オウム死刑囚13人の同時執行は無理 法務省「7人移送」本当の狙い (「デイリー新潮」2018/3/26)

2018-03-28 | オウム真理教事件

オウム死刑囚13人の同時執行は無理 法務省「7人移送」本当の狙い
 社会 2018年3月26日掲載
■共犯の死刑執行は同時が原則?
 オウム真理教は、坂本堤弁護士一家殺害事件(1989年)、松本サリン事件(94年)、地下鉄サリン事件(95年)などの凶悪事件を引き起こし、裁判では13人の死刑が確定した。
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 このうち7人の確定死刑囚が他の拘置所(支所を含む)に移送され、大きく報じられたのはご存知の通りだ。13人の現状などを表にまとめた。
 一部の確定死刑囚の学歴が極めて高いことは、いつもながら驚かされる。また高齢化が進んでいることも考えさせられるが、法務省が彼らの移送を決めた目的は何なのか。記者が解説する。
 「そもそも昨年から『政府はオウム確定死刑囚に対して死刑を執行する準備段階に入った』という情報が流布していました。移送の一報が入ると、『執行のカウントダウンが始まった』と一部の記者が色めき立ったのは事実です。原則として、複数の共犯が確定死刑囚となった場合、執行は同時に行われます。例えば2人の共犯が確定死刑囚だとして、片方のAに死刑を執行し、Bには執行しないとなると、待たされる格好になるBは極度の精神的重圧にさらされてしまいます。それを防ぐのが目的です」
■1日に13人の死刑執行は非現実的?
 これまでオウム死刑囚の13人は全員、東京拘置所(葛飾区小菅)で収監されていた。現場の負担は相当なものがあったようだ。共同通信の「オウム死刑囚7人の移送完了 法務省『共犯分離が目的』」(3月15日)には、以下のような一節がある。
 《これまで東京拘置所に13人を収容していたが、(編集部註:法務省によると)「組織的犯罪を引き起こしており、運動や面会の際に接触しないよう神経を使って調整していた」》
 しかし裁判は終わり、いよいよ死刑執行の段階を迎えた。執行できる施設は、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の拘置所で7箇所。確かに1拘置所で1日2人を死刑に処すれば、13人の同時執行は不可能ではない。
 だが、先の表を見ていただきたい。今回の移送先に札幌拘置所は含まれていない。また「死刑の同時執行」が狙いなら、東京拘置所に6人の確定死刑囚が残されたことも理屈に合わない。何よりも1日に13人の死刑を同時執行したとなると、世界的な大ニュースとなるのは確実だ。その反響は大きすぎる。法務省としては、できることなら避けたいに違いない。
 実際、産経新聞が3月20日の朝刊に掲載した「地下鉄サリン23年 執行準備か分離目的か オウム死刑囚移送に広がる観測」の記事には、次のような一節がある。
《(編集部註:法務省)幹部は「同時執行は原則ではない」と断言し、少人数を先に執行することに含みを残す。共犯者が同時執行された例は2人まで。オウム真理教事件のように、共犯死刑囚が13人もいる事件は前例がない》
■覚悟を決めた確定死刑囚
 だがオウム死刑囚の中にも「政府が死刑執行の準備を始めた」と受け止めた者はいる。
 共同通信は3月14日、「オウム移送、死刑執行も考慮か 6人が到着」の記事で、《井上死刑囚は大阪拘置所に移され、移送後に面会した母親は「動揺していた」と話した》と報じた。
 また産経新聞は3月15日、「オウム死刑囚7人移送 中川死刑囚『最後かも』 面会の学者に吐露」で、以下のように伝えている。
 《松本、地下鉄両サリン事件などに関わった中川智正死刑囚は移送前日の13日、東京拘置所で教団による事件を研究する毒物学者、アンソニー・トゥーさん(87)と面会し「これが最後の面会になるかもしれない」と語っていた。覚悟を決めた様子だったという。
 米コロラド州立大名誉教授のトゥーさんは、平成23年から面会を重ねてきた。死刑囚が弁護士や親族以外と面会するのは異例で、研究のためとして特例で許可された。
 トゥーさんによると、13日の面会が始まった直後、中川死刑囚が「移送される可能性がある」と切り出した。初めて会って以降、中川死刑囚は事件のこと以外、ほとんど口にしなかったため、トゥーさんは意外に感じた》
■刑務官と死刑囚の間に生まれる深い“情”
 法務省関係者は「実を言うと、移送にはもう1つ、別の理由があるんです」と明かす。
「収監されている期間が長ければ長いほど、刑務官と死刑囚の間に深い“情”が生まれてしまうことがあります。かつて、死刑が近いという情報が確定死刑囚に伝わってしまったケースもありました。オウム死刑囚の執行には、可能な限り不確定要素を潰し、万全を期すことが求められます。13人の死刑が短期間のうちに執行されれば、刑務官の負担は相当なものであることは言うまでもありません。今回の移送は、東京拘置所の刑務官とオウム死刑囚の間に存在した、これまでの積み重ねを、他の拘置所に移送することでゼロにする、という目的もあるんです」
 中日新聞が91年5月22日に掲載した「命令出れば人命奪う… 元刑務官・板津さん 死刑執行の苦悩伝える 昇格、昇給 多くの人は本音言えず」で、元刑務官の板津秀雄氏(故人)が次のように語っている。
《刑の確定から執行まで数年。看守の勤務24時間、2交代制。家族と一緒の時間より死刑囚といる時間の方が長いくらいだから親愛の情もわく。
「ネコでもイヌでも3日も飼えば情が移るでしょう。何年も同じ屋根の下で同じかまのメシを食べた相手を『処刑にしろ』と言われるんですから、職員はたまったもんじゃありません」》(編集部註:引用に際し漢数字を洋数字に変更)
 さらにAbemaTIMESは17年7月14日、「『何十年も経ちましたが、全て鮮明に覚えています』元刑務官が語った死刑執行の瞬間」との記事を掲載している。そこには、死刑執行の“気配”を敏感に感じ取る刑務官の姿が語られている。
 (https://abematimes.com/posts/2660403
《死刑執行が近づくと刑場の清掃が行われるため、刑務官たちの間に“近いうちにあるのではないか”という噂も流れていた》
■情報漏洩の危険性を絶つ
 「死刑執行の日にちは、原則として拘置所の幹部には1週間ほど前に伝えられ、現場の刑務官には当日に伝えられます。現場の刑務官にも事前に教えると、有給休暇などを取得されるなどの懸念があるからです。それでも現場の刑務官が“死刑執行が迫っている感触や予感”を得て、それを“情”が移ってしまったオウムの確定死刑囚に伝える可能性は絶対ないとは言い切れません。しかし、別の拘置所に移せば、刑務官と死刑囚との間に長年の付き合いによる“情”が湧く余地はなく、そういう危険性もないでしょう。あとは淡々と死刑を執行すればいいわけですからね」(同・法務省関係者)
 13人もの死刑囚を執行するのは、並大抵のことではない。法務省にとって今度の移送は何よりも“刑務官の負担軽減”が重要なのかもしれない。
 週刊新潮WEB取材班

 ◎上記事は[デイリー新潮]からの転載・引用です
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【オウム死刑囚の移送開始 法務省2018/3/14】 オウム死刑囚は夏頃、13名、同日死刑執行か〈来栖の独白〉
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