矢来町ぐるり 2015年06月30日
日本は「徴兵制前夜」なのか 石破大臣かく語りき
安保法制の議論が盛り上がるにつれて、「徴兵制にもつながりかねない」という声がまた聞こえてくるようになった。民主党の細野豪志元幹事長は「真剣に警戒する必要がある」と6月21日付のブログで述べている。
安全保障や軍事の専門家では「そんなことはありえない」と言う意見が多数を占めているのだが、それも国民を騙そうとしてのことなのだろうか。
政界きっての安全保障通で知られる石破茂氏は、著書『日本人のための「集団的自衛権」入門』の中で、「徴兵制にメリットはない」と断言している。(以下は同書より)
■合理性がない
軍事合理性から考えて、徴兵制のメリットが日本にはありません。
また、自衛官の志願者は数多くいて、競争率は高いのです。現時点で5倍超です。無理やり入りたくない人を入れる必要がありません。
3か月くらい訓練すれば、一応銃は撃てる程度にはなるかもしれませんが、今の自衛官に要求されるレベルはそれよりもはるかに高いものです。
理想でいえば、海上自衛隊の護衛艦を操作できるような人材はもっと増強してもいいでしょう。しかし、そのような能力を持つ人材を育てるには、大変な手間暇がかかります。一般の学生や会社員を呼んで来て、すぐにどうにかなるような問題ではありません。きちんとしたプロフェッショナルでなければ、実際の役には立ちません。
■即戦力は作れない
そもそも、そんなに簡単に「即戦力」が作れるのであれば、自衛官が日々行っている訓練には何の意味があるのか、ということです。体力と気力だけあればいいというものでもない。
現在の兵器はハイテク化が進んでいて、コンピュータの知識がなければ使えないようなものばかりです。素人が入ってきて、すぐにどうこうできるという世界ではありません。
冷静に考えていただきたいのは、仮に徴兵するとして、その兵士たちにも給与を支払わなければならないということです。無給で働かせることは不可能です。そのようなことにつぎ込む予算は日本にはありません。
お隣の韓国が徴兵制をとっているのは、国境を接している隣国が150万人もの兵士を抱えていて、それに対抗する必要があるからです。日本は幸いそういう事情もありません。
■不安を煽る人たち
集団的自衛権と関係なく、「徴兵制が来る」と不安を煽る人は常にいます。
こういう人は、かつて日本で徴兵制があった頃のことをイメージしているのかもしれません。しかし、前述の通り、当時と今とでは兵士に求める能力がまったく異なるので、あの頃のようにはなりません。
高度経済成長の時期には、確かに自衛官不足ということがありました。街中で体格のいい若者に声をかけてスカウトする、という頃をイメージしている人もいるのでしょうか。しかし、当時と違い、就職難ということもあるし、自衛隊のイメージが良くなったこともあり、自衛隊は人気の就職先となっています。どのような角度から見ても、徴兵制を採用する合理的な理由が存在しないのです。そうである以上、ありえないとしか言いようがありません。
なお、自民党の憲法改正草案でも、「徴兵制は憲法に反する」との立場を採っており、安倍総理も「国民は刑罰を除いてその意に反する苦役には服されない」と答弁しています。
戦後長きにわたって徴兵制を維持してきたドイツにおいても、2011年、これを廃止することとなりました。しかし数年前ドイツを訪問し、与野党の議員と議論した際、多くの議員が徴兵制を維持すべきだとした理由は誠に印象的であり、深く考えさせられたものでした。
「ドイツが徴兵制を維持するのは、再びナチスのような存在が台頭することを防ぐためである。軍は市民社会の中に存在しなくてはならず、市民社会と隔絶することがあってはならない。第一次大戦に敗れた後、軍を市民と切り離したために、ナチスのような過激な集団が台頭した。徴兵制は市民と軍とが一体となるために必要な手段なのだ」
彼らは異口同音にそう述べ、同じ敗戦国でこうも考え方が異なるのかと思いました。
■アマチュアは不要
現代戦において、軍人は徹底したプロフェッショナルでなくてはならず、徴兵制はその面からもコスト面からもデメリットが多いことは先に述べた通りですが、徴兵制を憲法上認めないこととして、その上で軍事組織に対する国民の理解を深め、文民統制を実効あるものとするためには、教育も含めて多大の努力が必要となります。
同じように2001年、徴兵制を廃止したフランスにおいては、新たに「国防の日」を設け、かつて徴兵適齢期とされた青年たちに、フランスの国防の歴史や安全保障政策を学ばせることとなったと聞きます。
