【佐々木類の視線】日米仏、中国けん制 太平洋国家で連携を
産経新聞 2013.7.15 10:21
日米両国は6月末、米西部カリフォルニア州南部周辺空海域で、約2週間にわたる共同統合訓練「ドーン・ブリッツ(夜明けの電撃戦)」を終えた。海上自衛隊の艦艇に米海兵隊の垂直離着陸輸送機オスプレイが発着艦する映像に注目が集まったが、この訓練にはもう一つの大きなメッセージが込められていた。米中首脳会談終了2日後の6月10日、会談場所から90キロという目と鼻の先で実施した政治的な意味合いだ。
オバマ大統領との首脳会談で、米中両国が共存・共栄することを意味する「新型大国関係」の構築を呼びかけた中国の習近平国家主席に対し、「同盟国を置き去りにしない」という米国家安全保障問題担当のドニロン大統領補佐官(当時)の言葉を裏付ける米国の意思だ。習氏は会見で「太平洋には米中両大国を受け入れる十分な空間がある」と言ってはみたものの、同じ太平洋国家のカナダやニュージーランドまで参加した共同統合訓練の成功は、習氏に後味の悪さを残したのではなかろうか。
折しも米中首脳会談と同日の7日、東京ではニューカレドニアなど島嶼(とうしょ)を多く領有する太平洋国家として、オランド仏大統領が安倍晋三首相と共同声明を発表した。声明は中国を念頭に「新たな大国の台頭に伴って生じる新たな課題に対応する」と踏み込んだ。航行の自由など国際法の尊重を強調し、日仏防衛・外務閣僚級協議(2プラス2)の早期開催を確認した。フランスが太平洋国家として日本との安保協力を打ち出し、ともに中国を牽制(けんせい)した事実は重い。
むろん、これらの動きは偶然ではなく連動している。首相官邸を司令塔として、日米外交当局が綿密に練り上げた結果の必然であり成果である。米中、日仏という2国間の「線」だけを別々に見ていると気づかないが、自由と民主主義という共通の価値観を持つ日仏米、カナダ、ニュージーランドVS共産党独裁の異形の大国=中国という多国間同士の「面」で捉えれば、日本と同じ側に立つ太平洋国家が、中国とどう向き合おうとしているかが見えてくる。
その中国は東アジア地域で、軍事力や経済力を背景に「粗暴な大国」(仏紙ルモンド)として振る舞い、国際社会で地球温暖化対策や人権問題を指摘されると「発展途上国」だと言い逃れる。「G2(米中2国の枠組み)という幻想」(クリントン前国務長官)に見切りをつけた2期目のオバマ政権内には今や、中国と新型大国関係を構築できると本気で夢想している向きはいないのではないか。7月10日、米中戦略・経済対話を横目にワシントンで開かれたシンポジウムでは、中国について「だれもが米国の仮想敵国と思っているが、公の場では口にしないだけ」(米国防関係者)との声が出た。国際社会で責任ある行動をとれない未熟な大国との見方が主流のようだ。
そんな中国は、尖閣諸島国有化を口実にわが国が「戦後秩序へ挑戦している」(楊潔篪・中国外相=当時)と各国に同調を呼びかけている。連合国側が戦後処理の基本方針を示した1942年のカイロ宣言や45年のポツダム宣言に違反するというのが論拠だ。だが、戦後の日本の領土を画定させたのは法的拘束力のない両宣言ではなく、国際条約のサンフランシスコ平和条約だ。中国の難癖には逐次反論する必要がある。
「わが国の戦後の平和国家のあり方を否定し、名誉を傷つける悪意に満ちた発言は受け入れ難い。中国は自国に同調する国はどこにもないことを認識すべきだ」。2012年11月、国際会議で斎木昭隆外務審議官(現次官)が楊外相にこう言った。大国の作法を学ぼうとしない中国は、他人を批判する前に自らが国際社会の厄介者であることにいい加減、気づいたらいかがか。(ワシントン支局長=ささき るい)
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◇ 【米中首脳会談】 「太平洋を分け合おうぜ」と、談合をもちかけたような「太平洋には十分な空間がある」
産経新聞2013.6.12 03:08
