小沢一郎地元県議「先生は選挙に絶対勝つと自信に満ちてた」
NEWSポストセブン2012.07.20 07:00
消費増税に反対して民主党を飛び出した小沢新党「国民の生活が第一」だが、衆院37人、参院12人の計49人の勢力にすぎない。今回ばかりは小沢はダメだろう――そんな空気がいまの永田町には充満している。
実は、首相官邸では、「小沢を切れば支持率は最低でも4ポイントは上がる」(総理補佐官の1人)と分析していた。ところが、野田内閣の支持率は過去最低の21.3%を付け、民主党の政党支持率も6.7%まで落ち込んだ(時事通信)。国民から見れば、大増税や原発再稼働に突き進んできた野田内閣が支持を失うのは当然だが、本人たちは「小沢を切っても支持が上向かないのはなぜだ」という、言いしれぬ不安と焦りを感じているのである。
増税連合を組む自民党の長老議員は官邸以上に警戒している。
「われわれは小沢に何度も煮え湯を飲まされてきた。政権に小沢を除名させるように仕向けたのは、小沢の選挙ノウハウと民主党の豊富な選挙資金を切り離すのも狙いだったが、野に放たれた小沢が次に何を仕掛けてくるか油断はできない」
対照的なのが小沢氏の言動だ。小沢氏が新党結成を最終的に決意したのは、民主党執行部が両院議員懇談会を開いた翌日の6月21日とされる。まだ法案の衆院採決前だった。
この日、増税反対派が拠点を置く都内のホテルに集まったグループ議員を前に小沢氏はこう語った。
「選挙になれば、オリーブの木で圧勝する」
議員たちは、小沢氏がすでに新党結成や選挙戦略まで視野に入れていることと、「圧勝する」という言葉の強さに驚いたという。
選挙への自信は、地元・岩手にも伝わっている。小沢氏は離党前の7月1日、岩手入りして達増拓也・知事や県議らと会談した。その時の様子を佐々木順一・岩手県議が語る。
「先生は『近く選挙はある。絶対勝つよ』と話してくれた。あんなに自信に満ちた先生を見たことがない」
そうした発言を「根拠のない強がり」と片付けるのは簡単な話だが、自民党離党以来、小沢氏と行動をともにして「知恵袋」と呼ばれた平野貞夫・元参院議員の話は興味深い。
「小沢が選挙に強いのは、国民の意識の変化についての分析が正確だからです。東日本大震災後、小沢はこの震災が必ず日本のありようを変えるという問題意識を持った。明治維新の13年前にも安政の大地震が起き、江戸幕府の崩壊につながった。だから輿石(東・民主党)幹事長には、時間をかけて『消費税増税を棚上げして、震災復興を機に日本の資本主義社会のあり方を見直すべきだ』と説得してきたわけです。
しかし、説得は失敗した。野田総理は一層、原発再稼働と消費税増税に走ったが、小沢は官邸への反原発デモの広がりに注目し、そこから国民の意識を読み取ろうとした。あれは再稼働反対だけではなく、増税反対、国民の倒閣運動だと。そこで反原発と増税反対勢力を結集する政界再編を構想した」
※週刊ポスト2012年8月3日号
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◆ “小沢新党”あなどるべからず!マニア受けする政策に注目 2012-07-19 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
【経済快説】“小沢新党”あなどるべからず!マニア受けする政策に注目
zakzak2012.07.19
小沢一郎氏が民主党を離れて、新党「国民の生活が第一」を結成した。本稿では、政策論に深入りしないが、現在、前回総選挙の公約に反する消費税率引き上げを「急いで」決めねばならぬ状況にはない(原発事故への対応のようなものとは事情が異なる)。公約を守るべきという小沢氏に「一理はある」と言っておく。
その「小沢新党」だが、結党間もない現時点での人気は必ずしも高くない。新聞社の調査などでは、同党に期待するとの答えは十数%程度で、支持が少ないとの見出しが付くことが多い。ただし、支持率自体は、民主党、自民党もぱっとしないままだ。
そこで、興味が湧くのは、「選挙に強い」と言われてきた小沢氏が、次の選挙をどう戦うかだ。
新党には、何人か知名度の高い議員がいるものの、小沢氏以外には重量級の政治キャリアを持つ看板議員がいない。加えて、当選1回目の議員が多い。選挙の際に俗にいう「タマ」(候補者)の面では、有利な状況にあるとは思えない。
しかし、目下の同党の戦略は、マーケティング的に眺めるとなかなか興味深い。
まず、党名だ。「国民の生活が第一」とは長くて語呂が良くないが、他党に比べて長い名前なので目立つ。しかも、TVなどで党名が報道されるたびに、同党のキャッチフレーズが流れることになる。長期的な党名のネーミングとしては疑問があるが、短期限定のキャンペーン手段としては強力なのではないか。
また、政策の選択も選挙戦略的に興味深い。今回の小沢氏の主な政策は「反消費税増税」、「反原発」、「反TPP」の三点だ。何れも賛否両論があるテーマだが、それぞれの「反」の立場には、非常に強い共感を持つ支持層が存在する。
たとえば、「反原発」。民主党も自民党も原発について、歯切れのいい主張は出来まい。仮に、ある選挙区で、原発稼働について強力な反対意見を持つ人が有権者の3割いるとしよう。彼らは、民主党にも自民党にも投票しまい。両党の個々の候補者が、自分の意見として原発稼働慎重論を唱えても信用しないだろう。反原発票を「国民の生活が第一」の候補者が集めて、残りの票が割れるとすると、小選挙区の中で同党が1位を取る場合もあるのではないか。
地域によっては、反TPPにも強力な支持者がいる。付け加えるなら、小沢一郎という党首にも熱心な固定ファンがいる。票が割れると、同党候補がトップの可能性が出る。
過半数ではなくとも、一番が取れたら小選挙区は勝ちだ。支持者の固い政策の選択は、候補者の弱さをカバーするかも知れない。商売の世界でも、マニア受けする戦略が奏功することがある。小沢新党侮るべからず。
■山崎元(やまざき・はじめ) 経済評論家。1958年北海道生まれ。東大経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一証券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。
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