軍事に関することを忌避することがそのまま平和につながるわけではないことを、改めて考えさせられます。
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◇ スイスは徴兵制維持…集団的自衛権を否定しているからだ…一国だけで国を守るなら徴兵制が必要 2015-06-24
2015.6.24 05:05更新
【産経抄】徴兵制が敷かれる日 6月24日
ドイツでは2011年7月まで、徴兵制が敷かれていた。ドイツ在住の永冶(ながや)ベックマン啓子さんの息子も9カ月間、陸軍の歩兵部隊で訓練を受けた経験を持つ。
▼ひ弱で太り気味だった18歳の男の子は、生まれ変わったように壮健な19歳の青年となって帰ってきた。「息子の体験は大いに日本の若者教育の参考になる」と啓子さんはいう(『息子がドイツの徴兵制から学んだこと』祥伝社新書)。
▼集団的自衛権をめぐって、民主党が徴兵制と結びつけた議論を執拗(しつよう)にふっかけている。政府見解では、徴兵制は、憲法18条が禁じた「意に反する苦役」にあたる。ただ、石破茂地方創生担当相は、国民みんなで民主主義国家を守るという立場から、苦役とする発想に違和感を覚えるという。
▼それでも著書のなかで、はっきり徴兵制に反対と、言い切っている。現代の軍隊は、高性能の兵器を使いこなす、超プロフェッショナルの集団でなければならない。たくさん人を採っても、防衛戦略上、意味がないからだ。ドイツが、憲法上の規定を残しながら徴兵制を停止したのも、軍隊の任務の高度化が理由のひとつだった。
▼集団的自衛権を行使すれば、自衛隊の任務が拡大する。それにともなう自衛官の増員は、少子化のために困難になる。細野豪志民主党政調会長が、自身のホームページで“徴兵制への道筋”を披露している。安全保障政策の常識にてらせば、いかにナンセンスな論法か、明らかである。
▼スイスは「平和国家」のイメージとは裏腹に、今も徴兵制を維持している。集団的自衛権を否定しているからだ。軍事的な緊張が高まりつつある北東アジアで、日本が同じように一国だけで国を守ろうとするなら、それこそ徴兵制が絶対に必要である。
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産経ニュース 2015.6.20 06:00更新
【安保法制】石破氏が衆院特別委で初答弁 必殺・ネチネチ論法で「徴兵制」の印象操作に猛反撃!
衆院平和安全法制特別委員会で19日、徴兵制をめぐり石破茂地方創生担当相が初めて答弁に立った。徴兵制を憲法18条が禁じた「意に反する苦役」とする政府見解と、安全保障に一家言持つ石破氏の持論に“矛盾”があるとみた民主党が出席を求めた。しかし石破氏は「政府見解に従う」と明言した上で「兵役は苦役のような発想が国際的には異様だ」と指摘。得意のネチネチ論法を駆使して安保法制を徴兵制復活と結びつける印象操作に反撃した。
石破氏は平成14年に国会で、徴兵制について「意に反した奴隷的な苦役だとは思わない」と述べている。特別委では民主の寺田学衆院議員らが「徴兵制を認める余地があるとの発言か」と石破氏に質問した。
これに対し、石破氏は「政府見解に私も従うのは当然だ」と明言。現代戦では兵員に高度な技能が必要なため「今日的な軍隊では徴兵制を採る意味はない。これから先、徴兵制があり得るか。必要性がない以上、そういうことはない」と解説した。
さらに石破氏は「平和国家」といわれるスイスが国民投票で徴兵制の廃止を否決したことを指摘。自身が過去にドイツの与野党政治家から「ナチスをつくらないため徴兵制を維持する。軍隊は市民社会の中になければならない」と聞かされたエピソードも紹介した。
そのうえで「苦役とは思わない」との持論の真意を解説。徴兵制を苦役とする議論について「国際社会でどう受け取られるかは念頭に置いたほうがいい」と、たしなめるように語った。
ただ、民主党は「閣議決定で集団的自衛権が行使できるなら、同様に閣議決定で徴兵制も敷ける」として国民の不安をあおる戦術を展開している。石破氏の解説を聞いた寺田氏も「現時点で徴兵制はないと言われても信じがたい」と述べただけだった。(千葉倫之、千田恒弥)
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◇ スイス国民の圧倒的多数が徴兵制存続を望んだ/人口800万人のスイス、15万人という大規模な軍隊を持つ
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