日露戦争当時のロシア皇帝、ニコライ2世は「太平洋の覇者」となる夢想を抱いていた。けしかけたのはドイツ皇帝、ウィルヘルム2世だった。日露開戦の2年前、バルト海での両国合同訓練のさいニコライ2世を「太平洋提督」と呼んだという。▼ロシアの政治家ウイッテが書き残した話だ。ウィルヘルム2世も自らを「大西洋提督」としており、世界の海を両国で支配しようと談合しているようなものだ。ロシアが、満州(現中国東北部)から朝鮮半島に食指を動かしていた背景に、皇帝のそんな野望もあったのだ。▼中国の習近平主席はオバマ米大統領との首脳会談で「太平洋には両国を受け入れる十分な空間がある」と持ちかけたそうだ。こちらも「太平洋を分け合おうぜ」と談合をもちかけたようなものだ。1世紀以上たっても、大陸国が「海」に野望を抱くのは同じらしい。▼もちろん大統領が「そうしよう」と応じるわけもなく、習氏の「独り言」で終わった。だがこれで、東シナ海や南シナ海を自らの海にしようという中国の本性は一段と露(あら)わになった。日本など標的となる国にとって、気を引き締める意味でよかったかもしれない。▼そういえば英BBCが世界25カ国の人を対象に行った各国のイメージ調査で、中国は5位から9位に転落し、過去8年で最悪になったそうだ。貿易摩擦による西欧での低下が著しいという。だが日本などでのイメージも悪く、海洋摩擦の影響があるのも間違いない。▼こうなると国際社会の目を気にしそうなものだ。だが中国の国際情報紙「環球時報」など「(経済成長の)中国へのイメージ悪化は不思議ではない」と平静を装う。少しは日本人の自虐史観を見習ったらどうか。いや、これは冗談だが。
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◆ 【米中首脳会談】 習近平主席「尖閣~測量上陸の可能性/太平洋には米中両国を受け入れる十分な空間がある」 2013-06-11
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◆ 米中首脳会談 太平洋は2大国の空間か・・・アメリカにおける日本のプレゼンスがほとんどない 2013-06-09
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◆ 中国海軍幹部「ハワイより東を米軍、西を中国海軍が管理しよう」/李鵬元首相「日本は地上から消えていく」 2013-01-19
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◇ 米カリフォルニア州サンディエゴで日米合同の離島奪還訓練 2013-06-11
米海軍基地で報道陣に公開された、海自の護衛艦「ひゅうが」の昇降機と格納庫=10日、米カリフォルニア州サンディエゴ(魚眼レンズ使用、共同)
日米「離島奪還訓練」強行! 中国の中止要請を正面突破 3自衛隊「尖閣」念頭
zakzak2013.06.11
陸海空の3自衛隊は10日、米カリフォルニア州サンディエゴで米軍と合同の離島奪還訓練を開始した。米本土で3自衛隊統合の離島奪還訓練が行われるのは初めて。中国が強奪を狙う沖縄県・尖閣諸島などを念頭に、自衛隊の離島防衛能力を向上させる狙いだ。中国側は日米両政府に中止を要請していたが、日米両国は正面突破した。
合同訓練は、米海軍と海兵隊が、カナダやニュージーランドとともに実施する訓練「ドーン・ブリッツ(夜明けの電撃戦)」に参加する形で実施された。
自衛隊からは島嶼(とうしょ)防衛・奪還を主任務とする陸自「西部方面普通科連隊(西普連)」など約1000人と、海自のヘリコプター搭載護衛艦「ひゅうが」や、イージス艦「あたご」などが参加した。
離島奪還作戦には3自衛隊の連携が不可欠。これまでは陸自が単独で米海兵隊と訓練を重ねてきたが、今回は作戦に欠かせない輸送力を担う海自が初参加することで、より実戦的な環境が整う。
今回、米軍新型輸送機オスプレイが、海自の「ひゅうが」に着艦し、エレベーターで艦内の格納庫に収容する訓練を実施する方向。オスプレイは行動半径が約600キロあり、沖縄本島を起点に尖閣諸島までカバーできる。中国が最も警戒しているといわれる。
