〈来栖の独白 2017.2.4 Sat 〉
母(92歳)が誤嚥性肺炎で入院したのが、1月20日。その後、2月1日の医師の話では「数値は落ち着いている」ということだった。「万が一の場合、延命の措置を希望しますか」とも聞かれ、「希望しません」と申し上げた。
ただ、「こういう容態での一般病棟入院継続は、難しい」とおっしゃる。母のいるホームは「最期の看取りまではしない施設ですよ」と説明され、そして、ここから一番近い「看取りまでする病院は、N病院です」が、皆さん、一旦入院されれば「最後」まで入院しているわけで、「空き室が、ない」との説明。「行き場がない。そういう意味では“難民”です」。「地域によって個々の状況がある、違う、ということですね」と私が云うと、「そうです」とおっしゃり、「窮余の策として、当病院には『地域包括ケア病棟』というものがあります」と、以下の説明を受けた。
1. 地域包括ケア病棟と一般病棟の違い
一般病棟は急性期治療を目的としており、病状が安定した段階で早期に病院または転院していただくことになります。ただ、急性期の治療を終えてもすぐには日常生活には戻れない場合もあります。例えば入院生活による筋力低下がみられたり、継続加療が必要と判断された場合、退院後の生活環境を整える必要がある場合などです。その間当院では地域包括ケア病棟に転院後、60日を限度として入院治療を継続することもできます。
2. 地域包括ケア病棟の対象となる患者様
急性期治療を経過した患者様で60日以内に在宅または介護施設等への退院が可能な患者様です。
3. 地域包括ケア病棟の費用について
(以下略)
一方、胃瘻による延命は平均2年だとのこと。母の場合、5年を経過している。「驚異的」とおっしゃった。「胃はボロボロです」とも。
点滴輸液表示を見ると
「YDソリタ T3号」500ml
「KN3号」500ml
母のことでは、この15年ほどを様々に考え、思ってきた。アルツハイマー病を発症していたため、成年後見制度の成年後見人にもなっている。
胃瘻の手術についても、相当、考えた末の決断だった。正しい判断だったかと思い悩む日々もあったが、でも、母の顔色の良いことなどは、そんな私を励ましてくれた。施設の職員の皆さんも、実に良くしてくださった。
この数年は、母が生きていることの意味を私は「娘である私からの感謝を聞き届けてくれるため」と思ってきた。母に会いに名古屋から岡山へ行き「お母さん、ありがとう」を細々述べる。子供の頃から我儘だった娘の願いを、母はよく忍耐して聴いてくれた。「私の人生は、すべてお母さんのお陰」と母に感謝を伝えると、母は大きく息をしたり、涙を流したりして、聴いてくれた。
母は、これからどのくらい生きてくれるだろう。上記、点滴輸液を見るなら、期待はできない。「母は、これからどのくらい生きてくれるだろう」・・・夜半、眠れぬままにそんな一つのことばかり考えていて、「あ、私は、主(神)が最も嫌うことをやっている」と気づいた。人の命なんて(先のことが)、人間に分かるはずはない。神は、人間が(人間の分際で)神の領域を窺うことを最も嫌う。旧約聖書は以下のように言う。
旧約聖書 コヘレトの言葉(伝道の書) 3章
1 天が下のすべての事には季節があり、すべてのわざには時がある。
2 生るるに時があり、死ぬるに時があり、植えるに時があり、植えたものを抜くに時があり、
3 殺すに時があり、いやすに時があり、こわすに時があり、建てるに時があり、
4 泣くに時があり、笑うに時があり、悲しむに時があり、踊るに時があり、
5 石を投げるに時があり、石を集めるに時があり、抱くに時があり、抱くことをやめるに時があり、
6 捜すに時があり、失うに時があり、保つに時があり、捨てるに時があり、
7 裂くに時があり、縫うに時があり、黙るに時があり、語るに時があり、
8 愛するに時があり、憎むに時があり、戦うに時があり、和らぐに時がある。
9 働く者はその労することにより、なんの益を得るか。
10 わたしは神が人の子らに与えて、骨おらせられる仕事を見た。
11 神のなされることは皆その時にかなって美しい。神はまた人の心に永遠を思う思いを授けられた。それでもなお、人は神のなされるわざを初めから終りまで見きわめることはできない。
20 みな一つ所に行く。皆ちりから出て、皆ちりに帰る。
そして、不意に思い出したのがパウロの言葉である。そうだ。主の恵みに感謝し、喜んで行こう。これまで、主のうちにあって、生きることができたではないか。
テサロニケの信徒への第一の手紙 16~18
いつも喜んでいなさい。
絶えず祈りなさい。
すべての事について、感謝しなさい。これが、キリスト・イエスにあって、神があなたがたに求めておられることである。
--------------------
*「YDソリタ T3号」500ml
主な効果と作用
体内に必要な水分、ミネラルを補給します。
各種ミネラルや糖質(ブドウ糖)を含むお薬です。
主な用途
経口摂取不能又は不十分の水分・電解質の補給・維持
*「KN3号」500ml
主な効果と作用
体内に必要な水分、ミネラルを補給します。
各種ミネラルや糖質(ブドウ糖)を含むお薬です。
主な用途
経口摂取不能又は不十分の水分・電解質の補給・維持
----------------
〈来栖の独白〉追記 2017.5.8 Mon
今になって、思うこと。医師は「地域包括ケア病棟」と云い、「難民」と云った。そのお話を伺い、室を出て直ぐ私は引き返して看護師に「N病院へ、申し込みをしておいた方が良いでしょうか」と尋ねた。すると看護師は「その時は、先生がされますから」と云ったのだった。2か月と明確に期限の切られている地域包括ケア病棟であるから、いずれそこを出なくてはならなくなるのは必定であり、一時も早くN病院へ予約を、と私は思ったのだが・・・。地域包括ケア病棟、そこに転院するということが何を意図しているのか。つまり、「余命、長くて2か月」ということ。それは、点滴内容を見ても明白だったのだが、私には分かっていなかった。
――――――――――――――――――――――――
◇ 世を去る 友をば かえりみたまえ 死こそは 神への 門出なりせば 2017.3.1