとの立場だ。
 福島の事故後に考えが変わったという住民もいる。ある商店主は「実は中間貯蔵とはどんなものかよく知らなかった。福島の事故をみて不安になった」と漏らす。
 誘致・建設に反対してきた「核の中間貯蔵施設はいらない! 下北の会」の野坂庸子代表は「施設の核燃料を50年後にどうするかについて、事業者は『40年目までに協議する』と言っている。それは子どもたちにツケを回すことではないか」と不信感を募らせている。
 原発の使用済み核燃料の行方はどうなっているのか。ウラン燃料は3~4年燃やした後に、使用済み核燃料が残る。その燃え残りのウランや新たに生成されたプルトニウムを再処理し、燃料として原発で再利用するのが「核燃料サイクル」。輸入に頼るウランを有効利用できる上に、核の「ごみ」を大幅に減らせるというメリットがある。
 その拠点が日本原燃の再処理工場だ。使用済み核燃料は3年かけて百度以下に冷まして、剪断や溶解、精製してプルトニウムを取り出す。それをウランと混ぜて「MOX燃料」に加工し、既存の原発で燃やすのがプルサーマル発電だ。現在は海外で製造されたMOX燃料が使われている。
 ところが、この再処理工場はいまだに稼動していない。1997年の運転開始予定だったが、相次ぐトラブルから延期され、現在は12年10月の運転開始を目指す。
 原発54基から出る使用済み核燃料は、使用前のウランの重さで年間約1千㌧。再処理工場の貯蔵施設受け入れ容量は3千㌧なのに対し、既に約2827トンが運び込まれて満杯に近い。
 日本原燃は「試験工程の組み直しなども考えながら進めていく必要があるかもしれないが、現時点では、予定通り竣工へ向けて取り組んでいきたい」と説明する。
 再処理工場が稼動しても処理能力は8百㌧で、2百㌧程度が毎年残ってしまう。一方、各原発の総貯蔵量は昨年9月現在で約1万3千5百20トンに及ぶ。福島第1原発の場合、共用プールや各原子炉建屋の容量2千百トンに対し、千8百20トンが入れられていた。
 貯蔵能力使用率を見ると、東電の原発を上位に、その他もあと数年で容量を超えてしまう。貯蔵場所がなければ、ウラン燃料を取り換える事ができず原発は稼動できなくなる恐れもある。
 問題はこれだけではない。再処理した後に残る核分裂生成物など高レベル放射能廃棄物の最終処分についてはめどさえ立っていない。液体は特殊なガラスで固め、ステンレス容器に封じ込めて30~50年かけて冷やした後、地下約3百㍍の深さに埋める。だが、最終処分場の建設場所はまったく決まっていない。
 フランスや英国に再処理を依頼してきたが、今や自国内処理が原則。最終処分場が必要なことは原発の稼動当初から分かりながらも見切り発車した。原発が「トイレのないマンション」といわれるゆえんだ。原発の是非については、安全性はもちろんだが、最終処分問題も国民的議論を行うときが来ている。
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