中国は、今回の合同訓練をめぐり、オバマ大統領と習近平国家主席による米中首脳会談が直前に開かれたこともあり、強い拒否感を示し、外交ルートを通じて日米両政府に中止を要請してきた。
これに対し、日米両政府は公式には「特定の国を想定したシナリオはなく、過去にも日米の離島奪還訓練は行っている」として拒否。日米同盟の結束を誇示した。
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米海兵隊第1遠征旅団司令官のブロードミドー准将は共同通信の取材に「自衛艦へのオスプレイ着艦は歴史的出来事になる。長年続いてきた自衛隊との良い関係をさらに強めるいい機会だ」と強調した。
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中国、日米離島奪還訓練に猛反発! 大船団での領海侵入で“報復”か
zakzak2013.04.25
米軍の離島奪還訓練に陸海空3自衛隊の参加が決まるなど、日米両国が結束を強めている。仮想敵の中国は25日も沖縄県・尖閣諸島の周辺で海洋監視船を航行させた。日米共闘に危機感を抱く一党独裁国家は、6月の訓練に向けて挑発行為をエスカレートさせる恐れがある。専門家によると大船団での領海侵入、無人機やヘリコプターでの領空侵犯も想定されるという。
海上保安庁の巡視船は25日、尖閣の領海外側にある接続水域で中国の海洋監視船3隻が航行しているのを確認した。中国公船が尖閣周辺で確認されたのは6日連続になる。
挑発行為を続ける中国だが、習近平国家主席は23日、北京で米軍の制服組トップ、デンプシー統合参謀本部議長と会談。「中国と米国は協力パートナー関係を築き、新たな大国関係を目指して協力すべき」と強調した。
同じ日、日本の防衛省統合幕僚監部は、米カリフォルニア州で6月に行われる米軍の離島奪還訓練「ドーン・ブリッツ13」に、陸海空3自衛隊を参加させると正式に発表した。3自衛隊が米国でともに訓練を行うのは初めて。中国による尖閣強奪に備え、日米共同での対処能力を高める狙いだ。
「米国との近さをアピールしたかった習氏が、逆に日米関係の強さをみせつけられた。心中、穏やかではないだろう」(外交筋)
3自衛隊が参加する離島奪還訓練は6月。赤っ恥をかかされた中国は、それまでにどのような“報復”を仕掛けてくるのか。中国事情に詳しい評論家の宮崎正弘氏は、大船団の襲来を予測する。
「23日には昨年9月の尖閣国有化以来最多となる中国の海洋監視船8隻が領海に侵入した。領海に入ってくる船を今回の倍にするなど、船団の規模を大きくしてくる可能性がある」
中国は3月、個別に活動してきた国家海洋局の監視船や農業省所属の漁業監視部隊、公安省の海上警備部隊などを、新設した「中国海警局」に統合した。統合に伴って隻数も大幅に増え、日本の海保が保有する全巡視船艇約450隻を上回るとみられる。8隻の倍となれば16隻。さらに手持ちの船をかき集め、保有する450隻超の多くを向けてくれば、海保の巡視船だけで対応するのは極めて難しい。
大船団襲来の際、注意すべきは、中国公船の能力だ。
「老朽化した船を含めてとりあえず数を集めただけなのか、あるいは、最新鋭の船をそろえてくるのか。新型の船がきた場合、(尖閣上陸など)新たな作戦に向けた準備の可能性が高い。中国側の態勢によっては、さらに警戒を強めなければならない」(宮崎氏)
海だけでなく、空からの挑発行為を増加させると読むのは、元航空自衛隊員の軍事ジャーナリスト、鍛冶俊樹氏だ。
「日米が共同で離島奪還訓練をやるということは、中国に対して『尖閣への上陸は不可能だ』というメッセージ。海から艦船を使った上陸が無理ならば、上空から手段を講じるしか方法がない。無人機を飛行させて自衛隊の反応をみるほか、船に搭載したヘリコプターを領海内から飛ばすことも考えられる。さまざまなやり方を駆使し、自衛隊の反応をうかがってくる」
日米同盟に海と空から揺さぶりをかけようとする中国だが、実は内部に“爆弾”を抱えている。人民解放軍は四川大地震の救助、復旧作業など災害対応に追われ、主力部隊は内陸部に集中。人民の関心も四川に向いている。仮に尖閣周辺で軍事衝突が起きても、四川をほうり出すわけにはいかない。被災地を軽視するなど対応を間違えれば、中国共産党幹部が最も恐れる「人民の不満」が爆発する。
不満が充満した際に効果を発揮するガス抜きも、今回は使えそうにない。
「中国は国内の不満が高まると、昨年9月のように反日暴動を起こしてガス抜きを図る。が、今度反日暴動が発生すれば、日本企業は本気で中国から逃げるだろう。中国経済にとって大打撃となる」(鍛冶氏)
日米関係の強化にいらだちつつも、内部に大きな問題を抱える中国。尖閣周辺での挑発行為のエスカレートは、一党独裁の崩壊に対するおびえの裏返しか。
*上記事の著作権は[zakzak]に帰属します 。
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◇ 卑劣な“異形の大国”中国を知る/調査報道で軌道修正していく米紙 2013-02-27
【湯浅博の世界読解】卑劣な“異形の大国”を知る
産経ニュース2013.2.27 07:36
この数年、欧米紙が“昇り龍”の中国を伝えることがあっても、日本を報じることはめっきり少なくなっていた。ところが、安倍晋三首相が登場して以来、連日、アベノミクスや尖閣情勢を取り上げない日がないくらいだ。もっとも安倍政権が誕生したさいには、首相が「タカ派」で「軍国主義」だから、彼を選んだ日本という国は「右傾化」の鬼が住んでいるようなイメージで書いた。
米紙ワシントン・ポストは早くも昨年9月に、日本が右傾化して「第二次大戦後、最も対決的になっている」と報じた。ニューヨーク・タイムズの1月3日付社説では、安倍首相を「右翼の民族主義者」にしてしまった。
ところが安倍首相の訪米では、WP紙の社説などが一転して中国に厳しく、日本に好意的な論評が目立ち始めた。英紙フィナンシャル・タイムズは、安倍政権のデフレ対策は成果を上げつつあり、中国とのいさかいも民族感情に訴えることなく、かつ毅然と対処した。農業ロビーを敵に回さずに、TPP交渉に参加する道を開いたと明快だ。
確かに安倍首相訪米は、周到な準備と決断が功を奏したものと思う。だが、1月末から訪米までの間に、日米中の間に何があったかを考えると、日本が対峙する中国こそ卑劣な“異形の大国”である事実が分かってきたのだ。
第1に、日本政府が今月5日、東シナ海で海上自衛隊ヘリや護衛艦に中国艦艇が射撃管制用レーダーを照射した事件の公表が大きい。レーダー照射の「ロックオン」は、ミサイル発射に直結する準戦闘行為と見なされ、パネッタ国防長官でさえ、中国海軍の無謀な行動に懸念を示した。
第2に、当のNYT紙が温家宝首相一族の蓄財疑惑を報じて以来、中国からサイバー攻撃を受けていることを1月末に報じた。2月になると、米企業や政府機関に対するハッカー攻撃に、上海を拠点とする人民解放軍部隊「61398」の関与が濃厚だとする民間報告書が発表された。
軍のサイバー闇討ち部隊が、米国のインフラそのものを破壊する準備を行い、政府機関や先端産業のデータまで盗み取っていたことが明らかになった。
第3に、中国はサイバー攻撃もするが、表から「世論戦」も仕掛けていたことを、今度は17日付WP紙が報じた。中国が「米議会スタッフ招聘プログラム」をもち、文化交流を名目に買収まがいの視察旅行を施していたとの調査報道だ。
議会関係者の海外旅行は、2011年までの6年間に803回にのぼり、最大の資金提供者は中国であった。議会上級スタッフだけで、同時期に中国から200回以上も招待された。北京では米系の高級ホテルに宿泊し、中国高官と面会し、豪華な宴会が催される。招待者は議員、スタッフ、ジャーナリストに及ぶ。
中国専門家の中には、尖閣争いで米国が日本へ深入りすることをやめるよう提言する論評もあった。背後にちらつくのは、中国からの情報工作で、研究者に合法的に資金を提供し、要人との会見という便宜供与も含む。米国にあることは、日本にもある。
だが、これらを調査報道で軌道修正していく米紙の力量もさすがで、米国の知的水準の高さを示している。(東京特派員) *強調(太字・着色)は来栖
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